第六章 禁呪・灰の契約 Scene1:灰の契約、発掘される――灰は、死の形をして再生する。
魔導学院の地下封印庫。
昼なお暗い石造りの回廊の奥、数百年封じられてきた“灰の書”が発見された。
研究班の魔導師たちは息を呑みながら、その古びたページを慎重に開いていく。
「これが……伝承にしかなかった“灰の契約書”か……!」
「触れるな!封印が――」
だが、ざらりと灰が舞い上がったその瞬間、封印陣が静かにほどけた。
そこに現れたのは、紅薔薇の上に灰が降り積もる紋章――
それは、死神協会の最古の印だった。
クラリッサ・グレイヴは、その光景を静かに見つめていた。
指先でページの縁を撫でると、灰がわずかに揺れ、紅い薔薇の模様が下から浮かび上がる。
「“魂を灰と化し、次代へ転写する”……。
なるほど。灰は死の証であり、再生の器。……ね。」
彼女の唇がわずかに歪む。
それは、皮肉とも諦めともつかない笑みだった。
「やっぱり私、合法的バグらしいわ。」
リリアが思わず叫ぶ。
「自分で言わないでくださいっ!そんな不名誉な肩書き、公式化しないでください!」
ルシアンも眉をひそめた。
「というか“バグ”って何語なんです? 禁書に出てくる単語じゃないですよね!?」
クラリッサは紅茶を口に含み、淡々と答えた。
「新しい時代の詩的表現よ。意味は……“想定外の存在”。」
リリア「それを自分に使う勇気がすごいです!」
クラリッサ「貴族たるもの、自己分析も優雅でなくては。」
――その時、灰の魔導書が微かに震えた。
ページの奥から、古の声が囁くように響く。
《灰は死を偽り、生を模す。死神の魂よ、いずれ再び契約に帰れ。》
クラリッサの瞳が、かすかに紅く光る。
彼女の中の“死神印”が、低く共鳴した。
「……やはり、始まりはここにあったのね。」
静寂が降りる。
研究者たちが息を殺す中、クラリッサだけが微笑を崩さなかった。
まるでこの瞬間を、ずっと待っていたかのように。
そして――彼女は本を閉じ、紅茶をひと口。
「さて、禁呪《灰の契約》。
死を循環させる神への挑戦――その顛末、確かめてみましょうか。」
締め:
“禁呪《灰の契約》――それは、死を循環させる神への挑戦だった。”




