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【第2章】王太子、死にかける【Scene1】――政争の嵐、婚約危機
宮廷内の会議室は、熱気と声の渦に包まれていた。
王太子派と宰相派が互いに言葉をぶつけ合い、権力争いの火花が飛び散る。
その熱い視線が、ふとクラリッサ家に向けられた。
「監視の目が……!」
侍女リリアの顔が青ざめる。
その瞬間、王太子から婚約破棄の書面が届く。封を開けるクラリッサ。
紙面を読み進める指先は、まるで今日の紅茶の香りを楽しむかのように落ち着いている。
カップを傾け、一口紅茶を含んでから微かに笑う。
「恋の病より、毒の方が治療が早いものよ」
その軽やかな呟きに、リリアは思わず肩をすくめる。
背後で心の中の声がざわつく。
> “これもまた、舞台の脚本通り……。お嬢様は楽しんでいるんだ、きっと。”
紅茶の湯気がゆらめき、クラリッサの瞳は冷静そのもの。
だがその口元には、微かに含んだ皮肉の香りが漂っていた。
リリアはそれを見て、思わず目を逸らすしかなかった。
> “今日もまた、何かが狂う予感しかしない……”
宮廷の嵐の中、優雅に微笑む悪役令嬢と、青ざめる侍女のコントラストが、静かに場を支配していた。
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