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第11話 『ニコラ・ラピィ』

ニコラ・ラピィ視点


俺はニコラ・ラピィ。片田舎の男爵だったがどういうわけだかフィリップ王子に取り立ててもらって外務卿に成り上がった。


晴れの舞台である晩餐会を2日後にひかえて大忙し。


執務室にこもって隣国の大使の名前、顔の特徴、言語を頭に叩き込む必要がある。


そんなおり、ドアを激しくノックする音がしたと思ったら商人が警備兵の制止を振り切って俺のところに押しかけてきた。


「ニコラ様、どういうことですか! 晩餐会の料理にうちが納めた食材を使ってくれるんじゃなかったのですか」


「そのはずだ」


「じゃあなぜ、グラムバードを返品に? お金まで渡したのにどうして」


「待ってくれ。俺はそんな」


商人に詰め寄られてるところに警備兵が入ってくる。


「失礼します。外務卿、陳情を求める商人たちで廊下がごった返しています」


「一体どうなっているんだ⁉︎」


調べてわかったことだがクラウダ・カーシュリーという女官僚が俺が決めたコース料理を変更して

さらに扱う商人も偏らないように変更したようだ。


金をもらった手前、特定の商人に発注したのにこれでは示しがつかない。


ヴィンス様の直属の部下を呼びつけて文句を言うわけにもいかない。


こうなったら当日、クラウダ・カーシュリーが選定したものにケチをつけて評判を落とすしかない。


***

晩餐会当日。


婚約者のミラ・リーグと一緒に各国大使のおもてなしに勤しむ。


その傍、俺たちはクラウダ・カーシュリーを探した。


「どうだ? クラウダ・カーシュリーは見つかったか」


「いいえ。やっぱりヴィンス様の官僚のようだから裏方に徹しているんじゃない?」


「やはりそうか。俺はお前の姉を見かけたぞ」


「お姉さまを⁉︎」


「ドライグ内務卿が殺されてからサニーの消息が分からなかったがどうやら王城で下女をしているようだな」


「落ちぶれたわね。お姉さまも。あとで声をかけてあげようかしら」


「ああ。ぜひそうしてやってくれ。ところでミラ。君のやるべきことはもうわかっているね」


「クラウダを見かけたら、さりげなくワインをかけてドレスを汚すことでしょ」


「そうだ。君にしかできない。大役だ」


「ニコラ様は何をなさるおつもり?」


「出された料理をマズいとケチをつけて裏で準備させているグラムバードのパイ包をお口直しにと配って俺の評価をあげる算段だ」


「それはそれはニコラ様にしかできない大役ですね」


ではさっそくどの料理にケチをつけるかな。


バイキング形式に変更されてしまったからどの料理にすべきか目移りしてしまう。


まぁ手頃なところからハンバーグを口にしてみるか。


「うむ。なんなんだこのハンバーグは。口の中がねちょねちょして気持ち悪い。ゴブリンの肉でも使っているのか。

いったいどんな人間がこの料理を選定したんだ? これは外務卿のニコラ・ラピィが口直しに俺が選定した料理を出さないといけないな」


「おい、あんた今、うちが用意したハンバーグをゴブリンの肉と言ったか?」


振り向くと顔に傷があり、逞しい肉体の屈強な男が立っていた。


「数ある公爵家でもうちは肉料理にはこだわっているんだ」


次の瞬間、大きな拳が頬を直撃して脳を揺らした。


「本当にさっきからお姉さまを見かけるわね。それよりクラウダだわ。

はやく見つけないと」


ミラが俺の方に振り返ると同時に俺は床の上に倒れた。


「ニコラ様、ニコラ様」


意識が遠くなったと思ったら今度は頭の中にオーケストラの音楽が鳴り響いてくる。


うう⋯⋯頭も顔も痛い⋯⋯


そうか。もうダンスの時間か。


「終盤じゃないか」


気がついた俺は飛び起きた。


どうやら俺は会場傍の個室で頬を腫らしてソファの上で横になっていたようだ。


「ニコラ様、気がつきまして。今、タオルを交換しますね」


そう言ってミラは冷たいタオルを俺の頬にくっつける。


「イタッ。それよりクラウダだ。クラウダは見つかったか。それが全然」


とにかく会場に戻るぞ。


俺が会場の扉を開けると目を疑う光景が広がっていた。


かつての婚約者サニー・リーグがフィリップ王子と踊っている姿だ。


何やら好意を寄せるような言葉まで。


すると黒ずくめの男が出てきてサニーをフィリップ王子から引き剥がす。


サニーは王子たちが取り合うような魅力的な女だったのか。


俺の選択は間違いだったというのか。


『こいつは俺の女だ』


『クラウダは僕のものだよ』


クラウダ? どういうことだ。


そこにいる女性はサニーだ。サニー・リーグ。


「お姉さまがクラウダ・カーシュリーでクラウダ・カーシュリーがお姉さまってどういうこと?」


何をミラはわけのわからないことを。


「とにかくサニーはフィリップ王子の妃に似つかわしくない。サニーを連れ戻しに行くぞ」


「私も姉が王子と結婚するなんて悔しいですわ。ニコラ様で充分なのに」


「それはどういう意味だミラ」


「私の方が王子の妃にふさわしいという意味です」


「おい待て。ミラ」


『お待ちになるのはあなたですよ。ニコラ・ラピィ』


振り向くとヴィンス・セオドリック様と数人の警備兵が立っている。


「何やら厨房で料理のメニューにはないグラムバードのパイ包みを作っている怪しい商人がいたので問いただしたところ白状しましたよ。

ニコラ・ラピィ、あなたは商人たちから多額の賄賂を受け取って便宜をはかっていたようですね」


「ヴィンス様、そのようなことは⋯⋯」


「話は別室で聞きます。ですがその前に、ニコラ・ラピィ。あなたを外務卿の任から解く。

(警備兵に) 連れていきなさい」


「そ、そんなぁ⋯⋯」


「恩は返しましたよ。クラウダ・カーシュリー。次はあなたの番です」




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