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2-5「騎士団のオツトメ」

第二章4話〜騎士団のオツトメ〜


ここ最近、アルフィンの都では不穏な噂がまことしやかに囁かれていた。


「四天子が復活する」


それは均衡の終結。

100年前に終わった大戦の再来を意味するであろう悲劇の序章。


アルフィンの北に位置するギアルという大国。

100年前の大戦は、この国から始まった・・・

というより、この世界で起こった歴代の戦争はほとんどこのギアルから始まっている。


四天子・・・またの名を死天子、破滅の使い。

3000年前に遡るギアル建国から脈々と受け継がれる破壊の遺伝子達。

山脈に囲まれ一年のほとんどが冬というギアルの情報はほとんど外部に漏れない。

そのため四天子についても詳しいことはまだわからず、ただただ恐ろしい存在として他国に伝わるのみである。


彼らの復活とは、それぞれ4血脈の頭目達が十分な力量に達し、再び四天子が集ったことを意味する。

噂はただの噂だと流してしまえば、たしかにそれだけのことだ。

しかし、火の無いところに煙は立たないというもの。

再び起こりうる大戦への不安は、アルフィンの都に少しずつ翳りを与えていた。



*******


リンクが朝目覚めると、いつも以上に外が騒がしかった。

寝坊したかな?ちょっと焦りつつ、身だしなみを整えてドアを開ける。

すると、中庭に小さな人だかりができていた。



『以下のチームに所属する者は一週間後の騎士団合宿に参加すること。

 チームフライ

 チームゼクス

 チームラシュオン

 尚、この合宿への参加は強制である。

 詳細については本日正午に団長室にて説明をするので各員出席すること。

              団長カムイ=リオリスタ=ブラッドフォード』



なぜだろう。

この張り紙前に集まった野郎共は、リンクを見ると同情するかのような目を向けてくる。

慰めるように肩をぽんぽん叩く者までいる始末。

状況を飲み込めずゼクス達を探すが、ネボスケ達はまだ夢の中にいるようだ。


「リンク。ちょっとこっちにこい。」


ん?と人垣越しに振り向けば、カムイ団長。

おはようございますと挨拶をすると、伸びてきた腕にくしゃくしゃっと頭を撫でられた。

毎度ながら、この小動物扱いには困ったものである。


「お前、まだ状況が把握できてないみたいだなぁ。

 ちょっと説明会前に話しておくか」


人の波に潰されそうになっていると、急に腕を掴まれて救出される。

その勢いのままカムイの胸の中にすっぽり収まってしまった。


「「・・・っあ」」


条件反射なのだろうか、ぎゅっと抱き締められてしまう。

カムイ本人も自分の行動が予想外だったらしく、硬直気味だ。


(ええええ???)


力強い両腕と厚い胸板で抱擁されて、不本意ながらもドキドキ・・・。

魔法で外見を男のリンクにしたって、中身は女の子のリンなのだ。

抱きしめられて顔が見えないことを幸いに思いっきり赤面する。


「・・・あ、あのぅ・・?」


しばしの沈黙を経て思いきってカムイに声をかけると、びくっと反応があると同時に拘束する力が急に弱まった。


「すっすまない!!!」


一応はお偉い団長のくせに土下座しそうな勢いである。

お前がちょうどいいサイズで・・・とか、昨日はあんまり寝てなくて頭が・・・とか消え入りそうな声で言い訳をまくしたてている。


(・・・なんか可愛い)


大男が真っ赤になって謝るなんてそう見れるもんではない。

思わずふふっと笑ってしまう。


「・・・お前。人が必死に謝ってんのに・・・」


不本意そうに背ける顔はまだほんのり赤い。

なにはともあれ・・・この団長のことをリンクは嫌いになれそうにもなかった。


*****


「と、まぁそんな感じだから頑張ってくれ。

 リンクは新人なのに申し訳ないが、ゼクス達がいれば大丈夫だと思う。

 なにかあったらすぐ俺に言って欲しい。」

「・・・はぁ。」


人だかりから離れベンチに腰を下ろし、騎士団合宿なるものについての説明を受けた。

騎士団合宿とは現在10に分けられた騎士団合同で行う年に一回の合宿で、恒例行事となっているらしい。

まぁ、ここまでの大枠を聞けば、いたって普通の行事。

が、補足事項を聞いてようやく先ほどの団員達の様子に納得がいった。


第一騎士団から第十騎士団までを統括する王国騎士団。

そこの団長、つまりは総団長ともいうべき人物が超がつくドS・・・。

そんな人物が主催する合宿もまた当たり前のようにドS・・・!

正直、毎年のように負傷者、逃亡者が発生する合宿なんて聞いたことがない。


「リンクーーーーーっ」


自分の不運を呪って空を見上げていると、ゼクスと思われる声の主が空を滑空する。

人間って空を飛ぶもんだっけ?

ぼんやりしている間にもゼクスの影はどんどん大きくなり、ぐしゃっとカムイの上に着地した。


「さっさとどけっゼクス!」

「・・・っいってーーー」


巻き添えを食らったカムイの上でゼクスが腰をさすっている。

この男、静かに入場することができないのだろうか。


「団長ぉ〜さっきはリンクのこと抱きしめてたって聞いたぜ〜

 なーんで俺には開口一番にどけ!なんだよー?」


突然のゼクスの反撃は見事な会心の一撃となったようだ。

にやにやするゼクスとは対照的にカムイは真っ赤になっている。


「ほ〜ぉ。なーんも言えんっつーことは、図星か団長?

 うちの可愛いチーム員に手ぇ出すんなら、先にリーダーに言ってくれんと、なぁ?」


カムイに跨ったままで高笑いをするゼクス。

イケメン同士とは言え、残念ながらゲテモノ級の画である。


「ゼクス。いい加減にしてよね。」

「・・・そうだ」


呆れたような声がふたつ。予想に違わずシュラフとカイの登場である。


「おお。やっと来たか。遅いぞお前ら。」

「ゼクスが急に走り出して飛ぶからでしょ。馬鹿なんだから。」

「・・・間違いない。」


ほっとけばいつもの不毛なやり取りに発展しそうである。


「ねぇ、ゼクス。僕に用があったんじゃないの?」


とりあえずやんわりと止めにはいってみる。


「おお。そうだそうだ!掲示見ただろ!合宿だよ!」


そういえばさっきゼクスは去年も参加したってカムイが言ってたっけ。

各団から団長チームを含めた4チームずつが参加するのだが、選出されるチームは合宿に耐え切れると思われるチーム、つまり有望株を揃えるんだとか。

ゼクスのことだおおかた「めんどい」だの「だるい」だの言いに来たんだろうと次の言葉を待つ。


「めちゃくちゃ楽しみだなッ!!!みんなで旅行だ!」


・・・。

その場の空気が固まった。

馬鹿もここまでくると天晴れなものだ。


「頼もしいな、ゼクス。だが、いい加減俺の上からどかないか?」

「おう。団長。まだそこにいたのか。」


ゼクス以外全員のため息が重なる。

・・・リンクの合宿への不安が一気に加速したことは言うまでもないことだった。



久々の更新です。

プライベートの方が忙しくなってきたのでちょっと更新が遅れるかもしれませんが、ちまちま頑張っていきます。

これからちょっとずつリンちゃんの周りで事件勃発していきますので、応援よろしくです。

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