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9 錘螺(すいら)の信用

 目の前にうずたかく積まれている食材は、蛍光色の物やビクビク動いている物まであった。

 しかし、考えてもみて欲しい


「あの、朝ご飯食べましたよね? また、食べるんですか? それなら朝ご飯もこっちの食材を使った物だったら一石二鳥だったんじゃ? 」


 そう、さっき起きた俺は目の前に驚愕を体現したように絶句する雷呀らいがさんが用意してくれた、これぞ日本食! な朝ご飯を食べたはかりである。

 しかも、ご飯を三杯もおかわりしてしまったのだ。

 いくら食べ盛りでも少しきついのだが………


「こほん、大丈夫です。私の神の力にかかれば! これぐらいの失態など、いにもかえさない! ハハハハハハハ」


 間違った方に立ち直った雷呀さんは、体に何やらピンク色の稲妻を纏って動き出した。


 正直に言おう、完璧に引きました。

 美女なんだ、それが怖いと感じるのは初めてだ………


「あっ、あの~ 何をしようとしているのですか? 」


 恐る恐る話しかけると、目が紅く光った雷呀さんは無言で食材に向かっていった。


 っと、雷呀さんが目に追えないスピードで何かをし始めた。

 そして、それは三分で終わりました。

 これぞまさに、三分クッキングだ~ わ~


「ふう、終わりました。これで問題はないですよね? 」


 普通に戻った雷呀さんだが、その言い方で問題あるっていう人がいたらその人が世界統一してもらっていいです………


 雷呀さんのその手にはよく見るサプリメントが乗っていた。

 後ろの食材は、本当に在ったっけ? と疑問になるほど痕跡がなかったです。

 と、いう事はこのサプリメントに全てが凝縮されているという事デスヨネ………


 そう思って見てみると、あら不思議………

 なんということでしょう、白く見えたサプリメントがどす黒い紫に変わってしまったではありませんか。

 もはや、毒にしか見えない……… いや、これほど毒だと体現している薬があったでしょうか?


「どうしました? 眞鵺しんやさん? おーい、戻ってきて下さい! 」


「はっ、えーと、これを飲むんですか? 嘘でしょう? 」


 スッゴいにこやかにうなずかれてしまいました………

 逃げたい………


「何しているのですか? 錘……… 雷呀様? やっと見つけたと思っていたら、こんな事になってたなんて……… はぁ」


 いきなり、雷呀さんとの間に忘れかけていたエミリーが飛び込んできた。


 その形相は鬼のようだった


 俺、女性不信に成ってしまいそうです………


 ▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽


 お久しぶりです。エミリーです。

 これまで、東西南北を巡って錘螺すいら様に実質さらわれた風間さんを探してきました。

 どうやら結界でも張っているんじゃないかと、思うんですけどね?

 こうも、簡単に私でも見つからない結界を張られると自信が無くなりますね………


 まぁ、神なので仕方がないですね~

 まあ、錘螺様は基本的には常識神ですから余り心配はないと思うんですけどね………

 って、そういえば錘螺様って風間さんが関わったら急に非常識に成るんでした


 これは、急いで行かないとまずいかもしれません。

 暴走したら大変なのは風間さんです!


 『ドッカーン』


 空気が震えるような振動はまるで世界が終わる終末のような気配を、『稀島まれじま』の東側から感じ取った。

 こんな気配を出せる方は錘螺様しかいないでしょう


 ここは、正反対の西側です


 あー、間に合って下さい!

 無事でいて下さいよ風間さん!


 彼女は空色の羽を羽ばたかせて東の空に向かっていった。


 そして、場所が分かり結界が緩まっていたので軽く入り込んだ。

 しかし、現在目に入っている光景は信じられない物だった。

 やっと見つけた錘螺様は魔力を凝縮した、禍々しいモノを風間さんの口に放り込もうとしていた。


 まず、魔力をあんな濃度で体に入れたら拒絶反応が起こり、最悪は死に至ってしまう。

 それが分からない錘螺様では無いはずなのに………


「何しているのですか? 錘……… 雷呀様? やっと見つけたと思っていたら、こんな事になってたなんて……… はぁ」


 はぁ、危ない。思わず本名を叫ぶ所だった………


 とりあえず、風間さんと引き離さなければって………


 風間さん、どうして後ずさるんですか?

 もう、安心ですよ?


「女子が怖い。俺には刺激が強すぎます! 取りあえず一人にして下さい」


 そう言う風間さんは顔面蒼白で、今にも倒れそうにみえた


「錘螺様、何かしましたね? 」


 錘螺様を見やると目が泳ぎまくっている………

 確信した。コイツだ!


「べべべ、別に何もやってないよ~? 地形を改変したり、ちょっと本気を出したりしただけだよ~ 」


「何やってるんですか! 『ええ、大事な息子を記憶が不安定な時こそ母親がそばにいるべきなのです!! 』なんて偉そうに言ってたくせに、引きこもりにしてどうするんですか? 」


 泣きそうな顔で震える錘螺様は頼りない事この上なかった。


「だって、やっと自分の息子に会えたんですよ。はしゃぐなっていう方が理不尽じゃないですか? 」


 いや、知らないですよ……… 逆ギレするなよ………


 二人の間には気まずい沈黙が流れた


「気まずそうです。錘螺様? そろそろ帰りませんか神界に……… 」


 っと、そこに現れたのは雷呀様でした


「雷呀? 還るのはあと3日後のはずですが? 」


 そう言った錘螺様はさっきの雰囲気は無かったかのように、いつものキリッとした顔をしていた。

 対して、雷呀さんはいつもの頼りない雰囲気ではなく何かが吹っ切れたような荒んだ笑みを浮かべている。


「そろそろ、私にも休みがほしいんですが? まぁ、いいです。じゃあ3日後を楽しみにしています」


 あまりにも変わりすぎた変化に錘螺様は不安そうな顔になるが、雷呀様は気にした様子ではなく、それどころかいつもの軽口すらなく、まるで別人のようでした。


 雷呀様の消えた場所を眺めながら、嫌な胸騒ぎが起こりました。




 


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