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第10話 『晩餐会』

晩餐会前日ーー


「クラウダのおかげで料理も一層華やかになったよ。会場の飾り付けも評判だ」


「ありがとうございますオルラ様」


私が徹底的にニコラ色を排除したのがよかったのかオルラ様の中での私に対する好感度はグンと上がったようだ。


私を捨てた男への逆襲が思わぬ形で功を奏した。


そんなオルラ様にヴィンス様も私への態度を変えてきた。


「そうか。クラウダが言うならそれでいい」


態度は相変わらずそっけないが、名前で呼んでくれるようになった。


一応、評価はされているようだ。


晩餐会終盤に招待客全員で社交ダンスを踊る。次の任務はダンスのとき演奏される楽曲の選定だ。


生演奏だからオーケストラの人たちと打ち合わせをしながら曲目を決める必要がある。


オルラ様とオーケストラが練習している部屋に向かっている途中、目の前に年配の男性が現れる。


見た目はどことなくオルラ様に似ている。


「オルラ、ここにいたのか」


「お父様⁉︎」


「明日の大事なダンスのためにとびきり華やかなドレスを用意した。仕立て屋を待たせている。一緒に来るんだ」


「お父様!ワタシは裏方。ダンスは踊らないと話したではありませんか」


「そんなものは関係ない。明日のダンスはフィリップ殿下の婚約者者選びが目的だ。

どこの家の令嬢も血眼になって明日のダンスのために自分を磨いているんだぞ」


「ですがおとーー」


次の瞬間、バチーンという音が静寂な廊下に響き渡る。


オルラ様の父上は彼女の頬を叩いた。


「これはお家のためだ! 王族に娘を嫁がせたスクライン家がどれだけ栄華を極めたか知らないお前ではないはずだ。

ひいてはお前の幸せのためでもあるんだ。国母となれば王国で絶対的な権力がふるえるんだぞ」


なるほど、スクライン家の二番煎じが狙いってわけか。

それはどこの家も血眼になるはずだ。


ってことは待てよ。この父親にとって爵位が下のヴィンス様は眼中にない?


じゃあヴィンス様とオルラ様が結ばれることって⋯⋯


「わかりました。お父様。クラウダ、あとを頼める?」


「は、はい」


オルラ様はお父上に連れられてこの場を後にした。


拳を握りしめて歩く後ろ姿から悔しさが伝わってくる。


私はオーケストラとの打ち合わせを終えてすぐにヴィンス様のいる執務室に乗り込んだ。


「ダンス踊らないんですか」


「いきなり何を言い出すんだ」


「先ほどオルラ様をオルラ様のお父様が連れて行かれました」


「なんだと!」


ヴィンス様は机を叩いて立ち上がる。


「娘をフィリップ王子に見そめさせて婚約者にする狙いがあるようですよ」


「ビオネット侯爵が⋯⋯」


ヴィンス様は言葉につまらせながら頭の中で状況を整理する。


「仕方あるまい。フィリップと結婚する方がオルラにとって幸せなことだ」


彼が発した言葉に耳を疑った。


「あれだけ目を惹く女。フィリップが見そめないはずがない。きっと妃になれる」


「ヴィンス様はそれでいいんですか!」


「オルラの幸せを第一に考えたときにフィリップとの結婚が最善の答えだ」


「ひどい。ヴィンス様のオルラ様に対する気持ちは理屈や計算で割り切れるようなものなんですか!」


「何が言いたいかはわからないがいいことを教えてやる。我がセオドリック家はビオネット家に対して従属関係にある。

主人の娘が家来に嫁いで幸せになれるわけがない」


「だからヴィンス様は階級に関わらず能力あるものを重用するフィリップ殿下の姿勢に惹かれたのですよね」


「ああそうだ。官職を得たおかげでようやく俺はビオネット家に対等に接することができるようになった。だが、相手がフィリップとなると話は違う」


「本番は明日です。何が一番、オルラ様の幸せなのか。ゆっくり考えてみることです。

それに私もフィリップ王子がほしくなりました。悪役令嬢ですもの。みんながほしがるものを手に入れたくなるものですわ」


***


晩餐会当日。


晩餐会のクライマックス、ダンスの時間が近づいてくると徐々にフィリップ王子の周りに女性が集まりはじめる。


「フィリップ王子私と踊ってください」


「私ともお願いします」


「いいえ。私が先にお願いします」


私はそんな欲まみれの人だかりかき分けて中心地、フィリップ王子のところに進み出る。


「フィリップ王子。この(わたくし)と踊ってくださる」


私はフィリップ王子の手を取り挨拶する。


すかさず周囲の女性たちが騒ぎ出す。


「ちょっといきなり何? 私が先よ」


「あなたあとからやってきたじゃない」


「たかが貴族令嬢風情がおだまりなさいッ!」


「あなただって貴族令嬢じゃない」


(わたくし)はクラウダ・カーシュリー。カーシュリー皇国の第一皇女よ。

あなたたちとは生まれ持った格が違うのよ」


「こ、皇女⋯⋯」


皇女という王族を匂わせるワードに後ずさりをはじめる令嬢たち。


なんだか印籠を出したみたいで気持ちいい。


ビオネット侯爵も端の方で悔しそうにしている。


「オルラは何をしているんだ⋯⋯」


そうこうしているうちにオーケストラによる演奏がはじまる。


「踊りましょう殿下」


「なかなかおもしろい皇女様だな君は」


「そうでして。クラウダとお呼びください」


「覚えておくよ。クラウダ」


なんとか1曲だけでもフィリップ王子を独占しなくては。だけど、私もダンスは得意な方じゃないし。


すでに3回はフィリップ王子のつま先踏んじゃってるし。しかもこの男、私と踊りながら視線はもう別の女探している。


すでにフィリップ王子の視線がオルラ様に向けられはじめている。


しまった。オルラ様はひときわ背が大きいから後ろにいても目立つ。


「フィリップ王子。(わたくし)だけを見てくださる」


「どうしたんだ急に」


「大事な友との友情を壊したくなかったら私とダンスを続けて」


「?」


『オルラ!』


袖の方で裏方に徹していたヴィンス様がオルラ様に駆け寄る。


遅い! どんだけ悩んでいたのよヴィンス様。


「ヴィンス⁉︎ どうしたの急に」


「俺と⋯⋯俺と踊ってくれ!」


「⁉︎」


「今日の君は美しい。ぜひ頼む」


「もちろん」


オルラ様はヴィンス様が差し出した手を取り、頬を赤らめながら耳打ちする。


「いつも美しいって言ってくれないとお嫁さんになってあげないぞ」


「⁉︎ オルラ⋯⋯」


2人のやりとりを見ていたフィリップ王子は「なるほど」と、つぶやく。


目的は達成したのだから次の曲で別の人に代わってあげよう。


そろそろ女性陣の殺意に満ちた目に耐えられなくなってきた。


しかし曲目が変わってもフィリップ王子は私の手を離そうとしない。


「?」


「僕は君を離さないよ。今夜はずっと君と踊ってあげよう」


「⁉︎」


まさかフィリップ王子が私に本気? ウソでしょ。


「フィリップ王子、そろそろ他の女性に代わってあげないとかわいそうですわ」


「わかっているのかい? 君はもう僕のものだ」


「⁉︎」


フィリップ王子がここまで私に積極的になるなんて想定外。


どうしよう女性陣の殺意がどんどん強くなってきている。


嫌、私にはカレイド様が⋯⋯


すると黒い人影が現れフィリップ王子から私を引き離す。


カレイド様⁉︎


「こいつは俺の女だ」






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