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【Scene4】――容疑者から調査者
へ
王太子の安全を確認した後、クラリッサお嬢様は静かに書斎に向かった。
私は少し距離を置き、背後で小さく息をひそめながらついていく。
書斎の机の上には、日記や地図、宮廷の人物相関図が広げられていた。
クラリッサは死神印を手がかりに、協会の〈影使い〉を特定しようと計画を練る。
ペンを走らせながら、紅茶を一口含み、微笑む。
「物語の駒はまだまだ動かせる……さて、次は誰を驚かせようかしら」
その所作はまるで、午後の優雅な紅茶タイムの延長のようだ。
しかし私には、冷徹な計算と暗殺者の勘が同居しているのが手に取るように分かる。
> “今日も誰かが泣きそうです……私はただ見ているだけ……”
思わず小声で呟く私の声も、クラリッサには届かない。
彼女の微笑みの奥で、事件の次の一手が静かに形作られている。
紅茶の湯気がゆらめく書斎で、私は肩を震わせながらも見守るしかなかった。
冷静で優雅な悪役令嬢の計算は、夜の宮廷に静かに影を落としていた。
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