表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
あの時、ああしておけたなら  作者: 狂い豚カレー
15/35

⑮一緒に帰って友達とかに噂されたい

「あれ、博和?」

「おぅ……」


 彩は俺を見つけると、普通に声をかけてきた。 

 正直怒られると思っていただけに、肩透かしを食らう。


「何やってるの?」

「あ、新田のこと待ってたんだ」

「私を? え、何か用事?」


 ……しまった、偶然を装えていない。

 これでは待ち伏せだ。いや、事実なのだが。


 それにしてもこのリアクション。

 朝のセクハラはもう怒っていないのか、それとも忘れたのか。


「いや、朝のこと。ちゃんと謝ろうと思って」

「あ! そうだよ! 変態!」

「ゴメンナサイ……」

「私のことエッチな女扱いして!」

「スミマセン……」

「あれ、丘も相当だったけど、やっぱり博和が原因だよね!」


 ……忘れていただけだったようだ。

 朝の出来事と同時に怒りも思い出したようだ。


「もぉ~! おかげで今日一日恥ずかしい気持ちで過ごしてたんだからね!」

「モウシワケナイ……」


 いや、さっきまで忘れてた気がするが。

 だが、俺には分かる。それを口に出してはいけないと。

 口は災いの元だ。

 

「じゃあ、『エッチなことを考えていたのは僕と丘で、新田さんはエッチじゃありません』って言って」

「エッチなことを考えていたのは僕と丘で、新田さんはエッチじゃありません!」

「うんうん、次は『朝ごはんの話と見せかけて僕はセクハラをしました』」

「朝ごはんの話と見せかけて僕はセクハラをしました!」

「最後は『僕は女の子にセクハラして喜ぶ変態です』」

「僕は女の子にセクハラして喜ぶ変態です!」


 うん、なんだろう。

 ご褒美かな?

 言わされて喜んでいる俺がいるぞ!

 あと、彩はエッチじゃないとしてもSなんじゃないかな。


「……うん! いいよ、もう」

「え、ホントに?(もっと欲しかった)」

「うん、丘は許してないけど」

「そっか、あいつは許さなくていいよ」

「あとさ、元気出た?」

「え?」

「ほら、朝何か元気なかったじゃん? ホントは朝ごはんのことだけじゃないでしょ」

「……」


 くっ。いい子だ。

 

「ありがとう。元気出たよ、大丈夫」

「そう」


 優しくされると好きになっちゃうぜ。

 いや、そもそも好きだから、もっと好きになっちまったぜ。

 

「じゃあ私、そろそろ帰るから」


 ここで『一緒に帰ろう!』と誘う勇気は俺にはなかった。

 

『一緒に帰って、噂になると恥ずかしい』なんて言われた日には、立ち直れる気がしないからな!



 だがしかし!


 それは前世までの気弱な俺!


 さっき貰った元気で俺は誘う!


 朝一のマイナスを、プラスに変えるのだ!


「あ、一緒に帰らない?」

「え? 博和の家、逆方向でしょ?」

「あ、あっちの道通れば途中まで一緒だからさ」

「ああ、じゃあ途中まで行こっか」


 やったぜ!


 ――こうして俺は、彩と一緒に下校することとなった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ