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魔術と守護星座

「ああ、なんてすがすがしい空気だろう」

 昨日と変わらない王都の通り、吸い込む空気だって変わらない筈だというのに何かもう全然別物に感じてしまう。

「さてと、実習室を借りて勉強すると決めたものの、何をするかな。まずすべきは部屋決めだろうが」

 魔術師を養成する学校の実習室は大きく分けると二つのタイプに分けられる。魔術を行使する練習の為の実技実習室と本を読んだりレポートを書くなど座学用の実習室だ。

「まぁ、実技なら他の触媒とってこないといけないが」

 魔術とは触媒とこの世界に漂う魔力を用い超常現象を起こす術を指す。故に魔術師が魔術を使うには触媒が必要であり、緊急時に備えて見習いの立ち位置にある俺達学生も触媒の携帯は許可されているし、常識でもある。ただ、使う魔術によって触媒は異なる為、殆どの魔術師は自身に適性のある種の触媒しか持ち歩かない。故に俺の腰にぶら下がってる容器の触媒も三種類で残りは寮の自室に置いてきている。

「教科書やら参考書も寮だし、どのみち寮には戻らなきゃいけないのか。もっとも」

 行く先の変更と言う訳にはならないが。まず実習室を借りるために事務室に向かう必要があるのだ。

「実技の方は部屋数少ないからな。埋まってたら座学以外の選択肢はないし」

 寮の自室に寄るのは、実習室の状況確認をして使用許可をもらい、鍵を受け取ってからだ。

「出来れば実技の方がありがたいが……こればっかりは行ってみないとわからないしなぁ」

 出来れば空いていますようにと祈りつつ見上げた空は青く。俺の前途をなんとなく祝福してくれて居るようだった。


◆◇◆


「申し訳ありませんが、実技実習室はいっぱいですね」

 祝福してくれていたはずだよなぁと、独り言が漏れたのは、眼鏡の奥から感情の見えない瞳で中年女性の事務員が俺に告げた直後だった。

「いっぱい?」

「ええ。半数は予約で埋まっていましたので、実質使用可能だったのは残り半数。ですが皆さん熱心なことで最後の部屋も今しがた埋まったところです」

「……そうですか」

 休日、今日は休日だ。だというのに遊びにも行かず勉強とかどうなのよとつい問うてしまいたくなるが、実習室の使用許可を求めに来たのは俺も同じだ。

「行き当たりばったりだったしなぁ」

 きっと既に実習室を借りれた奴は休日でも勉強するつもりでまっすぐここに足を運んだのだろう。思いつきで行動している俺に非難する資格なんて皆無だ。

「仕方ない。それじゃ、座学の――」

 方は空いて居ますかと俺は確認しようとし。

「あの、ちょっといいっすか?」

「え?」

 声をかけられて振り返ると、おっぱい、いや、一人の女子学生が軽く片手を上げていた。

「君は?」

「あー、四年生のプレス・マートンって言うっすよ、先輩」

 言いつつ示す人の頭ぐらいありそうな膨らみには、なるほど四年生を現す紫の六芒星バッジが乗っかっていた。ちなみに俺のバッジは五年生を示す橙で、最終学年の六年生は赤、三年生は青、二年が緑で一年は白となる。

「それでその四年生が俺に何の用なんだ?」

「いや、見たところ実習室、それも実技の方の使用をお望みっすよね? 自分、今その実習室借りてたんすけど……はずかしながらちょっと行き詰ってるところでして、よかったら協力してもらえたらなぁって」

「ああ」

 つまり、協力するなら借りてる実習室を共同で使わせてくれるということなのだろう。

「こっちとしては願ってもないことだが、いいのか、そんなに何も聞かずに。魔術的な相性だってあるだろうに」

「そうは言うっすけど、先輩の腰、その触媒でだいたいどーいうタイプの魔術を使う人かは把握できるっすからね」

「そうか」

 どうやら俺の心配は要らぬ気遣いだったらしい。

「けど、一応先に言っておくっすよ。自分の守護星座は女皇座、タイプの方は星座からお察しっす」

「なるほど、となると本当に要らない心配だったみたいだな」

 人の魔術の才能は当人の資質と守護星座の補正で構成され、守護星座の相性がいい人物が側に居ると色々な補正がつく。女皇座は12ある守護星座の中でどの星座とも相性のいい星座として知られている。つまり、誰と組もうが恩恵を受けるのだ。

「俺は剣聖座だ。こちらもタイプは星座でおおよそわかると思うが」

「剣聖座っすか、珍しいっすね」

 俺が星座を明かすとプレスが目を丸くするが、ある意味当然ともいえる。剣聖座は魔術師に向かない星座の一位なのだから。

プチ人物紹介第二段


・プレス・マートン

 エレンと同じ魔術師養成学校の四年生。胸の大きさだけなら学生一と噂されるが、実際は二番手らしい。名前の由来はエンプレス。あのおっぱいでプレスされてみたいからとかそんなんじゃないので、お間違えなく。

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