日曜日
警察が動き行方不明の男性が見つかりました。
夜中の3時いつも通り三人のお客さんはコンビニにやって来た。そう言えばここ二日くらいは来ていなかったと思う。
「諸星おひさ〜!」
「いらっしゃいませ。長谷川さん今日も元気ですね?」
夜中の3時に、このテンションはない。
僕がそう声をかけると何故か満足そうに長谷川さんは笑った。なんだか気持ち悪い笑顔だ。
「いらっしゃいませ」
少し経ってから入って来た川神さんは、なんだか怒ってる?
え?なんで?なんで川神さん長谷川さんを睨んでるの?
「あ、誠也君お疲れ〜!」
「お疲れじゃないわよ。私また事情聴取されたんだけど?」
「いや、そもそも最初から被害届出そうよ。殺されそうになったんだから」
え?そうなんですか?
もしかして川神さんやっぱり裏社会の人なんですか?
「ああ。松井 秀一の死体が見つかるのを恐れてってやつ?あんなもの、なんの証拠もありゃしない。ただ不注意で井戸に落ちたで処理されたわよ」
「え?そうなのか?明らかに押されたんだろ?」
「そもそも彼女が捕まったのは女性暴行を手引きしていたのと、松井 秀一の殺人容疑がかかってるからでしょ?」
あ、もしかしてこの前の夜の事かな?
誰に連絡していいか分からなかったから思わず華井さんに電話しちゃったけど・・・来てくれて本当に良かった。
僕一人じゃ、あの深い井戸から川神さんを助けるのは無理だったし。
「女は怖いねぇ。気に入らないからってそこまでするかね?」
「やめてくれない?あんなのと同類だと思われたくない」
「で?死体はいつ見つかったの?」
ちょっと皆さん入り口付近でかたまって話するのやめて下さい。お客さんの邪魔になります。
「いらっしゃいませ」
「今晩は。結衣さん」
「あれ?松井君じゃん?どうしたの、今色々大変でしょ?」
長谷川さんの知り合い?
あ、松井君って・・・え〜と、長谷川さんに告白した?
「貴方・・・松井秀一さんの弟の?」
「はい。松井芳和です」
なんだか空気重い。
ん?バイトの先輩が僕を呼んでる。
もしかして交代の時間なのかな?
「ちょっと早いけど今日は上がって。私が代わりに入る」
「はい。お先に失礼します」
ちょっと話の続きが気になる気持ちもあるけど、僕は関係ないし余り関わらない方が良さそうだ。
ロッカーで着替えて上着を羽織りリュクを肩にかける。
店の裏口から出ると丁度お客さん達も帰るタイミングだったらしい。
「色々と、ご迷惑をお掛けしました。父が報酬はちゃんと払うと言っていましたから・・・」
「いいえ?力及ばず申し訳なかったわ。でも、どうにもならない事も世の中にはある」
僕は自転車のサドルに手を置いて聞こえて来た川神さんの声に耳を傾けた。
どうしてだろう?僕は川神さんがとても怒っているように感じた。
「そうですね。もっと早くに気付いていれば、こんな結果にはならなかったですね」
そういえば、松井という男の人から、この前結衣さんや捕まったという女の人と同じ香りがした。
「そうだね?それで、これからどうするの?」
「これからですか?一度家に帰って両親と・・・」
「違う違う。そうじゃなくてさ?」
最初は香水なのかと思ったけれどアレは違うと思う。
昔、学校の理科の授業で使われた科学実験室で使われる薬品の匂いに似ている。
「貴方自身の事聞いてるんだけど?松井 秀一さん?」
僕は、そのまま帰るタイミングを完全に逃してしまった。