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mirikoworld外伝 〜初代救世主ミーアノーアの異世界英雄譚〜  作者: 北村美琴
第2章戦い、始まる
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運命の出会い

「ダークネスパワー!」


 ダークキングの投げた黒い気の塊が、ミーアノーアに向かっていく。


「えいっ」


 ミーアノーアは聖麗剣で、それを弾き返した。


 ビュッ。


 首を傾けダークキングはかわす。


「やるな。さすがは救世主に選ばれただけのことはある」

「あなたも」


 二人ともまだ真の力を見せようとしない。お互いのパワーを探るように、じわじわ近づく。

 先に沈黙を破ったのは、ダークキングだった。


「ダークネスパワー!」


 また同じ事を。

 それは通用しないと、ミーアノーアが聖麗剣を構え、弾こうとした瞬間、


「ダークネスソード!」

「えっ!?」


 ミーアノーアの右腕を、一本の剣が貫いた。

 ダークキングがとっさに自分の手に気を集中し、剣に変え攻撃したのだ。

 いや、全てダークキングの計算通りだった。

 ダークネスパワーなど放ってはいない。

 フェイントをかけられた。


「ミーアノーア様っ!」


 右腕を押さえ、彼女は倒れ込む。

 すぐにスゥイが駆けつけ、傷口に布を巻いてくれた。


「ありがとう。大丈夫よ」


 スゥイに支えられ、立ち上がる。

 ダークキングはじっとこちらを見ていた。

 そしてーー、


「死ね!!」


 ダークネスパワーがスゥイとミーアノーアの二人に迫る。

 その時、天の救いか、一本の剣が彼方から飛んで来て、ダークネスパワーを消し去った。


「何者だ?」


 驚いて叫ぶダークキング。

 砂煙の中、一人の若者が姿を現す。

 髪は黒い長髪で、顔はキリッとした美形の男。背丈はスゥイと同じ位か。衣服は鎧ではなく動きやすそうな布の服だったが、彼の全身から出ている気から、強さは相当だというのが分かる。

 腰には先ほどの剣が入る鞘がぶら下がっている。


「これ以上、救世主に無礼な事をすると、僕が許さない。今は退け」


 静かだが、有無を言わせない迫力で彼は言った。


「むっ」


 ダークキングも彼の実力に気付いたのだろう。

 一歩、後ろに退いた。


「いいだろう。助太刀が入るとは。この勝負、預けておくぞ」


 ダークキングは闇に帰った。


「あなたは、どなたですか?」


 突如現れた青年に、ミーアノーアが尋ねる。

 彼は自分の剣を鞘に戻すと、振り向いた。


 ドキッ。


 爽やかな笑顔だ。


「申し遅れました。救世主ミーアノーア。僕は、聖なる龍の息子、竜王子(りゅうおうじ)ドラミールという者です」

「聖なる龍の息子!?」


 その場にいた誰もが驚いた。目の前にいる彼は、まさしく人間。龍とは似ていない。


「驚くのも無理はありません。僕は元々、牙龍の谷に捨てられていた子供でした。それを母、聖なる龍が見つけてくれて、ここまで育ててくれたのです。魔法も、母から習いました。そして母は、闇と戦うあなた方の力になればと、僕をこの地に送ったのです」

「そうだったのですか」

「ええ。本日この時より、僕をあなた方の仲間として、側において下さい」

「分かりました。あなたの力、頼りにさせていただきます」


 ミーアノーアとドラミールが握手を交わす。

 突然の申し入れだったが、闇と戦うミーアノーア達にとって、仲間が増えるのはいい事。聖なる龍の気遣いにも感謝したい。それに、この青年とだったら、仲良くやっていけそうな気がする。

 ミーアノーアは直感で、そう感じた。

 けど、スゥイはどこか違う。

 その時の二人の様子に、彼はチクッと、胸が痛んだ感じがしていた。



 それから三ヶ月、ドラミールはすっかり仲間として、ミーアノーア達に溶け込んでいた。パリークの女子達の人気も高い。竜王子ということで、スゥイとは違う魅力を感じる人が多いのだろう。

 この頃、ダークキング率いる闇の勢力は、パリークから広がり、パラダイスワールドの南半分に手をかけようとしていた。しかし、グランドキャッスルは落とせない。ミーアノーア達は、他の村にもこれと同じような丈夫な塔を建てて、逃げ遅れた人々を救出する活動を、戦いと同時に行っていた。


 今日は雨が降っている。なぜだかこんな日はダークキング達は攻めてこない。少しゆっくりできそうだとスゥイはベッドに横になっていた。ここのところずっと戦いが続いていたため、疲れがたまっているのかも。ミーアノーア様も今は休んでいるはずだ。

 目を閉じ一時間程眠る。


 コンコン。


 ドアをノックする音。


「はい」


 カチャ。


 入ってきたのはドラミールだ。


「ドラミール、殿?」

「ごめんスゥイ。眠っていたところ悪いけど、少し話がしたいんだ」


 スゥイはまだ、ドラミールに遠慮している部分がある。聖なる龍の息子ということで、うまく話ができないでいた。それに、ミーアノーアとドラミールが仲良くしているのを見ると、胸が痛くなる。


 スゥイはベッドから起きて、ドラミールと通路に出た。

 回りに人はいない。


「あのさ……」


 ドラミールの口が動く。

 スゥイは言葉を待った。


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