第二話
「Hi歩さん! 汎用型インターフェイスAI、仮称Alyssaです。それでは、改めてよろしくお願いします」
この手のAIの口上としては簡素で少々フランクな自己紹介を行い、アリッサのホログラムは出会った時のように僕に微笑んだ。
未だに彼女を目の前にすると、動悸など特有の症状が現れるが、流石に少しは慣れたのか、どうしても目をそらさずにいられないという程のものではなくなってきた。
今回も別に僕自身がアリッサを起動していたわけではなく、
どうやら岩崎さんは宣言通り、このAIを常時起動するようにアップデートを行ったようだった。外出中もこのコンピューターの電源はつけたままだったので、自動的にアップデートは行われ、投影機も稼働し始めたということだろう。
可能な限りアリッサと接する時間を増やすこと、そのためのアップデートを受けること、それが岩崎さんの出した条件だった。
「お話は伺っています。何かお手伝いできることがあれば何でも言ってください!」
そう言って、アリッサは両手で小さくガッツポーズをする。ある意味アバター付きAIらしい、わざとらしく可愛らしい仕草だ。そんなものでも僕にとっては刺激を受けるのに十分だったが、それよりも少し気になる点がある。
「話は伺ってるって……どこまで?」
「それはもう、歩さんがうちの社で話してくれたこと全てです。アップデートを通して岩崎からもその情報は届けられていますが、歩さんの端末の中でバックグラウンド稼働してましたので、会話内容はすべて把握できてます。あ、端末の中の私もアップデートは済んでますので、同期は完璧です」
あれを聞かれていたのか。アリッサのホログラムはどこか誇らしげにしているが、僕は今にも悶絶してしまいそうなほど顔がほてっていた。
僕はぶっきらぼうに「とりあえず宿題済ませるから、おとなしくしといて」と、ホログラムに背を向けモニターに向かった。普段なら休日の宿題なんてぎりぎりになって重い腰をあげ、仕方がないと始めるものだが、何でもいいからやっていないと、落ち着かなくて耐えられそうになかった。しかし、落ち着かない原因から背中を見つめられている状況で集中なんてできるはずもなく、僕は普段倍以上じっくりと問題文と向き合うことになってしまった。
こんなに心を乱して、勉学にも影響する。やっぱり恋は害悪だ