第2話 タンデムツイン
謎のバイク“黒鉄”のはなし。
黒鉄の風
にぼし と おれ と バイク
仔猫のにぼし
おっさんのおれ
黒鉄と呼んでるバイク
1匹と1人と1台の共同生活
第2話 タンデムツイン
おれのバイクの名前は黒鉄だ。
大きなクルーザーだ。
黒鉄は、結構古いバイクのようだ。
あるメーカーの試作品っていう噂だ。
上手いこと誤魔化して、おれはこのバイクに乗っている。
名もないコイツに、おれは黒鉄という名前を付けた。
おれは、コイツを気に入っている。
ずっと乗り続けるつもりだ。
黒鉄のタンクは黒く塗られているが、もう艶はない。
今流行りのマットブラックのようで気に入っている。
排気量は1500cc。
とてもトルクフルなエンジンだ。
水冷の縦置きタンデムツインっていうエンジンだ。
2気筒が同時に爆発するため、後輪に絶大なトラクションを掛けることができる。
シャフトドライブは、チェーンのように伸びたり、たるんだりすることがない。
いつもアクセルワークに正確に応えてくれる。
エンジンの左側にエアクリーナーとインテークがある。
右側にエキパイがある。
エキパイはエンジンの下で一つにまとまって、右後方の極太マフラーに続いている。
ハンドルは低くて狭い。
ステップは前に出ている。
ボバーってヤツだ。
洗車をするたびにサビが増えるような気がするが、大雑把に洗って適当にワックスを塗り込んでやれば、ちょっとは光って見える。
最近、一番ダメージが大きいところはシートだ。
仔猫のにぼしがお気に入りの場所なんだ。
こいつが、シートの上で爪を立てやがる。
小さい身体は、丸まるとシートの上でも寝られるらしい。
困ったものだ。
にぼしは、おれの膝の上で眠っている。
これからにぼしのご飯を買いに行きたいんだが、起こすのもかわいそうだ。
まだ陽は高い。
もう少し、空でも眺めていよう。