Scene3:灰の装置、覚醒 ――「死の再起動音は、静かに、そして美しく鳴る。」
魔導学院・禁呪実験区。
封印を解かれた《灰の装置》は、巨大な灰色の結晶体を中心に、複雑な魔導回路を蜘蛛の巣のように広げていた。
その中心に立つクラリッサの足元――灰がふわりと舞い上がり、まるで彼女を歓迎するように螺旋を描く。
リリアが息を呑んだ。
「ま、まさかこれ……お嬢様に反応してる!?」
ルシアンは慌てて魔力測定器を確認する。
針が限界を越えて振り切れ、警告音が鳴り響いた。
「共鳴率、上昇中……っ! クラリッサ様、離れてください!」
だがクラリッサは動かない。
むしろ一歩、前へ。
「……ああ。これが私の“再起動”の理由ね。」
灰色の結晶が光を帯び、装置全体が脈動を始める。
空気が震え、床の魔法陣が淡い紅を帯びて輝く。
クラリッサの髪がふわりと舞い、灰と光がその身から溢れ出した。
それは痛みではなく――“懐かしさ”だった。
脳裏に走馬灯のような映像が流れる。
協会の実験室。
魂の複製を行う研究者たち。
そして、死神としての彼女が“灰”に溶けていく瞬間。
「私……あの時、確かに死んだのね。
けれど協会は、灰の中で私を再生した。」
リリアが震える声で言う。
「じゃあ……お嬢様って、転生してるっていうか……再生品?」
クラリッサはゆっくりと笑う。
「そうね。できれば“アンティーク”と呼んでほしいわ。
“中古”よりは響きが上品でしょう?」
ルシアン「いや、どっちにしても扱いがデリケートすぎます!!」
リリア「返品不可の命ですよ!?!」
クラリッサは彼らの慌てぶりをよそに、静かに灰をすくい上げた。
指先に触れるそれは、冷たいのに、心臓の鼓動と同じリズムで震えている。
「灰は滅びではないのね。
――“死の記憶”を刻む、もう一つの命。」
彼女の掌から灰が舞い上がり、装置全体が静かに沈黙した。
共鳴は止み、ただ柔らかな光だけが残る。
ルシアンは息を吐いた。
「……反応、収まりましたね。」
リリア「でも、まるで……装置が“満足した”みたい。」
クラリッサは薄く微笑んだ。
「ええ。だって今の私は――“自分の死”を思い出したのだから。」
締め:
“灰は滅びではない――それは、“死の記憶”を刻む媒体。”




