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mirikoworld外伝 〜初代救世主ミーアノーアの異世界英雄譚〜  作者: 北村美琴
第2章戦い、始まる
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救出作戦

「う、うん……」


 気絶していたスゥイは目を覚ます。

 辺りは暗い静寂に包まれていた。

 体が動かない。

 背中の傷も疼く。

 腰の剣は、奪われていないみたいだ。

 だが逃げ出そうにも、壁に手足を鎖で拘束されている。

 それに、ここは暑い。どこからか、熱気のこもった空気が流れてきている。


「まさか……?」


 スゥイには思い当たる場所があった。

 パリークの東に、小さな火山がある。

 その地下には洞窟があり、奥までいけるが、ところどころにマグマが吹き出している穴がある。

 まさか、自分はそこに連れて来られたのか。


 ガラガラッ。


 正面の、大きな岩が横にずれた。

 どうやら、入り口をふさいでいたらしい。

 ダークキングが入ってきた。

 つかつかと、スゥイの前にやってくる。


「お目覚めのようだな」


  スゥイは、ダークキングを睨んだ。


「俺をどうするつもりだ?」


 ダークキングは余裕の笑み。


「フフ。まあそう焦るな。お前の中の闇を見たいのだ」

「俺の中の闇?」

「竜王子に嫉妬しているだろう」

「!!」

「そうそうその顔。その小さな嫉妬がやがて大きな闇になる。どうだ、竜王子を倒し、ミーアノーアを手に入れたいと思わぬか?」

「そんなこと……!」


 ドラミールを倒したいなんて思ってない。ダークキングはきっと、そんな人の痛みを利用するつもりなんだ。


「まあいい。この入り口の隙間を開けておく。ガスが、入ってくるだろうからな」

「ガスだと?」

「ああ、火山性のガスだ。地下にこんな場所があろうとは思いもしなかった。お前を人質にして、ミーアノーア達をおびきだす」

「何だと!?」

「気が変わったら言うがいい。じゃあな」


 入り口の岩が、僅かな隙間を開けて閉められた。

 ガスが入ってくる。

 一気に殺してしまわないように、少しずつ調整しているらしい。


「ゲホゲホ」


 息苦しくなってきた。


(ミーアノーア様……。すみません)


 スゥイは、何もできない自分を責めた。



 何で、こんなに涙が流れるんだろう。

 心に穴が空いたような喪失感に、ミーアノーアは襲われていた。

 ドラミールはそんな彼女を無理やり立たせる。


「しっかりしろミーアノーア! 泣くのはスゥイを助けてからだ!」


 いつもと違うドラミールの声でミーアノーアは我に返る。


「ドラミール?」

「よし」


 厳しい表情から一転、いつもの優しい笑顔に戻る。


「それじゃ、まずはスゥイの居場所を突き止めないと。ダークキングは、何か言っていた?」


 スゥイが連れ去られる現場に居合わせた女官に、ドラミールが聞く。


「は、はい……。スゥイ殿は、パリークの東の火山に連れて行くと。そこの地下の洞窟で待つと言っていました」


 ドラミールの険しい表情を見た女官は、少し怯えていた。


「そう。でも何故ダークキングは、スゥイをさらったんだ?」

「それが、スゥイ殿は、心に迷いがあると言っていました」

「迷いって、それで……?」


 それは自分とミーアノーアのことだろうとドラミールは察した。その思いをダークキングが利用するのなら、狙われるのは自分かミーアノーアだ。


「スゥイに迷い? でも今は、そんなことを考えている暇はないわ。早く助けに行きましょう!」

「いや、ミーアノーア。君はここに残って」


 急いで救出しに行こうとしたミーアノーアを制して、ドラミールは言った。


「ドラミール?」

「ダークキングは、多分救世主である君を真っ先に狙ってくる。そのためにスゥイを人質に取ったんだ。だから、罠だと分かって行くことはないよ」

「でも、わたしはスゥイが心配なの」

「だからだよ。だから君はここに残って、スゥイの帰る場所を守ってやらなきゃ」

「スゥイが、帰る場所……」

「うん。君はスゥイにとって大切な守るべき人。その君が傷つくことは、スゥイも望んでいないんじゃないかな。だから、救出は僕らに任せて、君はここにいて。いいね」

「分かったわ。ドラミール」


 ミーアノーアはドラミールを信じ、黙って送り出した。ドラミールは、戦士達六〜七人を連れ、火山に向けて走って行く。

 早く行かないと、スゥイの身が危ない。


(スゥイ、無事でいてくれ……)


 走りながら、必死にスゥイの無事を祈るドラミールだった。



「ここが、火山……」


 目的の火山に着いた。

 一気に走ってきたため、息が切れている。

 しかし、休んでいる暇もなく、洞窟の入り口を探す。

 戦士の一人が、入り口を見つけた。


「ドラミール殿、こちらです!」


 中に突入する。

 マグマの熱気で、肌が焼けるように熱い。

 それと同時に、煙みたいなものが漂っている。


「まさか、ガスが出ているのか?」


 急いで口を塞ぐ。


「その通りだ」

「ダークキング!」


 奥からダークキングが現れた。


「この地下通路のどこかに、スゥイはいる。ただ、早くしないと、ガスで死んでしまうかもな」

「何だって!?」

「そう簡単には行かせん。竜王子。我ら黒魔族が、相手をしてやろう」


 ダークキングが指を鳴らすと、魔兵士が飛び出てきた。それと、見慣れない人達も。


「この者達は、パラダイスワールドの人間だった者達だ。闇を心に抱えていたため、我らの仲間にしてやった。そして我らは、黒魔族と名乗ることにした」

「黒魔族……」

「そうだ。そして、お前に嫉妬しているスゥイも、闇に引きずり込んでやろう!」

「そんなこと、させるか!!」

「ならば、わし達を倒し、スゥイを助け出してみせろ! 行け、者ども!」


 ダークキングの命令で、黒魔族がドラミール達に迫る。


(スゥイ、待っていろ)


 戦いが、始まった。



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