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mirikoworld外伝 〜初代救世主ミーアノーアの異世界英雄譚〜  作者: 北村美琴
第2章戦い、始まる
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地下からの脱出

 グランドキャッスル内部。

 残されたミーアノーア達は、スゥイ達がもしかしたら怪我をして帰ってくるかもしれないと、できるだけの準備をしていた。回復魔法を使える女官はいるが、街の人達の中からも医者が名乗りを挙げてくれた。何しろ、火山の地下に行ったのだから。ミーアノーアは、街の人達の協力に感謝した。

 本当は、何事もなく、無事で帰って来て欲しい。

 窓から火山の方角を見つめる。


(スゥイ、ドラミール……)


 今の彼女は、祈るしかなかった。



 ドカッ、ガラガラッ。


 火山の地下空洞は、どんどん崩壊していた。

 ドラミールは、気力でバリアーを展開していたが、それももう持たない。

 壁が崩れた。

 バリアーにヒビが入る。


「くそっ」


 ここまでか。

 諦めて、目を閉じようとした時ーー、


「諦めてはいけません」

「!!」


 優しい声が聞こえる。

 姿は見えないが、温かな気配がドラミール達を包んだ。


「その声は、母上!」

「ドラミール、久しぶりね」


 以前、牙龍の谷の龍の穴で、ミーアノーアと出会った聖なる龍だ。


「ドラミール。諦めてはいけません。わたしが力を貸しましょう。あなたや、その友人達を、死なす訳にはいきません」

「母上、感謝します」

「わたしが、火山の外に出します。そこからはあなた達が……」

「はい」


 聖なる龍が作った光の玉に、ドラミール達は入った。


 ヒュン。


 あっという間に、火山の外に出た。

 洞窟入り口の所で、フワッと降ろされる。

 その瞬間、


 ガラガラッ。


 音をたてて地下空洞は崩れた。

 入り口もすっかり土砂で埋まる。

 あと一歩出るのが遅かったら、ドラミール達の命はなかっただろう。


「ふう」


 安心して、力が抜ける。


「ドラミール。わたしができるのはここまでです。後はあなた達が歩きなさい」

「母上……」

「あなたやミーアノーアには、まだやるべき事があるはず。力強く生きなさい。それじゃあね」

「母上? はい……」


 ドラミールは何か感じるものがあったが、それ以上言わずに口を閉じた。

 優しい気配が消えていく。

 戦士の一人が言った。


「ドラミール殿。わたし達は、助かったのですね」


 ドラミールは笑顔を見せる。


「そうだね。少し休んだらグランドキャッスルに帰ろう。みんなが待ってる。それに、気絶しているスゥイの体調が心配だ」


 スゥイは、ドラミール達より長くガスを吸い続けた。それに、背中の傷は多分、ダークキングにやられたもの。ドラミール達もまだ、地下空洞での戦闘のダメージが残っている。すぐに歩ける状態じゃない。


 疲れた体を少しでも休めようと、15分ほど横になった。スゥイはまだ目を覚まさない。ダークキングが闇に引きずり込もうと念を送った時、無理をしたに違いない。あの時、スゥイは相当弱っていた。

 ドラミールは、スゥイを背中に抱える。太陽が、オレンジ色の光を放っていた。日が沈む前に、パリークへ戻らなきゃ。戦士達と共に、来た道を走って戻った。



 ミーアノーアは、何だか落ち着かない。一緒に外でドラミール達を待つ女官達も、気持ちは同じだった。もう暗くなる。何かあったのでは、と思ったその時、声が聞こえた。


「おーーい」

「ドラミール!」


 背中にスゥイを抱えたドラミールが手を振っている。戦士達の無事な姿も見える。急いで駆けつけた。


「ドラミール、みんな!」


 ドラミールはスゥイをゆっくりと降ろすと、ミーアノーアに向かって言った。


「ミーアノーア。スゥイの状態が危険だ。火山のガスを大量に吸っている。すぐに医者に見せて!」

「わ、分かったわ!」


 パリークに残っていた戦士達が、スゥイを医務室へと運んで行く。回復魔法ができる女官も一緒だ。


「ドラミール、あなた達も。話はそれからよ」


 ミーアノーアに促され、ドラミール達も医務室へと向かう。



 ベッドに、スゥイが横になっていた。

 医者が治療をしている。

 女官が、ミーアノーア達の所に来て、ドラミール達の怪我を治し始める。


「スゥイは?」


 ドラミールが聞く。


「出来る限り、回復魔法をかけました。後は、医者の方が……」

「そうか」


 ドラミール達の治療は終わった。

 女官は一礼して、部屋を後にする。

 ドラミールはミーアノーアに、地下空洞での事を話して聞かせた。


「そんな、スゥイが、闇に……」

「うん。でも、彼は闇に落ちなかったよ。彼の心は強い。改めて、尊敬するよ」

「そうね」


 眠ったままのスゥイの顔を見つめる。


(スゥイ……)


 そこに医者がやって来た。


「ミーアノーア様。スゥイ殿の事は心配要りません。薬を飲ませましたので、ガスの影響はほとんど無くなったと思います。女官の方の魔法の効果もあると思います。今は眠っていますが、明日には目を覚ますでしょう」

「そう、良かった……!」


 ミーアノーアはホッと胸を撫で下ろした。


「それでは、わたしはこれで」

「ありがとう」


 ミーアノーアに会釈をし、医者は出て行った。


「ドラミール、あなた達も少し眠ったら? あなた達もガスを吸ったのでしょう」

「え? でも……」

「大丈夫。ここは、わたしが見てる」

「分かった」


 ミーアノーアの言葉に甘えて、ドラミール達はまぶたを閉じた。

 寝息が、響いてくる。

 ミーアノーアは優しく側にいて、彼らを見守った。



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