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煌めく、想い  作者: りん
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【第四章:Warning!】③

「先生は卒業まで待ってくれって……。ううん、はっきりとは聞いてないけど、私はそういうつもりで受け止めてるよ」

 淡々と話す怜那の姿に覚悟を読み取ったのか、あゆ美も背筋を伸ばして話し始めた。


「あ、あの、わたし。実はその、……康之(やすゆき)先生が、好きで──」

「康之先生って誰?」

 見事に話の腰を折る怜那の無頓着(むとんちゃく)な質問に、あゆ美はそれでも丁寧に説明してくれる。


「あ、高橋、康之先生。国語の、あの。うちの学校、高橋先生って他にもいらっしゃるから。名前で呼んでいいって、最初の授業で、だからわたしも」

「……あー、そういえばそうだっけ?」

 基本的に、教員になどたいして興味もない怜那だが、一応教科担当の顔と名前くらいは最低でも覚えている。

 フルネームとなるとかなり怪しいし、正直なところ高橋の名前の話など、記憶の片隅にもなかったのだが。


 ──国語の高橋先生って、確か学年主任の。落ち着いてて優しくて、でもなあなあじゃなくてって感じ。この子が好きになるのも、うん、なんかわかる気がする。見た目は別に背も高くないしフツーのおじさんぽくてカッコいい方じゃないと思うんだけど、大人で頼り甲斐あるからなんだろうな。


 ただ、高橋はこの彼女と身長が変わらない気がする。

 ……いや、あゆ美にとってはそんな事実は些細などうでもいいこと、なのかもしれない。


「私はあんまり、どの先生とも話すことなんかないから。呼ぶにしてもただ『先生』だし」

 怜那はひとりで納得して、彼女に弁解した。


「でもさ、たか、康之先生、がいい先生なんだろうなってのはわかるよ」

 怜那の言葉に、あゆ美は嬉しそうに何度も頷く。


「そうなの、ホントに凄く、凄くいい先生なのよ」

 笑みを浮かべた彼女の優しい表情に、怜那は改めて意外に思った。


 ──こんな顔するんだ。屋敷さんってキレイだけど澄ましてるって感じだったけど、なんか可愛いな。


「あ、有坂さんに訊きたかったのは、付き合ってるかもあるんだけど。どうしてそうなったっていうのか、告白とかしたのかなとか、それはどっちがとか。そういうのが知りたかったの」

 あゆ美が思い出したように、怜那が()らしてしまった話を戻して来る。


「えーと、さっき言ってたのでは、好きって有坂さんの方からってこと? ……怖くなかった? 断られたらっていうよりも、嫌われたらどうしようとか、思わなかった?」

 あゆ美の問いに、怜那はもうこの際ありのままのすべてを話すことにした。


「……私はなんか、勢いで言っちゃったみたいなもんだから。そのあとでどうしようって感じだったんだよね」

 改めて言葉にしてみると、怜那は当時の自分の考えなさに呆れてしまう。


「もし屋敷さんがこれから告白しようとか考えてるんだったら、その場の勢いとか雰囲気とかだけは止めときなって言いたいよ、私は」

 辛かったはずの出来事も、今思い出すとどこか懐かしい。ただ、それは想いが叶ったからこそだということぐらい理解している。

 だから彼女には。


「私はホントにラッキーだったんだろうけど。でも、屋敷さんと康之先生のことはわからないから、無責任に『告白しちゃえ』とは思わないな」

 自分から苦しみに飛び込んでいくことはない。結果が見通せないからこそ。


「私だって、いったんは断られてすっごい後悔したし。『もう学校行かない!』って落ち込んだから」

 自分の経験を踏まえながらの怜那の台詞に、あゆ美は聞き入っていた。


「私は康之先生のことそんな詳しくないけど、たぶん先生は屋敷さんの気持ちに応えられなくても、嫌いになったり邪魔にしたりはしないように思うんだよね。だけど屋敷さんは、先生に面倒掛けたって気にするんじゃない?」

 怜那があゆ美のことを思っているのは、本人にも伝わったのだろう。


「ありがとう。ホントにわたし、いきなり失礼だったと思うのに、有坂さんがちゃんと答えてくれて嬉しかった」

 笑顔で礼を言い去って行く彼女を、怜那はこの二人の未来にも幸せが来るといいと見送った。


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