3 眞鵺(しんや)の秘密
その頃天界では……
「あれで良かったの〜? 錘螺さま少し、いやほとんど嘘だったけど?」
そう言うのは髪の色を白に、瞳を黄色に戻した元『錘螺』の姿をした雷呀
「まぁ、仕方ないじゃないですか。本当の事を言えるわけがない。それとも、『私が母親です。』って言えば良かったとでも?」
そう言って、三編みをほどいて、瞳を翡翠色に、髪を桃色に戻した元『雷呀』もとい、本物の錘螺はため息をついた。
そう、二人は入れ替わっていたのだ。
因みに、妖精のエミリーは知っていたため、『入れ替わった』を『あの』に凝縮していたのだが。
何故、二人が入れ替わっていたかというと、風間 眞鵺の秘密が関係するのだが。まあ、ぶっちゃけるとマンガチックな桃色という髪の色がばれたくなかったからという理由になる。入れ替わった時の『錘螺』の髪の毛はピンク色だったので意味がないのだが、眞鵺に実際に会える事で舞い上がっていた頭は、その事を忘れさしていた………
まぁ、神だと余り自由がきかないので、会いに行く時に大変だったのである意味結果オーライだったのだが………
「それはそうと、わざわざ入れ替わったのになんです? あのふざけた態度」
口角を上げながら目尻をさげる錘螺の後ろには黒いオーラがでていた
「う〜 ごめんなさい〜 雷呀反省してます〜 つい、錘螺様の子供が目の前にいると思うと、張りきっちゃったんだ〜 だから、満面の笑みで鞭を、ピタピタ手に打ちすえるのはやめてー」
気がついたときには、錘螺は鞭を手にしていた。すごく良い笑顔で………
しかし、その説明では余計に怒りに油を注ぐ。そしてとうとう、床に鞭をうちすえた
「そうです。その態度です。フフ、今思い出しても怒りが沸いてきますね♪ 一回消滅しますか? 大丈夫ですよ♪ すぐに生き返らせてあげますから。多少、性格や容姿が変わってたり、記憶がないだけですから〜」
満面の笑みで迫ってくる事に本能的に恐怖をいだいて、後ろにジリジリと下がる
「それ、もう雷呀じゃないよ!! 別の何かだよ!!」
壁際に追い詰められて、何か別のモノにされかけた、雷呀の耳に『ポン♪ 』というワインのコルクを開けたときの音に酷似した音が聞こえた
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風間さんの元から、呼び戻されて、最初に見たものは衝撃の場面でした。
「うわ! お二人でなにをなさってるんですか!? まさか、お二人はそうゆう趣味が……?」
はい、錯乱しました。
いや、上のセリフは冗談で言ったんですが、想像してみてください…
笑いながら、至近距離で見つめあっている、もとい、半泣きになりながらひきつった顔で逃げようにも背中に壁があり逃れられない雷呀様と、怒りの余り後ろに黒い炎を纏った微笑みを浮かべ、追い詰めて刑を執行しようとしている錘螺様の様子を……
「オ〜 良いところにキタネ〜★ これで、解放される〜」
泣き顔で、此方を見つめてくる雷呀様には悪いけど、機嫌が異様に悪くて輝いてる笑顔の錘螺様を見たとき、思わず風間さんの所へ戻りたくなりました
「すいません、出直してきます」
「オイ、待てコラ!! 逃げるんじゃねー 雷呀を助けムグ……ムグ……(助けてー)」
「ゴメンね〜 ちょっと、隣の『部屋』で待ってて下さい。オ・死・オ・キをしたら、すぐ行きますから」
なんか、いま不吉な文字が混じった気が……
うん、気のせいだきっと!!
満面の笑みを浮かべる、錘螺様を信じよう!!
「分かりました! 待ってますね」
そういうと、後ろで聞こえる蛙が潰れたみたいな悲鳴を扉を閉めることでのがれた。
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それから約一時間後、艶々した錘螺様とボロボロの雷呀様が出てきた。
「穢された。もう、お嫁に行けない…… エミリー覚えとけよ♪ フフ」
雷呀様が怖いです。あの状況じゃ、逃げなきゃ私が死んでました!
「お待たせして、すいません。エミリーさん。今日お呼びしたのは、他ならぬ風間 眞鵺(かざま しんや)の事です」
「あっ、はい。風間さんの事ですね」
「ええ、あの子は私の子供なんです。昔…… どうしました? ポカンとして?」
「いえ、子供ですか〜 ……子供って誰の!? まさか、錘螺様の?」
「ええ、さっきそう言いましたよ?」
そう言うと、どうして驚いたのか分からない様に、コテンと首を横に倒した。
何時も、しかめっ面している印象が強いから忘れてたけど、美人だなぁ……
って、そうじゃなくって、ええっ~ 風間さんが、錘螺様の子供!?
「面白いですけど、そろそろ百面相やめてこちらに、戻って来て下さい。話続けたいんですが?」
「ヒャ、すいません。あまりに衝撃的だったので……どうぞ、続けて下さい。あれ、そういえば? 雷呀様は?」
さっきまで、ブツブツと何か呟いていた雷呀様が見当たらない?
「雷呀なら、ふて寝するために自分の『部屋』に戻りました。コホンそれでは、続きを…… あれは、私がまだ神ではなく神氏だった頃。因みに、神氏とは神になる前の研修生みたいなモノです。主に、神の手伝いをしています。雷呀がそうですね。まあ、雷神様の手伝いをしていたんですが、厄介な仕事を押し付けられまして…… まあ、機密なので、詳しくは言えませんが…… 下界に、降りたんですよ。って、聞いてますか?」
「えっ!? はい!! 聞いてます。けど、そろそろ風間さんが起きる時間かと思いまして……」
神界では、下界と時間の流れが違う。下界より、ゆっくり流れている。しかし、まだ眞鵺さんが錘螺様の息子だという事実が衝撃的すぎて半分も聞いていなかった………
「あの、そういえば風間さんが色々質問をしてきたんですが…… 普通なら、知識を色々知っているはずじゃ?」
異世界に送る時には、その世界で生きていける様にその世界の知識を記憶に埋め込む。
「はぁ、それを今から説明します。時間も無いので手短に話しますね。 彼、風間 眞鵺(かざま しんや)は神の記憶操作をたくさん受けています。つまり、あの島に行ったことで他の記憶が戻るかもしれません。だから、新たな記憶を書き加えるという、高リスクな事は今は出来ません。が、流石に今のままだともろもろ限界でしょう。なので、私が降りる事にしました。とまあ、まとめるとこんなものですね」
「はい!! ちょっと待ってください。今、降りると?」
「ええ、大事な息子を記憶が不安定な時こそ母親がそばにいるべきなのです!!」
と、胸をはる錘螺(母親)をポカンと見ていたエミリーは慌てて『ポン♪』と音を出して、慌てて元の世界に戻っていった。
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「あ、行きましたか…… 阻止しようとしても無駄なのに……」
ふと、目線を上げスクリーンに映る風間 眞鵺(かざま しんや)の寝顔をみた。
と、そこへ伸びをしながら『部屋』から出てきた雷呀は、いたずらが成功したかのような顔をしてニヤニヤと笑っていった
「うーん〜 はぁ、回復ー! 流石、稀代のストーカーの錘螺様〜 でも、上の許可出ないと思うよ〜」
「いや、許可取りませんよ?」
なに言ってるんだ、というように半目で睨まれた雷呀は、ゾクリと悪寒がする。
「大丈夫だから、判子押したり下界の様子を覗いたりする仕事だけだから〜」
ユラリと立ち上がる錘螺は、後ずさる雷呀の腕を掴んだ。
「ちょっと地面を支えてた巨神が逃げたり、火山が苛烈過ぎて温度調節するのが難しい位しか、問題ないから…… ね」
「いやいや、貴女の世界問題ありすぎです〜 死にます、消滅します〜 いや、そもそもばれるから! 確実に懲罰もんだから!! いやー 誰か――――」
こうして、錘螺は風間 眞鵺(かざま しんや)に付き添う事になった。一週間という期限のなかで……
「まってー! 雷呀 (らいか)を忘れないで〜」
……一神の犠牲を伴って。