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mirikoworld外伝 〜初代救世主ミーアノーアの異世界英雄譚〜  作者: 北村美琴
第1章パラダイスワールド
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到着

 一体、どのくらい流されたのだろう。

 気が付いたらそこは、ゴツゴツした岩肌の(ひら)けた場所だった。

 首まで浸かっていた水は、もう無い。

 立ち上がり、自分の体を確かめる。

 怪我はしていないようだ。

 ただ服が濡れているが、着替えている余裕は無い。

 いつどこで、モンスターに会うか分からないから。

 服の水気を絞り、先へ進む。

 通路の向こうからバタバタとやってきたのは、ミイラ男の群れだ。


「ギャア」


 包帯を飛ばして攻撃してきた。

 ミーアノーアは華麗に避けながら反撃する。


「フレィムガン!」


 ミイラ男は焼け崩れ、消滅した。

 油断はできない。

 警戒しながら聖なる龍の元に走る。


「……っ」


 マグマが吹き出す池。橋はかかっていない。

 一体どうやって渡ろうか。

 見渡しても、橋の代わりになるものは見つからない。

 戻って別の道を探そうかと振り返ったら、新たなモンスターが迫って来ていた。

 棍棒を持った、大きな巨人だ。


 ビュッ。


 棍棒を避ける。

 二発目、三発目。地面に穴が開く。

 後ろにマグマの池。前に巨人。

 逃げ場はない。

 ミーアノーアは膝の屈伸を使い、高くジャンプした。


「アクアビーム!」


 巨人の目を狙う。

 巨人がひるんだのを見て、着地と同時に、後ろに回り込む。

 ミーアノーアの姿を探す巨人。

 倒せるかどうか。


「ウォーターフラッシュ!」


 両手のひらから大量の水しぶきを浴びせる。

 彼女の魔法力は美理子達よりかなり上。

 杖の力を借りなくても、自分の力で撃つことができる。

 巨人は前のめりに倒れかけた。が、踏ん張る。


「ふんっ」


 ミーアノーアの姿を見つけると、棍棒を高く振り上げ一気に下ろした。


 ビュン。


 空気を裂く音。


 ミーアノーアのいた場所に大きな穴が開いた。

 ぺしゃんこになっただろうか。確かめる。

 しかし彼女はいない。

 後ろにジャンプしてギリギリ避けていたのだが、右肩から血が滴っていた。

 巨人が近づく。

 一回、大きく息を吸うとミーアノーアは、全身に気を溜め始めた。


「はあああああ……!」


 巨人の腕から肩にかけ登り、大きくジャンプ。

 ちょうど見下ろす形だ。


「ライディンスピリッツ!」


 巨人の濡れた体に雷が駆け巡る。

 水の力で威力が増している。


「ギャアアアアア」


 白目をむいて巨人は腹這いで倒れた。

 棍棒を頭の上に上げていたため、マグマの池に架かる橋のようになっている。

 ミーアノーアはためらわず、その上を渡った。


「ごめんね」


 渡り終わって一言謝り、次の場所に急ぐ。

 巨人はマグマの池に落ちていった。


 谷をさまようこと二時間。奥へ奥へと進むごとに、周りの闇が濃くなっているのを感じる。

 モンスターの数も増えてきていた。

 さすがは魔空間の影響でできた谷。パラダイスワールドの大地とは違う。何があるか分からない。そんな恐怖すら覚える。


「ハア、ハア……」


 魔法力がだいぶ少なくなってきた。

 体へのダメージも大きい。

 薬草で傷を癒しながら、懸命に前に進む。

 水を一口飲む。

 歩き疲れたミーアノーア。

 ついに、その場で倒れ込んでしまった。


 キキッ。キキッ。


 吸血コウモリ、ドラキュロスの群れだ。

 この時から、ドラキュロスはいたのか。


「キキッ」


 一斉に、ミーアノーアめがけて降りてくる。

 体は動かない。


(やられる……)


 目を閉じ覚悟した、その時。

 スゥイから貰って、懐に入れていた聖光石のお守りが光り出した。


「スゥイ?」


 その光を浴びたドラキュロスの群れは、奥へと逃げていった。

 ミーアノーアは、そのお守りを手にする。

 心の中に、送り出してくれた人々の顔が浮かぶ。

 兵士達や女官達、戦士達。パリークの街の住民達。そして、心配しながらも、自分を信じてこのお守りを渡してくれたスゥイ。


「そうだわ。こんな所で逃げちゃ……」


 ここで倒れては、スゥイ達に申し訳が立たない。

 ミーアノーアはそう思った。

 再び、彼女は立ち上がり、聖なる龍がいるという龍の穴を目指す。


 遠くから、優しい光を感じた。

 洞窟が見える。


「あったわ! あれが聖なる龍がいるという龍の穴!」


 嬉しさで駆け出していた。

 傷の痛みなど忘れるように。

 もう少し。あと三百メートル。

 手を伸ばす。

 あと二百メートル。

 だが、あまり冷静さを失うとーー、


 ガバッ。


 落とし穴だ。

 いきなり足元から落下した。

 下に竹で作られた槍のトラップが、何本も彼女を狙っていた。


「危なっ」


 持っていた短剣を穴の縁に刺す。

 その短剣にぶら下がる形で、槍を回避した。


「危ない危ない。串刺しになる所だったわ」


 穴の上に上がる。

 今度は油断しない。

 慎重に確認しながら、龍の穴に入っていった。


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