【Scene6-5】――夜の独白・評価の掌握
夜の闇がクラリッサ邸を包む。
自室の窓からは、月光に照らされた庭の紅薔薇が揺れている。花弁は風にそよぎ、静かに水面の噴水へと落ちていく。
クラリッサは机に向かい、日記風に筆を走らせる。
文字は整然としているが、そこには冷徹な計算が潜んでいた。
「リゼットの評判:軽く下落」
「王太子の視線:微妙に変化」
「貴族たちの心:微妙な恐怖と称賛」
紅茶を一口すすると、湯気が鼻孔をくすぐる。
彼女の口角がわずかに上がる。微笑みは優雅で、何事もなかったかのようだが、その眼差しの奥には小さな刃が光る。
> “これで物語の駒は少しずつ私の思う方向に動き始めた。”
扇子を片手に窓辺に立ち、揺れる紅薔薇を眺める。
風に舞う花弁のように、評判もまた自然に動いているかのようだ。だが、その裏には彼女の意図が確かにある。
リリアが小さく息を吐き、震えながら呟く。
「……明日には誰かが泣いていそうです……」
クラリッサはその言葉に軽く笑いを含ませ、紅茶の湯気に溶け込ませる。
「ふふ、上等。涙も、微笑みも、すべて舞台の一部。観客は自ら転ぶのを楽しむだけよ。」
夜風に揺れる薔薇、静かな書斎、紅茶の香り。
すべてが、彼女の計算の下で完璧に調和しているかのように見えた。
だが、その静けさの奥には、冷たくも美味しい策略の気配が漂っていた。




