M.G 第一章
いつもと変わらない日常。
1日中頭にまとわりつく倦怠感をやり過ごして終わった、いつもと変わらない仕事。
一人暮らしで生活して五年目。
コンビニで買った弁当をテレビの前に置いて
俺はいつものようにゲームの電源を入れた。
「このために生きている!」
32型に写し出されるタイトルに、俺は今日も無事1日が終わったのだと安堵した。
『M.G / 1』
発売して七年経つ、RPG。
ちまたでは、されオンラインだ、仲間と協力だ!なんていうネットゲームがはやっている中、このゲームは一人プレイの普通の家庭ソフトゲーム。
自由に好きなペースで遊べる、周りを気にしないでいい。
みんなで時間を合わせたり、補助や魔法の担当を決めたりするのがどうも苦手なため、このゲームは俺の性格上とても合っていた。
まぁ、課金の無限ループが恐ろしいっていうのもあるけど。
発売当時は中々はやったゲームなのだが、オンラインゲームでのステージプラスが一通り出たあとはみるみるうちに廃れていった。
課金が嫌いな俺は一切手は出さなかったのだが…
攻略サイトができあがってしまった今では、もはや過去のゲームの一つだ。
俺みたいに根強いファンはいるだろうけど、少数派だろうな。
舞台はありがちな中世風のファンタジーゲーム。
自国の村からスタートし、仲間を集めレベルを上げ、魔王を倒す。
魔法を覚えたり、剣技を習得したり、召喚獣や精霊を仲間にする。
俺がこのゲームにはまったのは、このゲームのサイドストーリーがなかなかおもしろかったからだ。
メインストーリーのほかに、隠しクエストや隠しダンジョン。
変わった魔法や、探せば伝説の精霊みたいなのも仲間にできた。
やりこみ要素は他の家庭ソフトと比べ、多いほうだとネットでも言われたくらいだ。
魔法、剣技、精霊、術、はては料理やアイテムまで
全ての項目を100%まで達成できれば、廃人になる一歩手前。
そう言われたほどだ。
かくゆう俺もその一人に該当する。
一年ほど前に半ば意地で達成した、オール100%クリア。
とっくの昔にブームが廃れていたので、一人でガッツポーズをして達成感に浸った。
まぁ、むなしくもあったが。
「さぁて、今日はなにしようかな」
もう一度、ピアニスト見習いのクエストでもするか。
音ゲーみたいだから中々面白いんだよな、あのクエスト。
そう思い、コントローラを握った瞬間。
不意に鳴り響く、轟音。
「っ、びっくりした…雷?」
そういえば、天気が崩れるってニュースで言ってたな。
今日は金曜日だし、このまま引きこもり決定だな。
特に気にすることもなく、向かいあったテレビ画面。
いつものようにプレイを始めたと同時
耳を切り裂くような轟音と、体に走った衝撃が
俺の意識を、一瞬にして奪っていった。