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二話 囲む人々、一対一

 周りを囲む人々。その表情は読み取れない。


 「もう一度お尋ねします。あなた方が、あの会社に反旗をひるがえした方々ですか?」


 後ろをゆっくりと指差す。その指の先には巨大なビルが三つ建っていた。

 3本のビルが横並びに並んでおり、左、右、真ん中の順に高くなっている。そこまでしか確認できなかった。

 零磁と真心は互いに目を合わせ、慎重にうなずいた。


 「ああ、俺たちがそうだ」

 

 真心が警戒を解かず、そう答える。

 

 「……その証拠は?」


 あくまで相手も慎重なようだ。老人が右手を挙げながら証拠の提示を要求する。

 次は目を合わせることなく、真心が自分の荷物入れからあの兵器の残骸を取り出した。

 

 「さっきこの兵器を使う者を1人倒した。これがその残骸だ。……これが証拠じゃ足りないか?」


 風が吹く鋭い音が沈黙を与えない。

 老人が右手をゆっくりと下ろした。


 「……確かに、足りませんね。ですが、あなた方が嘘をついているとも思えません。ですが、それは私の直感。確実性がありません。ですからこうしましょう」


 二回手を叩くと、周りを囲んでいる人々の中から、一人の男が現れた。


 「この者は、私達の中で一番身体能力が高いものです。この者と勝負して、勝てたのなら、認めましょう」


 老人はその提案を残し、一方後ろに引いた。


 「あなたはそれでいいのですか?」


 ところで、さっきから話しているのは真心だけである。

 零磁はずっと黙って話を聞いているだけだ。


 「ああ、いいですよ。この時代に体を鍛えている人なんて、私達のような兵器を恨む人しかいませんからね」


 ところどころ破けた服を着ているその男は、確かに無駄なく――少し足に筋肉が偏っているが――全身鍛えられいていた。

 対する真心は、荷物入れを置き、重心低く構えた。


 「では、始め!」


 いつの間にか建物の高い部分へ上っていた老人が戦闘の開始を告げた。

 男がすさまじい速さで間合いをつめる。

 だが真心はすっと構えを解き、左手を前へ突き出した。


 「ちょっと待った!」

 「え? え!?」


 慌てて速度の付いた体を止める男。

 周囲の人々からどよめきが漏れる。


 「一体どうしたというのですか?」


 建物の上から老人が本当に疑問そうに質問を投げかける。


 「いや、何をもって負けとするのか決めてないですよね?」

 「あぁ……」


 そういえばという風に老人。

 周囲の人々からのどよめきの中に少し笑いが混ざった。


 「そうですね……では、体が半分以上地面に付く、ということでどうでしょうか?」

 

 真心が左手で男へ答えを促す。


 「俺は別にいですよ。ではそれでもう一度始めましょう」


 最初の位置へ歩いて戻る。真剣な顔でふぅと息をついて構えをとった。

 真心も重心が低い構えを再びとる。


 「では、改めて始め!」


 老人の声と同時に、さっきよりもすさまじいスタートダッシュをきった。

 真心の顔面に勢いの乗った右ストレートが迫る。

 一呼吸、その後にぐっと体を低くした真心は、相手の勢いそのままに、下から持ち上げるように投げ飛ばした。

 突然のことで受身を取れなかった男は、激しく背中を打ち付けて、地面にのびた。

 あまりにあっけなくついた勝負に、零磁と真心以外の人間は、呆然とした。


 「さすが真心さん! やっぱリーダーなだけあるよ!」


 無邪気に笑い、背中を叩く。


 「俺じゃないだろリーダーは……。まったく、俺は副、そっちがリーダーって決めただろ」


 ため息とともに沈ませていた体を起こす。

 そして仰向けでうめいている男に手をさし伸ばした。


 「大丈夫ですか?」


 男は痛みに顔を歪めながらも笑った。


 「あんた、本物だな。もう鬱陶うっとうしいから敬語は無しでいくが、許してくれ」


 真心の手を掴み、痛みながらも起き上がる。


 「遅くなったが、俺の名前は多々たたら 志波しば。気軽に志波って呼んでくれ」

 

 そこで気が付いたように、身長を自分と比べる。


 「……お前らの名前と、できれば年齢も教えてくれるか?」


 もっともな質問だった。身長が志波とは離れすぎていた。


 「俺は肩狩かたがり 真心。年は十八です」

 「俺は帯葉たいば 零磁! 年は十五です!」


 間髪いれずに零磁が自己紹介をする。


 「……わ、若いな。そんなに若いのに立ち向かっているのか」


 自分の手を握り締め悔しそうな悲しそうな顔を志波はした。

 そこでわれに返った人々に一瞬にして囲まれた。


 「あなた方が本物の!」

 「こんな子供なのに……」

 「おーい! 何か食べ物はあったか?」


 口々に何かを言って三人を取り囲む。

 

 「静かに!」


 老人の鋭い年を感じさせない一声が、人々を黙らせた。


「ご無礼をお許しください。あなた方は、我々の希望なのです。大目に見ていただきたい」


 異常にかしこまってそう言う。


「いやいや、全然気にしませんよ。こちらのほうこそ、あなた方の仲間を投げ飛ばしてしまって」


 その会話を、零磁が切り裂く。


「そんな前置きは無し! 何か俺たちに用事があったんでしょう?」


 零磁が問いかけると、周りを囲んでいた人々がぞろぞろと老人の後ろにまわった。


「単刀直入に言いますと、志波を、共に連れていってほしいのです」


 その言葉で進み出た志波だったが、すぐに飛び退いた。

 直後、志波が立っていた地面が小さく爆発をし、地面のかけらをまきあげた。

 すぐさま臨戦態勢に入る三人と、慌てふためく人々。

 その異様な温度差を眺める、三人の姿が建物の上にあった。

今回も感想お待ちしております!

ダメなところばかりですが、読んでくださる方には感謝で一杯です!

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