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あの時、ああしておけたなら  作者: 狂い豚カレー
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⑥振り返り(放課後の性春)

――ふわふわした気分のまま帰宅する。


 自分の部屋に戻り、一息ついた後、今日の出来事の振り返りを行う。


 まず、俺自身の行動についてだ。

 初対面の瞬間は想定外だったものの、自己紹介からその後については問題がなかったように思う。


 身だしなみも整えていたため、おかしなあだ名が付いたりすることもなさそうだ。


 彩に対しては思っていた通りにはいかなかったものの、最後は好印象を与えられたように思うし、周りのクラスメートからも特に悪く見られるようなことはなかった。



 次に、俺自身の変化についてだ。今日は驚くほど楽しかった。

 正直今でも浮かれているし、思い出すだけで布団を殴りたくなるような、何とも言えない気持ちになる。

『恋をしている』という自覚もある。

 とは言え、本来三十五歳のはずの俺が、ここまで熱を上げてしまうとは考えてもいなかった。


「身体があの頃に戻った影響か?」


 今の俺と言えば、知識と経験は三十五年分あるものの、それが頭の中に入っているだけで、本質的には身体も脳味噌も中学生なのだ。

 偉そうに理性が理屈を捏ねても、思春期の衝動がそれを上回ってしまう。

 思春期はホルモンバランスが変わる時期と言うが、ちょうど今俺はそれに中てられているのだろう。


 彩と出会った瞬間、自分が馬鹿になったような感覚があったが、実際馬鹿というか衝動的になったのだろう。

 ちなみに今物凄くムラムラしている。


「となると、厄介なことになるな……」


 前世の中学時代の失敗。

 それは感情に任せて動きすぎたことだ。

 彩の言動や行動に一喜一憂し、少々度を越えた行動をしてしまっていた。

 ストーカー行為もその一つだ。

 今ならそれがおかしなことだと理解できるし、実際高校生になってからはその反動と反省から、努めて感情に動かされないように行動してきた。

『俺』が『俺』でなくなっていったのには、そんな背景があった。


 ――だがしかし。


「抑えらんねー!! 彩ちゃ~ん!! 好きだ~!! おかずなんてなくても頭の中が彩ちゃんでいっぱい!? 今日は制服の彩ちゃんで抜いちゃいます!!」


 本能に支配された中学生の俺は、知識と経験があろうとも所詮猿以下だったのだ。


――


 二発抜いた後で、冷静になる。

 冷静にセックスがしたい。

 国のために働いていた俺だが、今は彩に狼藉を働きたい。そう、働き方改革だ。

 フレックスよりセックス。

 テレワークよりテレフォンセックスだ。


 あぁ……!!

 終わった後ならいくらでも言えた、『ああしておけば、こうしておけば』だったが、いざ現実になるとこんなに苦しい……。

 行動に移せないかもしれない……。

 

 だって好きなんだもん!


 嫌われたくないんだもん!!


 明日からちゃんと話せるかな……。

 

 ああ、不安だ!


 でも好きだ!

 恋だ!!

 楽しいぃぃぃ!!!



「博和、ご飯よ」



 母の一言で一瞬で冷静になる。

 さっきまでは全然冷静ではなかった。

 今ならそれが判る。


「今、行くよ」


 さすがに不味かった。

 こんなことばかり考えていたら、前世の二の舞だ。

 不味い晩飯を食べて気持ちを落ち着かせて、今後のことを考えよう。


――


 ある意味二重人格の様になりつつあるが、今生でも前世でも、俺のゴールは『幸せになること』だ。

 何ともあやふやなもので、『幸せの定義』なんてものは存在しないとも思っている。

 前世では世間様に恥ずかしくないような、真っ当な道をしっかりと歩むことが、幸せへの一番の近道だと考えていた。

 しかしながら、結局俺の最後の瞬間はとても幸せと呼べるような代物ではなかった。


 人生の途中から、本当は気付いていた。


 幸せという形の無いものを探すのに、確かな方法なんてものはないってことを。


 裏を返せば、幸せになるには、人によって様々な生き方や方法があるということ。


 俺は、幼い考えで早い段階から自分を窮屈に縛り付けて、間違いに気付きかけた時には、もう積み上げたものを崩せなくなっていた。


『真っ当』と謳いながら、その実、幸せの方角に向かっていない道を真っ直ぐに歩き続けたところで、その先にあるのは幸せではなかったのだ。


『努力』『自己研鑽』という言葉で、世間的には賞賛される方向に向かい、ある意味では楽をしながら、本当の自分と向き合ってこなかったのが前世の自分。



 となれば、今生の自分は、自分と向き合って、別の方法で幸せを探すべきだ。

 そして、前世での大きな後悔である『恋愛』と『趣味』。

 ここをしっかりと拾い上げ、本当の意味で悔いを無くすことが、俺のゴールだ。


 もしそのゴールの時に、俺の前世から続く後悔が消えていたら、それは幸せと呼べるものではないだろうか。


 そして、今幸せに近づくためには、彩と恋愛をすることだ。

 もっと言えば、彩に惚れてもらうことだ。

 そのためには、俺は俺を磨く。

 このむせ返る様な衝動を楽しみながら、真剣に今を生きるのだ。


 今日の出来事は、まだ一歩目。

 ただし、正しい方向を向いた一歩目だ。

 間違ったら、何回でもやり直せばいい。


 必ずその先にゴールがあると信じて、俺はまた歩いていくことを決意した。

ここまでお読みいただきありがとうございます!

主人公がおかしくなったのは、作者のキャラ設定が適当だった訳ではなくて、思春期だったからなんですね!

いや~、今後もこんなこと、あると思います。

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