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【Scene3】――暗殺の影、前世の記憶
晩餐会の喧騒が去った後、クラリッサお嬢様は静かに書斎へ向かった。
私は少し距離を置きながら、背後で息をひそめてついていく。
お嬢様は王太子の飲み残しのワインを手に取り、慎重に観察する。
そして、グラスの縁にかすかな印を見つけた——それは、死神協会〈影使い〉の痕跡、俗にいう“死神印”。
クラリッサは一瞬目を細め、指先で印をなぞる。
その瞬間、前世の記憶が断片的に甦る。
> “あの印……懐かしいわね……この感触、覚えている。”
しかし記憶は断片的で、頭の中で曖昧に混ざり合う。
「昔の私は……紅茶で毒を盛ってた気がする……多分」と、つぶやきながら微笑むクラリッサ。
横で立っていた私は、思わず半ギレで叫ぶ。
「お、お嬢様! 昔の仕事は今でも生きてるんですね……!」
クラリッサは微笑んだまま紅茶のカップに手を伸ばし、まるで日常の延長のように毒痕の調査を続ける。
その優雅さと恐ろしさのギャップに、私は肩を震わせつつ、ただ見守るしかなかった。
> “今日もまた、誰かがひっそり泣く日になりそうだ……”
書斎に漂う紅茶とワインの香りが、断片的な前世の記憶と奇妙に交わり、夜は静かに深まっていった。




