遺されし者
「たあああーっ!」
ドラミールが剣を構えてダークキングに突っ込んでいく。まるで、標的を自分だけに向けさせるように。その悲壮な姿に不安を覚えたミーアノーアとスゥイは、止めさせようと走った。
「ドラミール!」
「ふっ」
ダークキングは容赦はしない。狙いはやはり三人だ。体に気を溜め、ダークネスパワーを無数に生み出した。
「二人に手を出すな!」
ドラミールは剣を右手だけで持ち、左手からフレィム・ガンを放った。
ダークネスパワーはフレィム・ガンによって次々消されていく。
怒りで攻撃力は上がっていた。しかし、今までの戦闘のダメージで、魔法力はほとんど残っていない。
「ハア、ハア……」
疲れたドラミールは一旦足を止めた。
そこにミーアノーアとスゥイが追い付く。
「ドラミール……」
「スゥイ、ミーアノーア。ここは僕が引き付ける。君達は、体力が回復するまで隠れていて」
心配するスゥイに、ドラミールはダークキングを見つめたまま淡々と言った。
そんなドラミールの肩に手をかけ、無理やりこっちを向かせたスゥイは、怒りをぶつけた。
「ふざけるな! ドラミールお前、死ぬ気か?」
ドラミールも引かない。
「僕は母上を、聖なる龍を疑い、傷つけた。それに君達にも敵意を向けた。だから、ダークキングは、僕がやる」
「そんなこと、三人でやればいいだろう!」
「君達は大事な友人だ! 死なせたくないんだよ!」
ここ一年の付き合いで、ドラミールに頑固な所があるのは知っている。だからこそスゥイは言うのだ。
「俺達だって、お前を死なせたくないんだよ! 聖なる龍だって、きっと……!」
「……!!」
そこへダークキングが、ダークネスソードを携えて襲ってきた。
ドラミールはスゥイを振り払い一人で戦おうとするが、スゥイとミーアノーアが彼の手を引いて近くの木の陰に隠れた。
「何するんだ!」
怒りのドラミールをミーアノーアが諭す。
「スゥイの言った通りよ。ドラミール。わたし達、あなたに死んで欲しくないの。それに、ダークキングを倒すのは、救世主であるわたしの仕事。わたしこそ、あなた達をここまで巻き込んでしまって済まないと思っているわ」
「ミーアノーア、君が謝る必要なんか……」
「だから、ね。倒れていった戦士達の為にも、わたし達が無駄死にすることは避けたいの。ドラミール、協力して」
「俺からも頼む。ドラミール」
スゥイとミーアノーアが同時にドラミールを見つめる。
ドラミールは観念したようにふっと笑った。
「分かったよ二人とも。僕が悪かった」
そこへ、隠れ蓑にしていた木が崩れてくる。
三人は慌てて避けた。
ダークキングだ。
「話は終わったか?」
両手にダークネスソードを持っている。
ダッ。
凄いスピードでスゥイの下へ行く。
剣で防ぎきれずに、右腕を斬られた。
「痛っ!」
「スゥイ!」
ミーアノーアがスゥイに気をとられた瞬間に、ダークネスソードが彼女めがけて飛んできた。
間一髪、ドラミールがその剣を弾く。
その勢いでダークキングの下へ。
素早い剣さばきでダークキングの右腕を斬り落とした。
さらに隙を与えず、腹を刺そうとする。
がーー、
刺されたのはドラミールの方だった。
「惜しかったな、竜王子よ」
左のダークネスソードでドラミールを刺しながら、不敵に笑う。
何と、右腕が再生していく。
「なっ、何!?」
ドラミール達三人は驚愕する。
ダークキングは、ドラミールを高々と上に上げ、遠くへ放り投げた。
「ドラミールっ!」
ミーアノーアとスゥイが追いかける。
ドラミールは木に体をぶつけ、倒れていた。
「しっかりして!」
ミーアノーアがドラミールの傷を見る。
手で押さえているが、かなりの出血だ。
「ミーアノーア……、スゥイ……」
笑っているがかなり苦しそうだ。
虫の息というのがわかる。
「ドラミール、死ぬな! 頑張れ!」
スゥイはそれでも、ドラミールの手を握り、励ました。
「ミーアノーア……、スゥイ……。僕は、君達に会えて、楽しかったよ」
「何言ってるんだ!」
「グランドキャッスルのみんな、僕の……、家族みたいだった。母上が……、聖なる龍がいたけど、僕には、本当の家族はいなかったから。ありがとう。僕を仲間に……、家族にしてくれて……」
「おい、ドラミール!」
ドラミールの意識が弱くなっていく。
目も、見えなくなってきた。
「ただ、無念だな。本当は、もっと君達と一緒に……。未来を……、見たかった……」
「おい!」
「あり……がと……」
「!!」
ドラミールの腕の力が、完全に消えた。
体を揺さぶってみるが、もう動かない。
「嘘……」
ミーアノーアが崩れ落ちる。
スゥイも、今度ばかりは泣き叫んだ。
「ドラミールぅぅぅぅっ!」
大切な友は、死んだ。