超あらすじ
ニーベルングの指環って、知っていますか。
その関係なんですけど、ちょっと説明・・・・・・。
ニーベルング(ニーベルンゲンは複数形)の歌は、十三世紀に編纂された、ドイツの叙事詩です。
この話は十九世紀にワーグナーが楽劇『ニーベルングの指輪』と題し、オペラにしたのですが、とても騎士的で、もともとの伝説である北欧神話と比べると、神話に慣れ親しんだ人は、その対照的な内容に驚きます。
あらすじとしては、やや北欧神話寄りになりますが、これを知らないと叙事詩の内容がわからないと思うので、記しておきます。
内容的にもあまり、変わりはありません。
英雄ジークフリードがネーデルラント(オランダ)を滅ぼされ、父親も母親も死んでしまい、孤児になり、鍛冶屋のレギンに拾われて、過去の昔話を聞かされることから、彼の冒険が始まります。
レギンの話によれば、ジークフリードの祖先であるオーディン(ヴォーダン神)が、ヘーニル、ロキという神と放浪していると、ロキが川で遊んでいる巨人の子オトを殺してしまい、オーディンやロキたちはその晩、殺した子供の父親に一晩とめてほしいというのです。
父親は、息子が殺されたことを知ると激怒して、ロキ以外を牢屋にぶち込んでしまいました。
オーディンは巨人の父フレイドマルから黄金をもってこいといわれ、自分が助かるために、こう言いました。
「ロキよ、アンドヴァリという水の妖精から、黄金をせしめてこい」
ロキはアンドヴァリのもとへ行き、無理やり黄金と、それから、この話の鍵であるきれいな指輪を奪ってしまいました。
この指輪は、アンドヴァリが大切にしていたもので、アンドヴァリは怒って呪いをかけてしまいました。
「黄金と、指輪を持つものに災いが来るようにしてやるぞ」
ところがこの殺された弟、オトには兄弟がおり、長男がファーヴニル、真ん中がレギンでした。
ファーヴニルは父親に黄金をくれといい、しかし父はよこさなかったため、ファーヴニルは寝ている父親の首をはねて、殺してしまった。レギンがファーヴニルに黄金をよこせというが、断られたため、恨みに思い、そこをちょうどジークフリードがあらわれたため、利用しようとたくらんだわけです。
そこでレギンはジークフリードに剣を鍛えてやって、兄を倒してもらおうとしました。
ジークフリードは皮肉を言いながら、しぶしぶレギンの兄ファーヴニルを倒すため、フランケンの山に登り、ファーヴニルを剣で殺します。
殺した後、レギンがジークフリードに命じて心臓をえぐりだし、焼いておくように言いつけますと、自分は昼寝しました。
ジークフリードが竜の心臓をあぶっていると、火傷してしまい、生き血をなめてしまった。
すると、なぜか鳥の言葉がわかります。
「ジークフリードは、レギンに騙され、殺されようとしているよ」
これに怒ったジークフリードは、レギンの首もはねてしまい、鳥に教わったとおり、ブルグント族(東ゴート)のいる陣営に向かう途中、炎の城の中で寝転がっている兵士を見つけ、鎧をはがすと絶世の美女が現れ、名をブリュンヒルトといい、彼女はワルキューレ(戦乙女)で、オーディンから呪いを受けて眠っていたといい、愛し合うと婚約します。
ところがジークフリードはブルグントのギューキ王の妻から息子になってほしいと言われ、断ると、毒を盛られ、過去の愛を忘れ、クリエムヒルト(グズルーン)に惚れてしまい、結婚します。
さらに王子グンナルはブリュンヒルトがほしいと思い、ジークフリードに頼み込むと、魔法の隠れ蓑を用意し、ジークフリードがグンナルになりすまし、求婚します。
武勇に優れた彼女は、ねじ伏せられて口惜しい思いをするが、ジークフリードを待ち望んでいたのに、それがかなわず、仕方なしにグンナルと結婚してしまうのです。
しかしこのねじ伏せた相手がじつはジークフリードであると知ったブリュンヒルトは怒り、夫にあいつを殺せと頼みます。
すぐ下の弟ヘグニは、女の言うことを聞くなど、と笑いましたがそれでも兄に協力し、末っ子のゴトホルムにジークフリードを暗殺させました。
ジークフリードは背中に剣を刺された仕返しと、グラムという父の形見の剣を突き刺し、ゴトホルムを殺してしまいました。
妻のクリエムヒルトは悲しみ、泣き崩れるばかり。
ブリュンヒルトはジークフリードと一緒に荼毘に入ると、冥府へと旅立つのでした。
彼女がジークフリートの犯罪を見抜いた理由は、クリエムヒルトが原因でした。
クリエムヒルトが見せた、ジークフリードからの贈り物、すなわち指環です。
この指環、ジークフリードが最初、ブリュンヒルトに送ったものでしたが、隠れ蓑をつけたときにこっそり抜き取って、クリエムヒルトにあげてしまったのでした。
自慢げに指環を見せるクリエムヒルトが憎らしくてたまらなかったのでしょう、ブリュンヒルトはかんかんです。
悲しんだクリエムヒルトは、次にフン族のアトリ(アッティラ)に嫁ぎました。
ここで兄たちを捕まえたアトリに復讐を考えました。
アトリは黄金がほしくてグンナルやヘグニを捕らえて、ジークフリードが持っていた黄金のありかを吐かせようとしたのですが、グンナルはヘグニが知っているというと、アトリの兵士は部下の心臓を皿に乗せて持ってくるとグンナルはそれが偽者であると見抜きました。
「ヘグニのものであれば、臆病に震えたりしない」
今度はヘグニの心臓を持ってくると、ヘグニはえぐられたとき、高笑いしていたといいます。
クリエムヒルトはアトリとの間に生まれた子供らを料理して、肉に蜜をかけ、宴会に出すと、アトリは子供たちがいないことに気づき、クリエムヒルトに尋ねました。
「おや、子供はどうしたね」
「あなたが食べたじゃありませんか」
クリエムヒルトが高笑いし、ジークフリードのグラムを振り回すと、宴会場は大騒ぎになり、ヒルデブランドに取り押さえられ、処刑されるのでした。
というのが北欧神話『エッダ』の内容からで、以降は中世にドイツで書き直されたものです。
ブルグントの高貴で美しいクリエムヒルトに求婚しようとしていましたが、あるとき夢を見まして、美しい鷹が鷲に襲われ、死んでしまったというもので、母親は未来の夫のことであると告げますと、クリエムヒルトはまだ見ぬ夫がかわいそうになり、結婚しないと誓いました。
しかし、ネーデルラントの王子ジークフリードはどうしてもクリエムヒルトと結婚したかったので、ブルグント族の陣営に向かい、ザクセン軍や伝マルクの軍勢におされ気味のブルグントを助けるといい、こう願い出ました。
「自分と十二人の騎兵とで守りましょう、そのかわり千人の兵隊をください」
デンマルクのリウデカストという王様は、とても強く、軍隊もジークフリードの数十倍でした。
ジークフリードは一騎打ちしてこれに勝ち、続いてザクセン王リウデケールをも、打ち破ってしまいました。
ジークフリートは一度いとまごいしようといったが、グンテル(グンナル)は、
「まあまあ、いいじゃないか。もう少しいなさいよ」
ということで、ジークフリードはとどまることになり、クリエムヒルトに会える日を楽しみにするのでした。
聖霊降臨祭が始まるころ、クリエムヒルトは弟からジークフリードに挨拶をすれば、この国に役立つだろうと説得されて、クリエムヒルトはジークフリードに挨拶をします。
ジークフリードは大変喜び、ミサが終わるのを待ってクリエムヒルトの手に接吻し、まだ自分には求婚する自信がないと、もう少し国にとどまることにします。
イスランドの女王ブリュンヒルトは、武芸に優れており、私に勝てば結婚しようとお触れを出し、グンテルはジークフリードに手を貸せと頼む。
「では、クリエムヒルトを私にください。そうしたら、力を貸します」
ジークフリードは隠れ蓑を使ってずるをし、グンテルを勝たせます。
実はジークフリード、ブリュンヒルトと面識があり、今日は何の用事で、と尋ねられ、グンテルという男が求婚したいと申し出ると、ジークフリードが自分に結婚の申込みをしにきたと思い込んでいたブリュンヒルトは驚きます。
そして結婚を承諾した女王を連れて、国に戻ります。(ブリュンヒルトとジークフリードの間柄であるくだりはドイツ叙事詩では省かれているようです)
ブリュンヒルトはグンナルを縛り付けて彼が迫り来ることがないように、朝まで過ごしました。
ジークフリードに泣きついたグンテル、隠れ蓑を使ったジークフリートにブリュンヒルトが押さえつけられ、ジークフリードはこっそり指輪と腰帯を抜き取ってしまったのでした。
これが禍の元となる。
数日すると、ブリュンヒルトとクリエムヒルトは互いの夫自慢をする。
そのうちに、クリエムヒルトが言います、あなたを最初に抱いたのは、ジークフリード様よ、と。
グンテルが泣きついて、隠れ蓑をつけたジークフリードがブリュンヒルトを押さえつけた日です。
ブリュンヒルトはたまりかねて、臣下に相談すると、ブリュンヒルトを慕う部下はジークフリードを倒そうというが、グンテルや弟王ギーゼルヘルは反対します。
ハーゲンという重臣はどうすれば英雄ジークフリードを倒せるか、策を練っていました。
そんな中、再戦を挑んできたデンマルクの王からジークフリードを守るとハーゲンは、クリエムヒルトに誓いますと、クリエムヒルトは、
「あの人の背中には、菩提樹の葉が貼りついていますの。竜を退治したときに張りついたらしいですわ」
ハーゲンはクリエムヒルトに頼み、夫の衣服にそこだけ印をつけてもらいました。
ジークフリードが戦争に出かけるというときになり、じつは修好使節であったと告げられ、戦争の支度をした英雄は残念がりました。
ハーゲンはそこを狙い、猪狩りにでも行きましょうということになって、森へ出かけました。
そして狩った獲物で料理をし、宴会でのどが渇いたジークフリードはハーゲンの提案で泉に出かけ、水を飲む最中、ハーゲンは槍で彼の肩甲骨を深々と刺し貫きました。
ジークフリードは剣が見つからず、楯でハーゲンを力任せに殴りつけますが、悪運の強いハーゲンは逃げ出しました。
これ以降は殺害と復讐の連続で、先述の北欧神話の内容とかぶるので、省略します。
最後の部分だけを言うと、クリエムヒルトは夫の形見バルムンク(グラム)を持っており、夫の遺産である黄金を返してほしいとハーゲンに頼みます。
しかし王の生きている間はありかを教えられないという。
泣く泣く兄の首をはねるクリエムヒルト。
ところが、ハーゲンは、宝のありかを知るのは神と自分だけで、お前のような魔女には教えられないといいます。
怒ったクリエムヒルトはバルムンクでハーゲンをも刺し殺し、老将ヒルデブランドは、クリエムヒルトを殺害してしまった、ということです。
感想から言って、これは復讐から始まり、画策し、殺害の連続の物語です。
時代背景はフン族に支配された欧州の時代の話をベースに作ったのですから、生々しいのは当然かもしれません。
このものがたりの、致命的な部分といえば、ジークフリードのうかつさと、クリエムヒルトの口の軽さでしょう。
ブリュンヒルトに見せてしまった魔法の指環は、たしかにアンドヴァリの警告どおり、呪いを発動させました。
さらにハーゲンの存在が、ニーベルングの歌という物語にスパイスを加えています。
彼は策略家です。
ハーゲンがなぜ、ジークフリードを殺さなければならなかったのか。
クリエムヒルトが好きだったのか、あるいは個人的に恨みを持っていたのかもしれません。
北欧神話の一部とされる『ヴェルスンガサガ』ですが、こちらは一部、『シグルズの歌』が消えています。
なので詳細はわかりませんが、とにかく、えげつなさが漂う北欧神話型の『サガ』と、あくまで騎士的に描いた英雄の姿の物語『ニーベルンゲン』。
片方は古代からの、片方は中世の時代に書かれたので、内容の食い違いは仕方ないとしても、殺戮が伴うのは、苦手な人には読んでいてつらいかもしれません。
それでもあなたは、目をそらさずに読めますか!?
とほほ、長すぎた・・・・・・。
これ、高校生に頼まれて書いたあらすじです。
いや、金はとってませんが(笑。
仕事としてでなく、あくまで趣味の範囲・・・・・・。