Scene2:魂の再利用計画 ――魂までリサイクルする時代、倫理はどこへ行ったのか。
協会本部・魂制御塔――通称。
その名の通り、塔の中枢では無数の“魂の残滓”が光の粒となって循環していた。
透明な筒の中で、人の声にも似た残響が低く響く。
それは祈りとも、悲鳴ともつかない音だった。
その異様な光景を前に、ルシアンは蒼ざめた顔で封書を差し出した。
「……クラリッサ様、これを。協会の内部記録――流出した極秘資料です。」
クラリッサは紅茶を片手に、それを受け取る。
封印を切る動作すら、いつも通りの優雅な所作だった。
ページを開けば、そこには冷徹な文字列が並んでいる。
『死神印保有者の魂を分解・再構成し、使徒へ転写。
“魂の再利用計画”――人材の循環効率化を目的とする。』
クラリッサはページをめくるたびに微かに笑みを深め、
紅茶をひと口、音もなく啜った。
「なるほど。“リサイクル魂”ね。……エコな地獄だわ。」
リリアが悲鳴に近い声を上げる。
「笑えない環境活動です!完全に地球外倫理です!」
ルシアンも頭を抱えた。
「魂をリサイクルって……協会、とうとう宗教じゃなく産業になってる……!」
クラリッサは微笑のまま、淡々と資料を読み進める。
最後のページで、彼女の指が止まった。
その行には、丁寧な筆致で―― “契約装置の核:クラリッサ・グレイヴ” の文字。
しばし沈黙。
紅茶の香りだけが、重い空気の中を漂う。
「……あら。私、もう装置の一部だったのね。」
リリア「笑ってる場合じゃないです!!」
クラリッサ「でも便利じゃない? メンテナンス不要の核だもの。」
ルシアン「そんな“省エネ自虐”いりませんから!」
クラリッサはゆっくりと立ち上がり、塔の中央にある巨大な魂制御装置を見上げた。
そこでは、淡い光の流れが脈打つように動いている。
まるで、生きている心臓のように。
「魂の再利用計画……協会は死を“素材”に変えたのね。
――なら、私はその循環を壊す“異物”になるわ。」
紅茶のカップを軽く傾け、灰色の液面に彼女の瞳が映る。
そこに浮かぶのは、決意とも、嘲笑とも取れる静かな輝きだった。
締め:
“彼女の魂は、すでに契約装置の中心に組み込まれていた。”




