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mirikoworld外伝 〜初代救世主ミーアノーアの異世界英雄譚〜  作者: 北村美琴
第2章戦い、始まる
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闇の神、誕生

 ゴゴコゴゴコ。


 魔空間の片隅。

 巨大な音をたてながら、その邪悪な生物は、今まさに誕生しようとしていた。

 人間界から飛ばされてくる、悪しき心の影響を受け、闇は次第に膨らんでいく。


 ガガッ、グワッ。


 闇は人の形をとる。

 が、それは形だけ。邪悪な心が固まっているに過ぎない。

 器となる、人の身体を探さねば。

 その闇は、パラダイスワールドに狙いを定め、他の闇に隠れて近づいた。

 ふわふわと上空を漂う。

 人気のない森の中。モンスターに襲われ倒れていた男性がいた。男性に家族はいない。一人でこの森に住んでいたらしい。

 闇が近づく。

 男性は瀕死だ。動くこともできない。


 〈フフフ……〉


 闇が囁く。


 〈ちょうど良い。貰うぞ。その身体〉


 男性の身体の中に、闇が入った。

 身体中から、闇が溢れる。

 一瞬にして傷が治った。

 目を見開き、体の感触を確かめる。

 良い感じだ。


「フフフ、ハハハ、アハハハハハ……!」


 これで肉体は手に入れた。

 邪悪な心の生命体、魔の神、ダークキングの誕生である。


「フフフ。この地はなかなか良い。よし決めた。この地をわしの物とする」


 こうして、ミーアノーアとダークキングの因縁は、始まったのだった。



「はっ」


 何か悪い予感がする。

 ミーアノーアは一目散に部屋を飛び出して窓の外を眺めた。

 闇が、大きくなっている。

 スゥイ達が懸命に退けた闇が、また襲ってきたのだ。


「ミーアノーア様」


 スゥイが階段を上がってきた。

 街の住民達は、朝早いこともあり、まだほとんど眠っている。

 ミーアノーアは彼らを起こさないよう、そっとスゥイに戦士達と一緒に司令室に集まるよう指示した。

 スゥイは、窓の外を見て状況を理解し、戦士達を呼びに下りる。

 司令室の扉は取っ手を持ち、両手で外側に開く両扉のタイプだ。中の声が漏れないよう厚くなっているため、開く時に力がいるが、そんな思ったほど重いという訳じゃない。

 長いテーブルが縦に置かれている。

 両脇に十人ずつ座れる。

 そして、ミーアノーア専用の椅子は、みんなとは違う場所、テーブルの横の部分に置かれていた。

 部屋の扉を開けた時、まっすぐミーアノーアの顔を見られるようになっている。


 スゥイ達が入ってきた。

 扉が閉められ、席に全員がつく。


 ミーアノーアは戦士達の顔を見て、聖なる龍が言っていた魔の神、ダークキングの話をする。

 戦士達に動揺が走る。

 言葉を発したスゥイの声も震えていた。


「それでは、この闇は、そのダークキングが誕生したために起きた闇だと言うのですか?」

「それはまだ分からないわ。けれど、それが本当だと言うのなら、これからの戦いは、きっと厳しいものになる」


 ざわめきが支配する。

 恐怖で頭を抱える戦士の姿も見えた。


「それでは、これから俺達は、その強力な闇と戦うことになるのですね」

「ええ。それから、もし戦いたくないという人は、遠慮しないで言って下さい。誰も責めたりしないわ。恐怖を感じるのは、普通のことだもの」


 戦士達は沈黙した。

 しかし、自分たちはグランドキャッスルを守る戦士。

 ミーアノーアと共に戦うことを、誇りに思っている。

 誰も、逃げ出す者はいなかった。


「ありがとうみんな。わたしは、あなた達を誇りに思います。これからも、わたしと共にいて下さい」

「はい! ミーアノーア様!」


 そして彼女達は司令室を出て、外に向かった。

 闇が迫っている。

 グランドキャッスルを守るため、戦士達は身構えた。


「フフフフフフ」


 闇の中から声が聞こえる。


「誰?」


 ミーアノーアが叫ぶ。

 黒い闇の中から何者かが出てきた。


「ヒッ」


 その姿に戦士達は一歩後ろに下がる。

 男は、灰色のタンクトップに黒い皮のズボン。胸板が厚い。爪は伸び、鋭く尖っている。背はスゥイより高い。両肩から上腕部にかけて赤い模様のタトゥーがある。炎と闇を表しているらしい。

 何より、恐怖を煽るのはその目だ。邪悪な輝きを放つその大きな目で、ギラギラと睨み付けている。

 普通の男性に闇の力が加わったことで、このように変貌したのだろう。


「わしの名はダークキング。闇を統べる神として生まれた。お前がミーアノーアか?」

「わたしの事を知っているの?」

「この地へ流れついた闇から聞いた。救世主と言われる女がいると。わしは、この地を気に入った。この地を行き場のない、我ら闇の者の大地としよう」

「わたしは聖なる龍より、救世主として闇を討つように言われました。そんなことはさせません」

「フフフ。ならば、邪魔な者を消すとしよう」


 パチン。


 ダークキングが指を弾く。

 魔兵士達がぞろぞろと現れた。


「まずは見せて貰うぞ。救世主とやらの実力を」


 ダークキングは高見の見物と決めこんだ。


 ザッ。


 スゥイが魔兵士の群れに飛び込む。

 さすがは騎士(ナイト)。優れた剣技の持ち主だ。

 その速さに魔兵士達は翻弄される。

 スゥイに続いて戦士達も突進。

 そしてミーアノーアも。


「聖麗剣!」


 光輝く剣を持ち、闇を倒していく。

 グランドキャッスルの中では、人々が不安そうにその戦いを見つめていた。

 みんな祈るように見ている。


「ミーアノーア様。頑張って下さい」

「スゥイ殿ーー!」

「みんな、ファイトォ!」


 声援が飛ぶ。

 彼らにはこれしかできない。

 その声を背にして、ミーアノーア達は戦う。

 守るべきものがある。

 魔兵士達は壊滅した。

 ミーアノーアとダークキングが睨み合う。


「フッ」


 余裕で、ダークキングが笑う。


「それでは行くか。救世主を倒しに」


 彼は気を溜める構えを見せた。



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