プロローグ
彼は蛍光灯の灯りが照らす薄暗い自室で、絶頂の後に押し寄せる虚無感に身を委ねていた。何故、人は生きるのか、人生とは何か、自由とは……。そんな取り留めもない問いを頭の中で回転させながらジーンズのチャックを閉めて、おもむろにリモコンを手に取り、テレビの電源を点けた。
テレビのスピーカーから流れるのは流行りの女性アイドルグループが歌う底抜けに明るい曲だ。それまで思考していたくだらない物事は、彼女達の声に塗りつぶされていった。
「またアイドル特集か……。」
彼は煩わしそうにひとりごちながら、点けたばかりのテレビを消した。テレビの電源が消える前に、テレビの映像が暗転したが、彼は気にも留めなかった。
彼の名前は古田悟。新卒で就職した会社を三年間務めた後、会社を退職した。その後、特に転職先を探すわけでもなく自堕落な生活を送っている。いわゆるニートだ。取り立てて特筆すべき長所もなければ、高い志があるわけでもない。
何故そんな没個性的な彼が物語の主人公なのか? 物語の主人公になるのに理由などないのだ。サングラスをかけた司会者も薄気味悪い笑みを浮かべてこう言っていた。奇妙な世界への扉はすぐそこにある、と。
正直なところ、まだ先の事は決めていません。何とはなしに書きはじめました。よろしければこの後もご覧ください。