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〜ゼロ・リトライ〜  作者: 門田 光
Ⅰ 鴉山の神隠し
21/30

~鴉山の神隠し(後)2~

 新塚先生にお礼を言って、オレは応接室を後にした。


 玄関へ向かいがてら窓の外を見ると日が沈みかけている。

 結構長い時間話してしまってたようだ。

 だが、その甲斐はあり、興味深い話を何個か教えてもらえた。


 七年前に起きた鴉山の神隠し。


 その全容について、少しは客観的に見えてき始めた気がする。

 そして気になることも。


 校舎を出て、校門の前まで歩くと、やはりというか、当然のように隆弘が壁にもたれていた。

 驚きやしない。

 こいつをここに呼んだのはオレなんだから。

 それに今日は元々どこかで合流する手はずだったのだ。


「伊織ちゃんとのお話はもういいのかよ?」


「あぁ、必要なことは教えてもらったよ」


「わざわざお前から呼び出すってことはよっぽどいいネタなんだろうな?」


「まあな」


 自信満々に笑って答えると、隆弘はニヤリと笑う。


「お前の方もなんか分かったのか?」


「収穫はあったぜ」


「ならお互いの情報を照らし合わせよう」


 隆弘と同じように校門の壁へもたれると、オレはまず最初に確認しておきたいことを聞いた。


「鴉山の神隠しって知ってるか?」


「昔、ウチの女子生徒が行方不明になった事件だろ?」


 にべなく答える隆弘。


「お前も知ってたのか?」


「ハッキリ知ったのは昨日だけどな」


 そう言われて少し驚いた。

 同時にちょっぴり悔しくも思った。

 今回はオレの方が先に知ったつもりでいたが、またしても隆弘の方がやや先を行っていた。


「旧校舎を調べてる時、一応、旧校舎を中心に昔の鴉山市についても探ってたんだ」


 そういえばこいつの家に行った時、そんな内容の紙が床にあったな。


「時間はかかったが、七年前に失踪届が出ているのを見つけてな。昨日、そのことを昔のOBに聞いて知ったんだ。それがどうした?」


「………そうか」


 オレはしばらく口が塞がらなかった。

 疑問に思ったら迷わず即行動って、フットワークが軽いな、お前。

 でもそこまで知ってるなら話は早い。


「多分、オレ達が知りたいこととは関係がないんだろうけど、上手くやればコレを切っ掛けに出来るんじゃないかと思うんだ」


「切っ掛け? なんの?」


「旧校舎を明るみに出すための」


 現状、手持ちの情報だけではあそこで行われていた所業を告発するのは難しい。

 恐らく警察か学校に言っても、ただの学生の戯言と相手にしてもらえないだろう。


 なにかワンポイント必要だ。

 オレ達の持っている情報に食いつかざるを得ない、後一手が。

 なにかを売りこむためにはただ説明する、それだけではイマイチ印象に欠ける。


 大切なのはアピールすることだ。


 受験の面接だって自己PRは必要なのだ。

 自分は困った人を放っておけない性格で、足を痛めたお婆さんを助けたことがある、ってな具合に具体的なエピソードだと好ましい。

 まぁ、口が達者な奴は嘘八丁でその場を取り繕えるかもしれないが、今のご時世、オレみたいに口下手な奴って少なくないと思うんだよね。


 ホントなんで面接なんて存在すんの?


「この神隠しを利用して、旧校舎を世間にアピールするのさ」


 だから、この場合は舞台を整えてやる。

 誰もが目を引かずにはいられないように注目させてやるのだ。

 そこに追加の情報が流れれば、もう獲物の目先に餌がぶら下がってるようなものだろう。


「そうすりゃ、否が応でもみんな食いついてくるだろう?」


「なるほど、そりゃいい案だ。でも、お前にしちゃ珍しく積極的だな? 気が変わった切っ掛けでもあったのか?」


「いいや、別に? 単なる気まぐれだよ」


 猫の気まぐれと一緒だ。

 当面はそう考えることにした。

 今はまだこの気持ちに理由をつけることは出来ない。


「気まぐれ、ね。ならしょうがねえ」


 そう呟いて、口の端を吊り上げる隆弘。


「それで、伊織ちゃんからどんなことを聞いたんだ?」


「ああ、大分長い話になるけど聞いてくれ」


 オレは今日知ったことについて話し始めた。


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