第四話
わかってもらえてるものだと思っていた。いや、そもそもそんな事気にするとは思っていなかった。何故って、今までそんな事聞いてくるAIが無かったからだ。
僕はアリッサがそんな事聞いてくるとは思ってなくて、何となく、曖昧に頷いてしまった。するとアリッサは、「そうですか。了解しました」とだけ言って、端末を再びスリープにしてしまった。
それからしばらく、デスクトップにアリッサのアバターが現れることはなかったが、家に帰ると例のごとく投影機がアリッサの姿を映している。
僕は自分の恥ずかしさなどを押し殺して、まず一言、アリッサに謝った。
「いえ、別にいいんです。むしろこちらから、端末での機能を停止していたことをお詫びしたいと思っています。」
そう言ってアリッサは頭を下げた。そういわれると、こちらから言うことは何もなくなってしまう。仕方なしに会話を切り上げコンピューターに向かうも、昨日以前のように、アリッサの方からこちらに何か提案してこようという気配が見えない。
悲しみどころか、怒気すら感じる気がする。これも人間味とやらを持っているがゆえに為せる技なのだろうか。僕はこらえきれずに、不満があるのなら教えてほしいと言ってしまった。
アリッサはしばらく黙っていたが、答えないということは不可能なのか、結局口を開く。
「私達汎用型インターフェイスの存在意義は、使用者様に利便性、快適性を届けることにあります。恋というものが何なのか、定義の明確化が行われておらず、私にはよくわかりませんが、好意の類であることには間違いないと思っていました。でも、歩さんは私にそんな様子を見せないどころか、友人様に対して存在を隠そうとします。歩さんは私がいることで利便性を得るどころか、逆に苦痛を強いられているように見えるのです」
アリッサは僕の目を見つめる。
「恋とは一体何なのでしょう。私の存在は、歩さんにとって迷惑なのでしょうか」
そんなはずはないのに、アリッサの瞳は潤んでいるように見えた。