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mirikoworld外伝 〜初代救世主ミーアノーアの異世界英雄譚〜  作者: 北村美琴
最終章いつか生まれる戦士達へ
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最後の戦い

 チルルの丘にある一本の木の下。

 動かなくなったドラミールの両手を胸の上に重ねてあげて、スゥイとミーアノーアは手を合わせた。

 この戦いで幾つもの命が失われた。

 それは黒魔族も同じ。

 遺されたのはミーアノーアとスゥイ、そしてダークキングだ。

 ダークキングの後ろの闇はどんどん広がっていく。

 パラダイスワールドを闇が包み込むまで、あまり時間はないだろう。

 スゥイは最後に一言だけドラミールに言った。


「ドラミール。いつか俺もそっちへ行く。そしたら、戦士達も一緒に、またみんなで語り合おう」


 そして彼はミーアノーアを見る。

 彼女は決意の表情を浮かべて頷いた。

 ドラミールを背に、二人はダークキングの下に歩いて行く。

 そこには静かな怒りがあった。

 散っていった者達の無念の気持ちを胸に、二人はダークキングに向き合う。

 相変わらず、ダークキングは余裕綽々だった。


「竜王子の弔いは済んだのか?」

「ええ。彼の為にも、わたし達はあなたを倒す。そして、この世界を守る!」

「ならば来るがいい!」


 スゥイがダークキングの胸を斬る。

 服が破れ、斜めに斬られた傷痕から血が出てきた。

 ダークネスパワーでスゥイを飛ばす。

 間髪入れずミーアノーアの魔法が炸裂する。


「ライディンスピリッツ!」


 頭上からの強烈な雷。


「ぐわっ!」


 たまらずダークキングは膝をついた。

 だが、まだ攻撃は続く。

 起き上がったスゥイが連撃を仕掛けた。

 怒りの攻撃力は半端ない。

 ダークキングの体のあちこちにアザや切り傷がついたところで、


「スゥイ、伏せて!」


 ミーアノーアが次の魔法の準備をしていた。

 スゥイは素早く地に伏せる。


「アイソトニック・ブリザード!」


 吹雪に巻き込まれ、ダークキングは吹き飛んだ。


「ハア、ハア……」


 ミーアノーアとスゥイは疲れていた。

 だが立ち止まることはできない。

 ダークキングが、あれ位でやられるとは思えないのだ。


 ザッ、ザッ。


 思ったとおり、闇の中から歩いて来る足音がする。

 二人は剣を構えて警戒した。


 汚れた服の土を落とし、ダークキングは二人の前に立った。ただ、傷痕の回復は間に合わなかったのか、そのままだ。

 ダークネスパワーを放つ。

 砂煙の中からミーアノーアとスゥイが剣を持って飛び出した。

 左右二手に分かれて攻撃する。

 ダークキングはまずスゥイを蹴りで牽制した後、ダークネスソードをミーアノーアに振り下ろした。

 ミーアノーアの方はその動きを読んでいたらしくあっさり避けて、聖麗剣で斬りかかる。


 ガバッ。


 聖麗剣の刃をつかまれた。

 ダークキングは空いた方の手で気を溜め放った。


「ミーアノーア様!」


 スゥイがミーアノーアの盾になる。


「ぐあっ」

「スゥイ!」


 間近で受けたためその場でスゥイは崩れる。

 ダークキングは容赦なく彼の腹に蹴りを入れた。

 吹き飛ぶスゥイ。

 ミーアノーアのボディにも、パンチをお見舞いして飛ばす。


「グハッ」


 その後で、聖麗剣を投げつけた。


(強い……)


 圧倒的強さのダークキング。

 ミーアノーアもスゥイも、地に倒れたまま動けないでいた。

 恐怖が押し寄せる。

 このまま負けてしまうかもしれないという不安が、心の中で回っている。

 ダークキングの高笑いが、二人の耳に響いた。


「フハハハハ……! 見よ。あの美しき黒き闇を。この世界が黒き闇で覆われし時、真の恐怖がやって来る。その時こそこのわしが、帝王として君臨する時……!!」


 ミーアノーアとスゥイは、戦う気力を失いつつあった。

 傷だらけの体はヒリヒリと痛み、ダークキングの強ささえ、その心で認めようとしている。

 その時、キリッとした救いの声が聞こえた。


「戦いなさい。ミーアノーア。わたしが選んだ救世主よ」

「その声は、聖なる龍!」


 うつむいていたミーアノーアが、びっくりして顔を上げる。


「生きていたのですね」

「ええ。気絶していたようで、気がつくのに時間がかかりましたが、もう大丈夫です。心配をかけましたね」

「でも、ドラミールが……」


 そこまで言ってミーアノーアは、また泣きそうになる。聖なる龍は、静かに告げた。


「存じています。それでもあの子は、この世界のため必死で命を燃やしました。あなた達と共に生きた世界を守るために。ミーアノーア、あの子は、あなたに願いを託したのです。あの子がやり残したこと、今こそ、叶えてあげて下さい」

「聖なる龍。けれど、どうすれば?」

「聖光石。ファイヤーストーン」

「ファイヤーストーン?」


 ハッとミーアノーアが何かに気付く。

 懐に手を入れ、綺麗な石を取り出した。

 スゥイが自分にくれたお守りの石。


「その石は……」


 スゥイが足に力を入れて隣に歩いて来る。

 ふらふらだったが、それでも、ミーアノーアの側にいたい。


「今も、持っていて下さったのですね」

「ええ。あなたがわたしにくれたお守りだもの」


 自然に笑顔になる。

 スゥイも嬉しくなった。


「その石は、邪悪なパワーを封じ込める力があります。その石に、あなた達の思いの全てを託すのです」

「この石に、わたし達の思いを……!」

「そうです。平和を思う気持ち。誰かを信じる心。そして悪を討ち滅ぼし愛を貫く強さ。思いの全てをその石に詰め込むのです。そうすれば、この大地を守ることはできます」

「させぬわ!」


 ダークキングがありったけの気を込めてダークネスパワーを炸裂させた。


「キャアアアアッ!」


 地を転がるミーアノーアとスゥイ。

 衝撃でファイヤーストーンを落としてしまう。


「これが聖光石。忌々しい石だ」


 ダークキングがファイヤーストーンを踏みつけて壊そうとしていた。


「まずい!」


 スゥイが砂を掴んで投げ、目潰しをする。


「むおっ」


 ミーアノーアはその隙に走ってファイヤーストーンを拾った。


「許さん。許さんぞ貴様ら!」


 砂が飛んできた時、瞬間的に目を閉じてほとんど影響はないが、ダークキングの怒りは頂点に達した。


「殺す、殺す、殺す」


 両手の爪を伸ばしミーアノーア達に迫る。

 まるでかまいたちのような爪だ。

 引っかかれたらひとたまりも無い。

 しかし怒りは隙を呼ぶ。

 軌道を読んだスゥイによって、爪は切り落とされた。


「スゥイ!」

「はい!」


 ミーアノーアとスゥイが手をつなぐ。

 二人の手の中には、ファイヤーストーンが握られていた。


「や、止めろ!」


 ダークキングが抵抗する。

 光が、輝き出した。


 

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