火曜日の帰り道にて
金曜日から再び火曜日に話が戻ります。
「それで、結衣ちゃんはその青年とお付き合いするのかな?」
「え〜?まっさかぁ・・・会ったこともない赤の他人だよ?あと、あれ嘘だし」
いや、それは薄々気付いてた。
そもそも、こんな夜中にこんな格好してる女性に告白する為に近づいたりするか?話しかけるにしても、いきなり告白なんて真面な人間なら成功しない事ぐらい分かる。
「何の為にあんな事を?」
「え?いや、どっちが嘘ついてるのか分からないから試してみたの。松井君に話しかけられたのは本当だよ」
おいおい。
結衣ちゃんもう少し気を付けなさいよ。
若い女の子一人で夜道歩くだけでも危ないのに、話しかけられて普通に応対したの?あ、普通ではないか?
「あの子、なんで今日もコンビニに来たと思う?」
「あの子って川神が助けた子か?」
それは・・・仕事帰りに、お礼に立ち寄ったとか?
結局今日も川神さんが家まで送って行ったけど。
「あの子と松井君とやら、何か関係してるのか?実は松井君がストーカーとか?」
「・・・私ちょっとこの後誠也君のマンションに寄るから、今日は此処で!またね華ちゃん!」
「え?お、おう?」
俺の質問には答えないまま長谷川結衣は道の十字路を右に曲がる。俺達は一度だけ川神誠也の部屋まで行った事がある。
部屋には一人分のベッドに小さなサイドテーブルが一つ。
小さな冷蔵庫とハンガーラックが置かれており、そこにはいつも着ているライダースと少し違うデザインのアウターがかけられていた。
それだけだった。
生活感が全くない部屋。
「・・・そういえば、あの女の子の名前聞かなかったな」
家に帰り、書斎に座りながらそんな事を考える。
気付けばすっかり夜が開けて朝日が窓から差し込んでいる。
俺はリビングに行くとヤカンをガスコンロに置き火にかけた。そして、テレビをつける。
今日は昼に人が来るから、それまで少し寝た方が良いだろう。俺は、ボンヤリとテレビを見ながら何時間眠れるだろいかと、考えていた。
『ーー前程から行方不明になっているのは、○○○大学の学院生、松井 秀一さん22歳。松井さんは八日の朝松井さんの家族が連絡が取れない事に気づき大学にもーー』
ニュースを聞き流しながら、近所で行方不明か物騒だと他人事の様に聞いていた。
そりゃそうだ。
他人事だ
その朝、スマホが鳴った。
約束の時間にはまだ大分早い。
一体なんだとスマホの表示を見て首を傾げる。
見覚えのない番号からだ。
俺は不審に思いながら電話に出た。
「もしもし?どちら様?」
『華井さんですか?すみません、突然』
俺は電話の相手に驚きながら、相手の話に耳を傾けた。