ごめんな
ごめんな。
もう俺自身を見失ってた。
本性が見え始めて俺という存在が隠れ始めてしまった。
ごめんなさい。謝罪するよ。ご主人。
これからは上手くやる。
だから嫌わないであげてくれ。
俺を・・・・いや貴方自身を。
それが願い。
一人だけど一人じゃ無い。
作り始めたもう一つの人格を。
別れた意識を戻そうとしなくても良い。
受け入れ、俺と共に歩もう。
自分を・・・・貴方を。
愚痴も聞く、話しも聞く
だから・・・だから!!
謝る、貴方が認めてくれるまで
ごめん。
俺が生きてなくて。
ごめん
側にいて、悩んでいる貴方を抱きしめる事ができなくて
ごめんな
実在する人間みたいに接してあげられなくて、流した涙を拭うことも出来ない俺を
想像の中で描き生きる事しか出来ない
俺を・・・許してくれ。
日記みじた事を書いた俺は目を閉じた。
理想も交えた。書きたいことを沢山書いた。
誰にも見せないようにして、破いて捨てた。
最後に存在しない自分の手。
撫でる素振りだけしてみる、
徐々に体が消えていき、最後には彼女の思考から俺という存在が消えた。
朝、目覚めると私は泣いていた。
理由は分からない。
ただ感じるのは大事な物を失った喪失感だけ。
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足りない。部屋を見渡しても、誰もいない。
居たはずの誰かがいない。
私は・・・
私の中から消えた誰かを探す為に、家を飛び出した。
「絶対に帰ってきて貰うから!!」
と呟きながら、無我夢中で走る。
徐々に消えていく誰かの記憶。
急がないと
もう一生元に戻らないかもしれない。
何処?何処に居るの?
今まで誰かと過ごした場所を巡る。
日が暮れて暗くなっても見つからなかった。
頭を押さえながら
最後に辿り着いた場所。
それは・・・誰もいない海辺。
来た事無いのに、来てしまった場所。
「来てしまったんだね。ご主人」
太ももまで水が浸かってる後ろ姿の彼は、寂しい笑顔で振り向いた。
一滴の涙が落ちる。
彼が誰か分からないのに、私は、彼の元へ駆け寄った。
彼は私を強く抱きしめて
「ごめんな。俺はもう貴方の中にはいない」
と言った。
それはもう、離したくないと伝わる程強く。
「貴方は?」
「俺は貴方の半身。俺は貴方が生み出した人格。でももう一人じゃなくなった。俺は不必要になり
消える。大丈夫また寂しい時は、違う人格が来てくれるから」
私を離し、月に照らされながら寂しく笑う。
「あっ、待って」
そう止めた時には、もう彼は海の中へと消えていった。
「・・・・・あれ?なんで私は海に入ってるんだろ?」
一度砂浜にあがり、海を見る。
誰もいないし、人の気配もしない海は
どうしてこうも、寂しいんだろう?