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mirikoworld外伝 〜初代救世主ミーアノーアの異世界英雄譚〜  作者: 北村美琴
第2章戦い、始まる
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生まれる、絆

 黒魔族となった人達がドラミールを囲み、攻撃してくる。が、ドラミールは反撃することができない。元々は、パラダイスワールドにいた善良な人達だ。攻撃することなどできない。逃げるので精一杯だった。


「どうした竜王子よ。攻撃しないのか?」


 ダークキングが笑いながら言う。


「パラダイスワールドの人達だったんだろう。攻撃することなどできない」

「無駄だ。そいつらは誰かを恨み、妬み、もう世界のことなどどうでもいいという奴らだ。闇に落ちるのも早かった。魂が闇に食われた以上、もう二度と元には戻らない」

「そんな……!」

「そんなことよりもだ、こんなところでモタモタしていてもいいのか? 早くしないと、スゥイが死んでしまうのではないのか?」

「くっ……!」


 ダークキングは完全に面白がっていた。

 それがドラミールや戦士達の怒りを呼び覚ました。


「分かった。ダークキングよ。どうせ殺らなきゃいけないのなら、その罪、僕達が被ろう。行くぞ!」


 ドラミールが先頭で走る。

 戦士達も負けじと続く。


「てやーっ!」

「とおーっ!」


 黒魔族となった人達は、次々と斬り倒された。


「ドラミール殿、ここで固まっているより、バラバラになってスゥイ殿を探した方がいいと思います!」


 戦士の一人が叫んだ。


「そうだね。じゃあみんな、気をつけて」

「はい!」


 ドラミールが同意し、戦士達はあちこちに散らばった。


「ムッ」


 ダークキングと黒魔族が追いかけようとする。

 ドラミールが立ちふさがる。


「ダークキング、一旦引かせてもらう。ロック!」


 ドラミールが唱えると、巨大な岩が敵の頭上に降り注いだ。

 一時的な時間稼ぎかもしれないが、それでも効果はあるはずだ。


「スゥイ!」


 戦士達の後を追いかけ、ドラミールが消える。


 ガラガラ。


 岩を吹き飛ばし、ダークキングが這い出る。


「フッ。やるな竜王子。だが、わしは倒れん」


 ゆっくりと歩き出した。



「おい、いたか?」

「いない。一体どこにいらっしゃるんだ」

「スゥイ殿、どこですか?」


 先に行った戦士達が、声を張り上げスゥイを探す。

 ガスが、濃くなってきたようだ。

 早くしないと、スゥイもろとも、自分たちも死ぬ。


「みんな!」

「ドラミール殿!」


 ドラミールが追い付いた。


「すみません。まだ、見つけられません」

「いいさ。僕も一緒に探す。ムッ、あれは?」


 不自然な岩が、前方に見える。

 扉のように、隙間が開いていた。


「まさか……?」


 岩を横に転がす。

 入り口が開いた。


「スゥイ!」


 壁に手足を拘束されたまま、スゥイはぐったりしていた。


「スゥイ殿!」


 剣で鎖を一刀両断して、スゥイを壁から下ろす。


「しっかりするんだ!」


 だいぶガスを吸ってしまったようだ。顔色が良くない。


「ドラミール、殿……」

「スゥイ、意識はあるのか?」

「ええ……、俺は……」

「喋らなくていい。とにかく、ここから脱出しよう」


 ドラミールがスゥイを背負おうとすると、戦士達が止めた。


「ドラミール殿、ここは我らが」

「分かった」


 ドラミールは彼らの意思を尊重し、任せた。

 一番力のある戦士がスゥイを背負った。


「お前達……」

「スゥイ殿、喋らないで下さい。あなたが捕まった時、わたし達は何も出来ませんでした。せめて、その責任は取らせて下さい」

「しかし……」

「ご自身を、責めないで下さい。あなたは何も悪くない」

「……ありがとう」


 スゥイは戦士達の優しさに感謝した。と同時に、たくましく成長したことに嬉しさを感じた。


「じゃあ、早く行こう!」


 ドラミールが促す。

 戦士達が頷き、一歩足を踏み出した。

 しかし、


「待て」


 ダークキングと黒魔族が邪魔をする。


「ダークキング!」

「竜王子。お前達をここから出す訳には行かぬ! 死ぬがいい!」


 ダークネスパワーが炸裂した。


「うわああああっ」


 ドラミール達は後ろに吹き飛ぶ。


「さあスゥイよ。竜王子を倒すのだ」


 ダークキングが念を送ると、スゥイの体が闇に包まれる。

 スゥイの心の迷いを利用して、黒魔族の仲間にしようとしているのだ。


「うわああああっ!」


 スゥイの心が戦っている。

 苦しみながらも、必死にダークキングの念に抵抗していた。


「スゥイ!」

「スゥイ殿!」


 仲間達の声が聞こえる。

 ダークキングは、念を緩めない。


「スゥイよ。楽になってもいいのだ。その心に正直になり、闇に身を任せ、竜王子を殺せ」


 スゥイが剣を手にする。

 目がぼうっとしていた。


「ドラミール殿、逃げて下さい!」


 スゥイが操られたと思った戦士達が叫ぶ。

 が、ドラミールは動かなかった。

 スゥイが剣を振り上げる。


「スゥイ、確かに僕はミーアノーアのことが好きだよ。一緒にいて、楽しいし、守りたいと思う。けど、君のことも、同じくらい大切なんだ!」

「うっ」


 スゥイは動けなくなる。


「スゥイ。僕は今日、ミーアノーアをここに連れて来なかった。ダークキングが、君の心を利用するなら、狙われるのは僕か彼女だと思ったからだ。君が、僕に嫉妬しているのは知っている。だからこの場で僕を斬っても、僕は構わない。その覚悟はできている。だけど、ミーアノーアが本当に好きなのは、多分君だよ。スゥイ」

「なっ」

「それでも、僕を斬りたいなら、いいよ斬っても。僕は君の、友人だから」


 ドラミールは目を閉じる。

 スゥイは剣を狙いに向けて刺した。


「うおおおおおっ!」

「スゥイ殿! ドラミール殿!」

「フッ」


 戦士達やダークキングも注目する。

 剣は、ドラミールの後ろの壁に刺さっていた。

 スゥイは、ドラミールを斬らなかった。

 ドラミールが目を開く。


「スゥイ……」

「ドラミール殿。いや、ドラミール。俺と友人になりたいというその言葉。俺の心に響いた。ここまで助けに来てくれたことも礼を言う。ありがとう」

「ああ」


 二人は見つめ合い、がっちりと握手を交わす。

 この時、ようやく二人の間に、固い絆が生まれた。


「さてと」


 壁に刺さっていた剣を抜き、ダークキングの方を向く。

 ダークキングは、悔しげな表情を浮かべたが、すぐに余裕の笑みに変わった。


「なるほど、友情の力とやらがこんなにも強いものだとはな。面白いものを見せてもらった。だが、お前達は終わりだ。もうすぐ、この地下空洞は崩れ落ちる」

「何だって!?」

「闇を十分に含ませ、天井をもろくしておいた。それに、ガスを吸ったその体、思うように動けまい。わし達は消える。さらばだ!」

「ま、待て!」


 ダークキングと黒魔族は去った。


 バタン。


 スゥイが倒れる。

 ダークキングが言ったように、ドラミール達の体も動かなかった。


(どうすればいいんだ……)


 天井が崩れ、壁が壊れていく音が聞こえる。

 徐々に近くなっているようだ。


(ここまでか)


 目の前に、巨大な岩が落ちてきた。


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