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無花果の迷宮

作者: タカカヅ
掲載日:2014/09/07

あなたは迷宮と聞いて何を思い浮かべるだろうか?

石で作られた罠多き地下迷宮?光が射し込み猛獣が蠢く迷いの森?それとも薄暗い先の分からない巨大洞窟だろうか?

様々な答えがあるだろうが、危険だが踏破することで見返りがあるといった所は共通するだろう。

ところで、そういった迷宮は総じてゲーム等で存在し、現実には存在しないと考えてはいないだろうか?それは少し待ってほしい。

この世界、この地球にも迷宮と呼べる物があるのだから。

そこでは、多くの者が薄暗い道に挑む。

ある者は途中で倒れ迷宮に屍を晒し、またある者は目的を果たした。

彼女らは、己の本能と才覚、そして運をもって迷宮に挑んでいるのだ。


これは、そんな彼女らの挑む迷宮の話である。



○○○○



暗い道に足音が響く。

光の差さないそこへ、本能によって誘われた一つの命が侵入を果たしていたからだ。

そこは、侵入者を選ぶ。その資格は、まず、ある種族であること。そして、女性であること。

資格を持つものだけがそこに挑み、それ以外の者は違う迷宮へと向かう。それの数は多く、侵入者は自分が挑めるのが何処であるかを知っているのだ。

さて、見事侵入を果たした彼女だが、早くも問題が発生していた。数多くの道がその口を開けていたからだ。

侵入した迷宮は柔らかい薄い板のような物がところ狭しと並べられているのだが、それが複雑な道となり、奥へと進むのを難しいものにしていたのだ。

彼女は少しためらう様子を見せ、しかし、頭をふると、ゆっくりとゆっくりと奥へと進んでいく。しかし、しばらく進むとその歩みも止まってしまう。

目の前には、隙間なく立てられた無数の板が行く手を遮っていた。

仕方なく別の道を探ろうときた道を戻ること数分。彼女は自分がどこにいるのか分からなくなっていることに気づく。

焦りながら勘を頼りに進んでいくと、前に先客を見つける事が出来た。

これで道が分かるかもしれない。

彼女はそう思い声をかけようとしたとき、違和感に気づいた。

まず、動きがない。いくら同族とはいえ他者がいるのだ。警戒をするかはともかく、こちらを確認しようとするのが普通では無いか?

そして、匂い。迷宮事自体も匂いがあるため近づくまで気づかなかったが、まるで何かが腐るような匂いがした。

その時、彼女は気づく。目の前にいるのが、奥にたどり着けずに果てた者であると言うことを。

まるで自分の未来を表すかのような死骸から逃げるように彼女は来た道を戻る。

がむしゃらに進むと見覚えのある場所にたどり着くことが出来た。どうやら無事に戻ることが出来たようだ。

彼女は、途中で見つけた先達に遅ればせながら冥福を祈ると先へと進む。


○○


いくつかの行き止まりと数ある分岐を乗り越え、経験と勘を頼りに奥に到達した。彼女は疲れた体を休めると、早速とばかりに辺りを探り始める。

周囲は暗く、光も差すことはないが、彼女はそれも苦にすることはない。

最深部には数多くのコブのようなものがあった。それらを大きく分けると二種類に分けられるだろう。長いものと短いものだ。

彼女は長いものには黄色い粉を付けて回ると、短いものには次々と卵を産み付けて行く。

彼女は同じことを何度もすると、その場に座り込んだ。

もうすべてのコブを回ったためだ。彼女がここで出来ることはこれで終わったのだ。

あとはこのままここで待つことになる。

子供たちはここで育ち、大きくなると巣立っていく。だが彼女がそれを見ることはない。

この場所は、彼女が長時間いることが出来ないのだ。

徐々に空気が変化していき、彼女が生きることが出来ない場所へと変化していく。

彼女はこのままここで一生を終える。

だが、彼女の成したことはまだ終わってはいない。


○○○○


時間がたったある日、微睡みの中で、彼女は壁から響いてくるある音に気づいて目を開けた。

それはなにかで固いものを削るような音であり、さらに、それが段々と柔らかく薄い壁を削る音になって来ているように聞こえる。

彼女は体を起こし、ゆっくりと音がなる方へと近づいていった。

すぐにも向かいたいところだが、息苦しさを感じていたからだ。だが、それもすぐに良くなるだろう。

そこには他の壁と変わらないわずかに湾曲した壁が続いていたが、やがてそこから一筋の光が差し込んで来た。

入り口から闇に包まれていた彼女だったが、その光に驚くこともなく段々と広がる光の輪を見つめている。

そして、彼女が通れるほどの大きさになると、そこから一つの影が中に戻ってきた。

それは彼女の夫。

彼は女たちのために迷宮の壁に穴を開けてきたのだ。そして、お互いに開通を喜ぶと、彼は、迷宮の奥へと入っていく。

彼には、妻たちが生きられないような場所でも動ける耐性があるのだ。

しばらく新しい風を浴びていた彼女はその夫に後を任せ、迷宮の外へと飛び立っていく。

新たな迷宮に挑戦するために……。



○○○○○○


○イチジクコバチ


無花果(いちじく) の受粉を行う唯一の虫。ほとんどの無花果は彼らが受粉している。(一部自花受精するのもある)


彼女らは無花果の中で産卵をするため迷路のようになっている入り口から進入する。これは、他の虫を入れないようになっているためだが、

コバチも迷ってそのまま死んでしまう事もある。


産卵を終えた後、卵が孵りそこから産まれたオスが穴を開けるのを待ち、穴が開けばメスは次の無花果を目指して飛んでいく。

オスは、その場に残りそのまま短い一生を終える。







イチジクとイチジクコバチの関係も面白いですよ。お互いの依存度が凄いです(笑)

興味がある方は、調べてみるといいと思います。


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