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mirikoworld外伝 〜初代救世主ミーアノーアの異世界英雄譚〜  作者: 北村美琴
第3章終わりと始まり
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悲劇の連鎖

 黒魔族とダークキングによって、ガウン、ライとカイという三人の戦士が無念の死を遂げた。ミーアノーア達は結界によってグランドキャッスルの中に閉じ込められ、出ることはできない。


「ううっ……」


 ミーアノーアは床に両手をつき泣き崩れる。


「ミーアノーア様……」


 スゥイが彼女の体を優しく抱き、落ちつかせる。

 彼も悔しかった。

 自分が技を教え、育ててきた戦士達が、目の前で殺された。

 塔の中に残った戦士達も、仲間の死に涙を流し叫んだ。

 ドラミールは必死に結界を破る方法を考えている。

 早くしないと残った三人、ミルディ、ジュール、デンカまで殺されてしまう。

 ダークキングが周りにいた黒魔族に命令を下した。


「よいかお前達。もう塔は壊さなくていい。その代わり、わしを守りつつあいつらを倒せ!」


 ダークキングの命を受けた黒魔族達がミルディ達に迫る。


「ミルディ、ジュール、デンカ!」


 失意のどん底にいた彼らは、ドラミールの声に慌てて動き始める。


 四人の黒魔族の内、一人は魔法が得意なようだ。その一人だけ残って、あとはかかってきた。ミルディ達は剣で応戦する。

 ミルディの相手も剣を持っていた。だが、その剣は異様にでかい。相手を斬るというより、重さで押し潰すと言った方がいいか。

 ジュールの相手は鞭を使い、デンカの相手は槍の使い手だった。


「うっ」


 ジュールが鞭に当たり剣を飛ばされる。その剣を素早く取りに行こうとするものの、黒魔族の鞭で腕を固定されてしまう。そして動けなくなった所を魔法で狙われた。


「ぐわっ……!」


 アクアビームに胸を貫かれた。口から血を吐く。どうやら、魔法力が非常に高い敵のようだ。だが彼は諦めない。炎の魔法を、その魔法が得意な黒魔族に放った。

 炎が命中し、飛ばされた先にダークキングがいた。まさか黒魔族が飛んでくるとは思わなかったダークキングは、避けきれず爆発を受けてしまう。


「むうっ」


 咄嗟にガードしたものの、ダメージを少しは受けたようだ。その瞬間、グランドキャッスルの結界が弱まった。

 ドラミールが気付く。


「結界が弱まった? そうか、ダークキングにダメージを与えれば。しかし……」

「ならば、オイラが!」

「ミルディ!?」


 ジュールの頑張りを見て気合いが入ったミルディ。相手が力任せに剣を振りおろしたのをジャンプして避け、そのでかい剣の上にヒョイと乗る。


「!?」


 そのまま剣をつたい相手の懐に飛び込み、連打を浴びせる。

 黒魔族は吹き飛びながらバラバラになる。その爆発に隠れて、ミルディはダークキングに魔法を仕掛けた。


「エレクトロニック・サンダー!」


 さすがに今度はダークキングも読んでいた。颯爽と避ける。

 が、時間差で飛んできた黒魔族。最後の力で、ジュールが飛ばしたのだ。


「わっ!」


 ダークキングにダメージ。ジュールは倒れる。


「ジュール!」


 デンカが、自分と戦っていた黒魔族の槍をへし折り、ジュールに駆け寄る。

 ミルディも戻った。

 ジュールの頭を起こす。


「ミルディ、デンカ……、ボク、やったよ……」

「うん、うん。やったな」


 一番年下で、気弱だったけど、他の戦士達のことを兄ちゃんって慕って、可愛かった。

 ミルディとデンカは泣く。


「先に逝ったみんなに、会える……か……な……。ありがと。兄ちゃん達……!」


 最後は笑顔で逝った。

 ミルディとデンカ、塔の中からも号泣が響く。


「くっ……!」


 ドラミールも悔し涙を堪えていた。

 ダークキングの結界は、だいぶ弱まってはいるものの、あとひとおし足りない。


「ミーアノーア、スゥイ! 僕らの気で、結界を破る!」

「分かったわ!」


 泣いていたミーアノーアが立った。

 犠牲になった戦士達のために、自分達も頑張らないと。そして何より、ミルディとデンカを助けなければ。


「はあああああっ……!」


 ミーアノーア、スゥイ、ドラミールが気を溜めて結界にぶつける。

 ピシッという音がした。


「もう少し……!」

「ミーアノーア様! 我らも!」


 周りの戦士達も一緒になった。


「させぬわ!」


 ダークキングが結界を強めようとする。


「ダークキングゥゥゥゥ!」


 怒りのミルディとデンカがかかってきた。

 黒魔族が邪魔をする。


「邪魔だ!」


 二人の怒りの前に、呆気なく黒魔族はやられた。

 そのまま勢いに乗り、


 ザクッ。


 ダークキングを斬った。

 浅かったけど、ダメージは与えられた。


「貴様ら!」


 ダークネスパワーで跳ばされる。


「ううっ……」

「許さぬ。許さぬぞ」


 ダークキングの目は血走っていた。

 腕に気を溜める。

 黒い剣に変わった。


「串刺しにしてやろう」


 ミルディとデンカの下に近づいていく。

 その時ーー、


 パリーン!


 結界が割れた。

 ミーアノーア達が降りてくる。


「ミルディ! デンカっ!」


 ダークネスソードは彼らの眼前に迫っていた。


「アイソトニックブリザード!!」


 魔法でダークキングの注意を引き付ける。

 ミルディとデンカは、ドラミールとスゥイに助けられた。

 がーー、

 ダークキングの姿が消えた。


「何っ!?」


 凄いスピードで、ミーアノーアの前に現れる。


「!!」


 ガードができない。


「ミーアノーア、そのお腹の子どもごと死ね!」

「だめだっ!」


 ミーアノーアを庇い、ミルディが背中から切られた。

 剣は腹を貫いている。


「ミルディ!」

「だめだデンカ!」


 スゥイの静止を聞かず、デンカが突っ込む。

 ダークキングはミルディを貫いた剣を勢いよく抜き、デンカを斬った。


「ミルディ! デンカ!」


 ミーアノーアが叫ぶ。

 ダークキングはハハハと大笑いした。


「言ったはずだぞ。そいつらの命だけでも頂くと。まあ、塔が破壊できなかったのは残念だったがな」


 ミーアノーアがキッと睨む。

 スゥイ、ドラミールも剣を構えた。


「まあ、そういきり立つな。わしはここで退く。だが、いずれ決着はつけるぞ」


 言うだけ言ってダークキングは消えた。


「……ミーアノーア、様……」

「ミルディ、デンカ!」


 倒れた二人を抱き寄せる。


「いけません。お洋服が、汚れ、ます……」

「わたしの心配より、あなた達が!」


 女官が回復魔法をかけようとするのを、二人は断った。


「もう、良いのです。ミーアノーア様……、スゥイ殿。今まで、ありがとう、ございました」

「何を言うの。そんなことっ……!」

「我らは、今まで幸せでした。お二人に、出会えて……。良い、ご両親に、なって下さい……」

「だめ、だめよ……」

「ドラミール殿。お二人を……、守って差し上げて、下さい」

「ミルディ、デンカ!」

「みんなが、待って……」


 静かに、二人は目を閉じた。

 守って、あげれなかった。

 大切な、戦士達を。

 女官達の、すすり泣く声が聞こえる。

 悲しい風が、包んだ。



 そして時は戻りーー。


「ガウン。ライ。カイ。ジュール。ミルディ。デンカ……。わたし達の、子どもよ」


 両手にサイーダを抱いたミーアノーアは、スゥイやドラミール、残った戦士達と共に、墓参りに来ていた。

 墓はダークキング達黒魔族に荒らされないように、パリークから離れた場所にある。見晴らしのいい場所だ。


「わたし、あなた達のこと、忘れないから」


 ミーアノーアは誓った。

 彼らのためにも、黒魔族を倒す。そして、平和な世界を作るのだと。

 スゥイ達と顔を見合せ、空を見上げる。


(みんな、見守っていて……)


 ガウン達はきっと、空の上で笑っている。

 そんな気がした。







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