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あの時、ああしておけたなら  作者: 狂い豚カレー
13/35

⑬主人公?異常者です。

 バンドについて、丘と慎二の理解を得られた。


「とりあえず、明日担任に相談してみるわ」

「分かった!」


 この勢いだけで判断する感じ、とても良い。


「あ、でも……」

「ん?」

「新しく部活が作れるって決まったわけじゃないよな?」

「ああ」

「とりあえず、作れなかったら元々考えてた部活入るけど、大丈夫?」

「勿論だ。部活は作るけど」


 俺は有言実行の男だ。

 

「ただ、部活にならなくても、俺はバンドやりたいと思った」


 慎二、いいね! そういうの!


「俺も。と言うか、机じゃなくてドラムを叩きたい」


 丘! よく考えればそうだよな!


「真顔で机を叩く丘、カッコよかったよ」

「机は叩くもんじゃねーだろ」

「柔道してる丘よりカッコいいよ」

「お前を叩いてやろうか」


 世の中には洗濯機を叩いて演奏するバンドもいるんだが、こいつに言っても信じてもらえなそうだ。


「そしたら、スタジオに行ってみようか」

「スタジオ?」


 そうか、中学生じゃスタジオも分からないか。


「ああ、楽器屋とかに貸しスタジオっていうのがあって、防音の設備とかも整ってるから大きな音が出せるんだ。それに、ギターだったら大きな音が出せるアンプっていう機材も置いてあるし、ドラムセットやボーカルのマイクとかもある」

「へぇ~」

「ただ、一時間で千円以上はかかっちゃうから、そんなに頻繁には入れないかな」

「高いな!」

「そう、だから家とかでしっかり練習するとこは練習して、みんなで合わせるために入る感じだ」

「なるほどね」

「もし出来るんなら、家にあるギターでちょっと練習しておけば良い。ドラムも家だと雑誌とかを叩いて練習するみたいだし」

「マジで?」

「マジマジ。手でもいいんだけど、最低限スティックが用意出来ればな」

「スティックはすぐには用意出来ないかもな……。代わりになるものはあるのか?」

「……菜箸?」

「菜箸、か……」


 丘のテンションが微妙に落ちた気もするが、気にしないでおこう。


「それか、音楽室にドラムはあるから、スティックは絶対にあるはず。借りられるかは分からないけど」

「ああ、まぁ大丈夫。曲聴いてイメージ出来れば。ってか、さっきの曲のテープ、貸してくれよ」

「俺も! 家で聴きたい!」

「分かった、ダビングするからちょっと待っててくれ」


 俺は買い溜めしてあったカセットテープを取り出すと、コンポでダビングを始めた。

 再生しながらなので、時間はかかる。


「部活に出来れば、部室が使えてスタジオ代もかからないし、部費で楽器のメンテナンスも出来るかと思ってるんだ」

「ああ、そういうこと」

「放課後の時間もいい感じで使えそうだしな」

「そう聞いてると、部活作るってのも良く聞こえてくるな」

「分かってくれたか」


 なお、俺は部活に関わることをほとんど私物化することしか考えていない。


「善は急げ、だ。早速明日の朝、授業が始まる前に先生に聞いてくる」



――



「えっ? 無理?」


 我が家にてバンドを結成(?)した翌朝、俺は軽音楽部の新設の相談のため、職員室に来ていた。


「ああ。内容についてはそこまで問題はないんだが……」


 担任が微妙に言いづらそうに言う。


「では何故?」

「まず、場所だな。軽音楽部というからには音を出せる場所が必要になるんだが、音楽室とか、そういうのに適した場所は吹奏楽部と合唱部が既に使っているんだ」


 確かに。音楽系の部活は既に存在しており、音が出せる場所は既に押さえられている。


「勿論同じ音楽系ということで、場所を分け合うことも出来なくはないだろうが、当然先に場所を使ってた部からは不満が出るだろう。人数も規模も違うしな」

「なるほど……」

「次に顧問だな。俺達ももう年度でどの部活を見るかは決まっているし、指導が出来る人材を当てられるかも怪しい」

「はぁ……」

「後は、そういった諸々の事情も加味して、部活の新設は年度末までに準備して、年度当初に立ち上げ、というのが決まっているんだ」

「となれば、新入生が部活の立ち上げをすることは?」

「まずないな……。俺の知る限り前例もない。ソフトテニスは昨年度の中頃から話も上がって、何とか立ち上げられたが、昨日の今日だと難しいだろうな」

「そうですか……」

「まぁ、今相談してもらったから。二学期になっても気が変わらなくて、部員が集まりそうだったらまた動けばいい。来年度には新設出来る可能性はある」

「今年出来ることはそれくらいですかね?」

「そうだな……。それこそ、吹奏楽部が休みの時に音楽室借りたり、文化祭の出し物で出演の交渉をしたりか? 同好会的に活動して認知度を上げて、周りの理解を求めるか。何か分かりやすい実績があればそれもいいんだけどな」

「何かコンテストとか出たり?」

「ああ、そういった大会の出場は分かりやすいかもな。学校の支援と言うか、部費とかは出ないが」

「よく分かりました。ありがとうございました!」


 言われてみれば納得出来ることばかりだ。

 残念だが仕方がない。

 今生が順調に進んでいたため、初とも言える挫折に若干凹んだが。


 俺は職員室を後にして、教室に戻った。


――


 自分の席に着いた俺は、先程のこともありテンションが低い。


「おはよ~」

「おはよう」


 彩が登校してくる。テンションの低い俺を見て、目をパチクリさせている。


「あれ、なんか元気ない?」

「ああ、ちょっとな」

「へ~、珍しいね。話聞いてあげようか?」


 あれ、彩が優しい?


「え、優しい?」

「博和、普段どういう目で私を見てるの?」

「地上に降りた最後の天使?」

「……聞いた私が馬鹿だったね」


 おお、冷たい眼差しは百万ボルト!電撃怖いっちゃ!

 

「いやいや、テンション低いのよく分かったな、って」

「毎日話してれば分かるよ」

「そっか。いや、大したことじゃないんだ」

「ふ~ん? まぁ、博和元気ないと面白くないから」 

「お、おぅ」

「早く元気出してね?」


 う、嬉しい……。

 胸の奥が温かいぜ。


「あ、ありがとう」


 よし! 落ち込んだ姿で心配かけちゃいけないな。

 いつもの元気な俺を見せよう。

 ここは一つ、ウィットに富んだジョークで場を和ませるぜ!


「実は今日、朝抜いてきちゃって」

「……は?」


 彩は固まる。可愛い。


「朝抜くと力が出ないんだよな」

「……あ、朝から何言ってんの?」


 彩が珍しく動揺している。可愛い。

 大丈夫、この後小粋なジョークが飛び出すんだ。


「本当は毎朝抜いてきてもいいんだけど」

「……男子って、そういうもんなの?」


 ついに顔を赤くしながら彩が聞いてくる。

 こんな顔を見るの初めてだな。可愛い。


「他のやつは分かんないけど、少なくとも俺はそうだよ。おかず次第」

「おかず次第って……!」




「うちの母さん、料理が苦手みたいでな……」

「は?」


「俺、好きな食べ物じゃないと食欲湧かないんだよな」

「……」


「好物じゃなくて、美味しくないおかずは、さすがに朝から沢山食えないからさ」

「…………」


「今日は朝飯抜いてきたんだ」

「~~~~!!」


「ん? どうした?」

「何でもないっ!!」


 そう言うと彩は、席を立って何処かへ行ってしまった。可愛い。

 

 ……あれ? 場が和んでない?

 ジョークの効果は今ひとつだ!


 なお、俺の元気は回復した。


――


「おいおい、博和」

「丘。いたのか」


「気付けよ。朝から新田にセクハラするなよ」

「え? 朝抜いた話だろ?」

「朝抜いた話だ」

「飯の話だろ?」

「おかずは?」

「彩ちゃん」

「やっぱ抜いてんじゃねーか」


 安い誘導尋問に引っかかってしまった。

 まぁ正直、Hなお話は早いうちに出しておいたほうが後々やりやすい。

 あまり真面目だと思われると、先に進みづらくなるからな。


「あと、部活の話はどうだった?」

「ちょっと難しいかもな……」

「そうか……。まぁ元気出せよ」

「あ、彩ちゃんと話したから大丈夫」

「ちょっとは落ち込めよ」

「元気もらっちゃった」

「新田の元気を吸い取ったんだろ」

「俺、彩ちゃんがいれば何もいらないかも」

「お前のものでも何でもないけどな」


――


 彩が戻ってくる。まだ少し顔が赤い。


「新田、さっきはどうした?」

「……」


「具合でも悪いのか?」

「…………」


 ヤバイ、口を聞いてくれない。

 見かねた丘が横槍を入れる。


「さっきのは博和、お前が悪い。謝っとけ」

「だよね! ひどいよね!!」


 彩が丘に乗っかる。


「え、何かおかしなこと言ったか?」

「ムカつく! 分かってて言ってたくせに!!」


 プリプリと怒る彩も可愛い。

 ここまで自分を曝け出してくるのは初めてじゃないか?

 喜ばしい。


「ああ、さすがに自分の母親を悪く言うのは良くないよな。ゴメン、反省してる」

「~~! そこじゃなくて!!」


「博和もそのへんにしとけよ」


 丘が止めに入る。彩が期待に満ちた目で丘を見る。羨ましい。

 少し辺りが静まったところで、丘は口を開く。



「新田はな、お前の話を聞いてオナニーの話だと思ったんだ。そりゃ、朝からオナニーしてれば疲れちゃうわな、と。あ、『抜いた』って表現からオナニーに繋げられるのは、エロ本読んだことないと無理だからな。新田も結構読んでるのか?まぁとにかくだ。お前は女子の前でオナニーの話をする変態野郎だと新田は思ってしまい、お前のオナニーを想像して顔を赤くしていたんだ。それをお前、朝飯の話だなんだって言葉遊びをされれば、誰だって恥ずかしくなるだろ。『オナニーだと勘違いした自分がエロい!』って宣伝しているようなもんだ。勿論、オナニーを知ってるくらいで俺は新田をエロいと思わないし、人間なら普通だと思っている。だから博和、お前が悪い。『オナニー』と勘違いさせるようなこと言って申し訳なかったって、お前からちゃんと謝れ」



 うわコイツ八回くらい教室でオナニーって言った!


 ちなみに彩は途中で「死んじゃえ!!」と言いながらまた教室を出て行った。


 清清しい表情で俺を見る丘を見て、俺は笑顔で中指を立てた。 

年度末より年度初めが忙しいという罠!更新遅く申し訳ありません。。。

主人公がイカれたおかげか、ヒロインはノクターンの時のように簡単になびきません!

この後どうなるんでしょうか。

引き続き、引き続き何卒よろしくお願いいたします!!

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