⑪バンドやろうぜ!
今日も今日とて三人で帰る。
慎二も丘も、他にやることはないのだろうか。
「結局博和は部活どうしたんだ?」
慎二が聞いてくる。
「まだ考えてる」
ソフトテニスも悪くない、バスケも面白いかもしれない。
パソコン部も検討の対象には入っている。
柔道?
それはない。
そして、それ以外にも考えていることがあった。
「新田の部活は?」
丘も重ねて聞いてくる。
「ソフトテニス部」
「へぇ……」
「何だよ?」
「いや、てっきり新田と同じ部活に入るかと思ってたよ」
「まぁ、考えてはいたんだけどな」
有力候補ではあったが、前世とは違うことをしてみたい、という思いも芽生えていた。
「テニスか~。でも、博和にピッタリだと思うよ」
慎二が言う。
「初めて言われたな。どんなところが?」
「ほら、棒を握りしめるの得意じゃん」
そりゃ毎晩握り締めているけども。
「タマを叩きつけるのも」
どんなアブノーマルプレイだ。
「○ニス部って感じするわ」
……今『テ』じゃなくて『ペ』って言ったろ。
どこの韓流スターだ。
……低いな~、こいつらの発想が低すぎる。
低空飛行だ。
いや、空も飛んでないからただの『低』だ。
地下にもぐってブラジルまで行ってしまえ。
『聞こえますか~?』ってやかましいわ!
ブラジルの人に聞こえてたら、そんなんただの国際電話だ!
通話料は高額だ!
「うるさい。俺はもっと高尚なことを考えている。君等とは違うんです」
未来のお偉いさんのような発言をする俺。
「是非そのお考えを教えてください」
丘がニヤニヤしながら言う。
「え、ホントに? どんな?」
慎二は真に受けている。
よし、ここは一つ語ってやろう。
「俺は、部活を新しく立ち上げようと思ってる」
『えっ?』
驚く二人。
固定概念に捕われやがって。
部活は入るものじゃない、作るものだ。
「いや、そもそもテニス部だって新しく出来ただろ?」
「まぁ……。確かに」
「だから別に、新しい部活を立ち上げようと思えば立ち上げられるはずだ」
「いやいや、そもそも何の部活やるの」
「バンドだ」
「は?」
「部活で言えば軽音楽部だ」
「いやいや、お前楽器なんか出来たっけ?」
「最近ギターを始めた」
……ちょっと嘘をついてしまった。
本当は二十年くらい弾いている。
「部員はどうするんだ? 一人じゃさすがに無理だろ?」
「そうだな。お前等二人が入るとして、三人だと足りないか」
『はい?』
「さすがに柔道とパソコンはモテないぞ」
「うるせぇ」
こいつらをカッコイイ部活に入れてやりたい。
前世の高校時代には一緒にバンドをやっていたので、押せば何とかなるはずだ。
「今から俺の家に来い。バンドの素晴らしさを教えてやる」
ここまでお読みいただきありがとうございます!
また、更新ちょっとお待たせいたしました!
年度末、中々に忙しい時期ではありますが、何とか更新出来るよう頑張ります!
引き続きよろしくお願いいたします!