コンビニ強盗なんて初めて見ました☆
11月に入り随分と寒くなって来た今日この頃。
俺はあるコンビニエンスストアにいた。
いや、ここ最近毎日来ている。
習慣とは恐ろしい。
コンビニに来たからと言って特に何か買うかといえば何もないのだが、それでもつい寄ってしまうのがコンビニの魅力だ。特に、深夜のコンビニは時間を潰すのにうってつけだろう。
うん。
そう、コレは現実逃避だ。
今、目に入って来た現実を忘れたい為、俺は現在逃避中。
「騒ぐな。黙ってレジの金を出せ」
ちょっと待てお前。
お前はあれか、俗に言う"コンビニ強盗って奴だよな?
でもさ、お前なんでこの状況で強盗に入った?
店員の他に客がいる事確認してねぇだろ。
それとも偶々押し入ろうとしたら死角で俺達が見えなかったとか?なんて運が悪いんだ!お互いな!
「アレ?店員さん?」
俺が自分のスマホに手をかけた時その声はレジの方向から聞こえて来た。おい、待て嘘だろ?
お嬢さんまさか今、強盗の前に姿見せちゃった?
「動くな!!」
強盗犯の男はコンビニ店員の首に自分の腕を巻き付けてナイフを突き付けた。そして周りを見渡して固まった後、慌てて後退りした。
「全員動くな!動いたらコイツがどうなるか分かってるな!」
やっぱりな。
コイツ、他に客がいた事に全く気が付いて無かったみたいだ。なんて間抜けなコンビニ強盗なんだ。
犯罪犯すつもりなら念入りに下見しとけよ。
「え?う〜ん・・・でも、私別にその人と仲が良い訳じゃないしぃ」
「・・・は?」
「そうね?赤の他人だし?別に言う事を聞く義理はないわね?サッサと帰りたいから、そこどいてくれない?」
怖がるどころか迷惑そうに苦情を言われた強盗犯は真っ赤な顔で焦っている。そして、その強盗犯に掴まれていた青年も感情の読めない声量で苦言を発した。
「・・・あの。抑えられていると、お金出せません」
「煩ぇ!ちょっとお前黙ってろ!おい、そこのちっこいのコッチに来い!」
「え?嫌よ。だからなんで私が言う事聞かなきゃならないの?私関係ないから早く会計して家に帰りたいんだけど?」
可愛らしいピンクのスカートを揺らしながら女の子は迷惑そうだ、男はマスクにサングラス深くニット帽を被っていたが明らかに怒っている。
コレは、俺が今の内にどうにかしなきゃならない流れだろうか?けど、通報するにしても、こんな静かな店内じゃ丸わかりだしなぁ。
取り敢えず男の気が逸れている間にジリジリとそちらに近づいてみる。
「テェメ!このクソアマァ!訳分かんねえ格好しやがって!コッチに来いって言ってんだよ!!」
それを合図に俺は男に向かって走り出す。
先ずは右手に持っているあのナイフを叩き落とし・・・。
「アンタにだけは言われたくないわ!」
ズガン!
強盗犯が店員の体から手を離しちびっ子ロリ娘に手を伸ばしたと同時。少女の背後に立っていた女は女の子の肩を引き寄せると向かって来た強盗犯の顔面に強烈なミドルキックをくらわせた。
クリーンヒットだった。
あ、死んだか?
その現場は、走り出そうとしていた俺と、募金箱を頭の上に振り上げたままの状態の店員の青年、そして目が点になっている女の子。泡を吹いて気絶している強盗犯を冷たく見下ろす、でかい女がいた。
そして徐々に近づくサイレンの音を聞いて俺達はうんざりと互いの顔を見合わせたのだった。