そして、また一週間が始まる
「で?結局依頼が来た時には手遅れだったんだろ?」
そうね。
弟と偽っていた秀一が気が付いた時既に彼は殺されてたみたい。・・・秀一と勘違いされてね。
「・・・実は弟が行方不明だった秀一で?弟は秀一と間違われて殺されたとか?意味わかんねぇなぁ?」
「・・・頼まれてた調査記録よ。そもそも、殺された芳和が秀一と偽って彼女に接触したのが始まりだから、兄がそれを隠したお陰で余計な手間が増えたのだけど?」
あの後、松井 秀一本人は自ら警察に出頭したらしい。
ただ、重い罪には問われないだろう。
彼はあくまで被害者だ。
私達の事も警察には言っていない。
面倒だから適当に誤魔化したからね。
「しっかし、よく嘘を見抜いたな?お前彼とは会ってないよな?」
「・・・私じゃないわよ。あと多分、気付いたのは彼と話した時じゃないわ」
「は?」
長谷川の奴、一体何者なのかしら?
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「順当に行けば次は私を狙って来る。でも、私の本当の狙いはそこじゃない」
「何を言ってるの?話が全く見えないのだけれど?」
「言ったでしょ?私は嘘を見抜くのが得意なの。あと誠也君、諸星の事も気付いてるよね?」
「・・・貴女も?」
多分それは、諸星がちょっと前まで私達の事を覚えられなかった事を言ってるのよね?
コンビニ強盗が入る前の諸星の事を。
「もう、手遅れなんじゃない?彼のルーティーンもあやふやになってるけど?」
詳しい事は調べてないから分からないけど、多分あれは病気だと思う。それも、結構深刻な。
「これ以上崩れる前に手を打つ。それに、下手すると・・・手遅れになるかも」
実は前から気になっていた。
このゴスロリ女、やけに諸星の事を気にしている。
あの子に何か、あるのだろうか?
「兄の周りに何もないなら、弟の方を調べてみて。アイツ多分嘘ついてる」
「・・・なんでそう思うの?」
「あのね?いくら家族が行方不明で、それに関わる人物を見かけたからって馬鹿正直に話しかけて来ると思う?あれは私達を利用して、彼女を動かしたかったんだと思うよ?」
あんた探偵に向いてるんじゃない?
まぁ一緒に働くなんてまっぴらごめんだけど。
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ピッ
「いらっしゃいませ」
「おーう、お疲れさん」
相変わらずの面々ね?
代わり映えしなくて安心するわ。
「あれ?長谷川は今日来てないの?」
「そういや・・・」
「いらっしゃいませ」
あら?丁度来たわね?
なんだか疲れた顔してるわね?
「あー怠い。甘い物食べなきゃ・・・」
何それ。
あんた毎回よく夜中にあんな甘ったるい物食べるわね?
「諸星これ美味しい?」
「・・・・・」
諸星の反応が悪いわね?
華井も気付いたみたい。
何?このタイミングで何かあるの?
「・・・弟になりたかった訳じゃないと思う」
「は?」
諸星は確かに普通とは違う。
その行動は基本規則的に決められたレールの上を走っている。彼は、いつもそのレールを頼りに同じ道を歩いている。
「多分あの人は受け入れられなかったんじゃないかな?弟が自分の所為で死んだ事を」
そして私達も、本当は気づかぬうちに、抜け出せないレール上をただ、走っていたのかもしれない。