火曜日
気になっていた事を聞いてみた。
「華井さん。定期購読にしたらどうです?毎回買ってるみたいですし」
華井さんは毎週決まった女性誌を買っていく。
その雑誌、それ程多く入れてないからすぐ無くなってしまうんだ。
「いや、別にそこまでは」
そんな事言っているけど毎回来る度探している。
もしかして、ちゃんと本屋で買っているのかも。
「そうですか」
でも、この人あの雑誌以外基本的に何も買わないんだ。
つまり、こんな夜中にただ時間を潰すためだけに、このコンビニにやって来る。
・・・まぁ、いいんだけど。
この人普段何やってる人なんだろう。
「お、青年よ!今日も元気に働いてるね!」
煩い人が来た。
この人いつも元気だな。
もう少し静かに入って来れませんかね?長谷川さん。
他のお客様の迷惑になりますので・・・いや、他には居ないですけど。
ん?長谷川さん香水変えました?
いつもと違う匂いがするような。何処かで、嗅いだことのある・・・なんだろ?僕香水は付けないからよく分からない。
「何よ、なんだか嬉しそうじゃない」
「それがね?私ある男の子に告白されたの!」
「「「はぁ」」」
へぇ。
長谷川さんってモテるんですね。
確かにその奇抜な格好に目をつぶれば可愛らしい顔だよね。一体どんな方とお付き合いするんだろ?やっぱビジュアル系?
「ずっと前から私の事見かけてて、中々声がかけられなかったらしいんだけど・・・勇気を出して私に話しかけて来たんだって。ビックリしちゃった!」
え?
見かけたって・・・まさか、ここに来る途中でって事?それって大丈夫なのかな?華井さん、川神さんどう思います?
「結衣ちゃん、それストーカーとかじゃね?」
「相手はどんな人なの?」
「ん〜とね?学生さんだって!名前は松井君!近くの漫画喫茶の帰りに私とすれ違ってたみたい」
うう〜ん?
まぁでもそういう事もあるのかな?
長谷川さん目立つから暗闇でも印象的だったかも。
で、なんて答えたんですか?
あ、お客さんだ。
「いらっしゃいませ」
「あ、こ、こんばんは・・・」
「あら?貴女、今日もこんな時間に帰って来たの?一人で?」
アレ?
昨日不審者に後を付けられてた人だ。
またこんな時間?怖い目に遭ったのに大丈夫だったのかな?
「はい。私、夜の仕事をしているので・・・昨日は、ありがとうございました」
「わざわざその事を言う為に来たの?別にいいのに」
こんなに気が弱そうなのに夜の仕事なんて出来るんだ。
何か事情があるのかも。女の人も大変だな。
ん?なんだろ。
長谷川さん?なんで黙ってデザートコーナーに?
まぁいいか。
「いえ。それより・・・今、少し話聞こえちゃったんですが大丈夫なんでしょうか?」
「ん?なんの事?」
「いえ。夜道で、告白されたとか?わ、私も前似たような事された事があって」
夜中に面識のない女性に告白するの、流行ってるんですか?
明らかに不審者ですって言ってるようなものだと思う。
もしそうなら、今すぐやめた方がいいって誰か教えてあげて欲しい。
「心配です。何も起こらないといいんですが・・・」
華井さんも川神さんも黙っちゃいましたけど?
え?僕ですか?
あの、僕はただのコンビニ店員なのでノーコメントでお願いします。