表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/7

邪竜ファーヴニル

 戦争に出かけたシグムンドは、はじめのうちは調子よく敵を斬ったり、突き刺したりして、快進撃を繰り出していたが、オーディンは気まぐれを起こす。

 ヴァルハラから地上をのぞいていたオーディンは、あいつ用済み、とばかりに、シグムンドのグラムを、真ん中から折ってしまった。

 敵の将軍に身体を貫かれたシグムンドは、ぐったりとくずおれ、荼毘に移された。

 

 

 こうして王子シグルズは、みなしごになって、鍛冶を生業とするレギンに弟子入りするのであった。

 彼はいつも、折れたグラムをお守りにして持っていた。

 レギンがシグルズに、

「もういいころだから話そう。じつはおまえの祖先のオーディンが起こした事件があってだな・・・・・・」

 シグルズはオーディンが人間界を浮浪し、生ませた貴族の子孫である。

 つまりシグルズには、正当な神の血が混じっていた。

 レギンはそのことからはじめ、オーディンの身代金である黄金と指環の話をし、ぜひとも竜に化け、とぐろを巻いて守っている兄のファーヴニルを倒してほしいといった。

 ところがシグルズは、態度がすこぶる悪く、

「けっ、ばかにするな。どうせあんたは、俺がどうしようもない愚か者で、力でねじ伏せることしかできない、おおうつけだ、とでも、いいてえんだろ。たしかにあんたの鍛冶道具を、このバカ力で壊したさ」

 まくし立てるシグルズの機嫌をなだめようと、レギンはグラムの打ち直しを申し出る。

「お前の父の剣は、ワシが直すから、ぜひ頼む」

 シグルズは仕方なく承知した。レギンもあとからついてくる。

 フランケン山脈の中腹で、ファーヴニルが待っていた。

「お前の名はなんと申す」

 シグルズはつばを吐いて、名乗りを断った。

「初対面で名前を言うのは、まずいんでね。おおかた、のろうつもりだろう」

「考えすぎだ・・・・・・」

 ファーヴニルはとぐろを巻いて、黄金を守っていた。

「じゃあ言うよ。俺はシグルズ。父は英雄、シグムンドだ」

「ほう、高貴な血筋だな」

「だから黄金をよこせ」

 シグルズは鍛えてもらったばかりの、美しい、シグムンドが使っていた当時のままを再現できた、幻の剣を構えて、ファーヴニルを脅した。

「断る」

 ファーヴニルがニヤリと笑い、毒の液体を吐き出した。

 跳躍して一歩か二歩、後ろに下がるシグルズ、今度は剣の切っ先を向けて突進した。

「うおおっ」

 ファーヴニルのうろこを切り裂き、かのものを倒したシグルズは、満足そうに鼻息を荒くしていた。

 そして袋にいっぱい黄金をつめ、馬に乗せると、ファーヴニルが言った。

「ワシを倒しても、その黄金は呪いがかけられているのだ・・・・・・だからワシはお前に殺された。お前という禍によってな! いいかシグルズ、その黄金に頼るのではないぞ。引き返せといったわしの忠告を聞かなかったばかりに、お前は・・・・・・」

 ファーヴニルはそこまでいって、息絶えた。

「なにを、バカな」

 忠告を無視したシグルズを待っていた運命。

 それは、激しく、はかない最期・・・・・・。

 ファーヴニルは邪悪ではない気がするんだよねぇ。

 本当に邪悪なら、

「世界の半分をくれてやろう、どうだシグルズ」

 でしょうよ。

 え、ちがうって? 爆

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ