僕猫と彼女
1年以上越しの更新…
こんなん読んでくれる人おんのかな??
もしいるんなら、期待に応えたいな!!
体調が万全になった僕は、猫を連れて診療所へ行った。この間受けられなかった分の診察を受けるためだ。
「風邪だったんだって?またなんで?」
「そんなのこっちが訊きたいよ。雨に濡れた覚えも無いし。」
「・・・まさか、悩熱とか?」
「何それ。」
「文字通り、悩みやストレスから発熱する事だよ。」
確かに最近、自分が分からない事が多くなっている。ストレスは生きている限り万人にあると思うが、今の僕は悩んでいるのかもしれない。
症状は悪化も改善もしていなかった。そしていつも通りにメガネのメンテナンスをしてもらい、いつも通り奥さんから本の返却を頼まれて図書館に来たのはいいが、違う事が1つ。彼女が見当たらない。これだけ広い図書館なのだから、逢わなくても不思議じゃない。しかしこれまで僕が図書館に来た時はいつだって逢っていたので思わず探してしまった。
「あの・・・今日は馬山さんお休みですか?」
ついには図書館の職員に訊ねてしまった。
「ここ最近来てないんですよ。」
「どうかしたんですか?」
「それが、無断欠勤で―。」
えっ?!彼女が無断欠勤なんて有り得ない。何かあったに違いないけど、会わないとどうしよもない。電話してみようかと思ったが、それではまるでストーカーだ。やめておこう。
心配で気が気でないながらも僕は図書館を出た。
「おいご主人!!」
外で待たせていた猫が大急ぎで向かってくる。なんだか焦っているようだ。
「待たせたね。」
「そんなことはどうでもいい!走ってついて来い!」
「えぇ?あっ、ちょっと!」
そう言って猫は駆け出した。僕は訳が分からないまま猫を追う。すると猫は非常階段の扉の前で止まった。
「ハァハァ・・・猫。いったい・・・何なんだ。」
「さっき、あの女が入っていった。」
「あの女って・・・馬山さん?」
「他にいねーだろ。あいつ、えらく暗いカンジでオレに言いやがった――」
猫は、僕が図書館へ行っている間に彼女にこの扉の前で「私って要らないモノなんだよ。だから消えるの。誰にも言ってないけど君には言っておくね。」と言われたらしい。もはや嫌な予感しかしない。僕は扉を開けて階段を駆け上がった。
無我夢中で登りきり、屋上へ出る為の扉を勢いよく開けようとするとガシャンという音がして10センチほどしか開かない。向こう側からチェーンがかけられていた。隙間から覗くと、だいぶ先に彼女が小さく見える。
「馬山さん!!」
大声で呼ぶが届かない。このままではまずい。僕は必死にチェーンを外そうとするがそんなの無理だ。そうこうしてるうちに猫が追いついて隙間から外へ出た。
「声が届く範囲まで連れてきてやる。説得はご主人がしろよ。」
そういって彼女に近づいていく。猫に気づいた彼女はしゃがんで撫でる。そして彼女は何かを取り出し、猫がすかさずそれをくわえて僕の方へ走ってきた。猫を追って彼女もこちらへ走ってくる。
さっきは流れで「わかった!」という返事をしたけど何も手立てを考えてなかった。どうしようかと思っていると隙間から猫が入ってきた。くわえていたのは封筒に入った手紙だった。
「こいつは『いしょ』っていうんだと。後はご主人がなんとかしろ!」
僕が彼女の遺書を受け取ると同時に扉の外で声がした。
「返して!返してよ!」
泣きわめいている。
「絶対に返さない!」
僕は声を張り上げて続けた。
「それから、消させない!!」
「どうして!?必要無いモノなんて要らないじゃない!」
「必要ないなんて言っちゃだめだ!?」
「何も知らないのにそんなこと言わないでっ!」
「僕は何も知らないよ!だから教えてよ!知りたいんだっ!」
僕はいったい、何を言ってるんだろう。必死すぎて、勝手に口が動いている。こんな感覚は、初めてだ。
「なんでそんなこと・・・なんでそこまで・・・?」
「無くなっちゃ困る存在だからだよ。初めてスキになった『人』だからだよ。」
やっと解った。僕は彼女がスキなんだ。この感覚のことをスキというんだ。
どれほどの時間、沈黙してたんだろう。たった数秒のはずが、いく分かに感じられた。
「その言葉、信じていいの?」
「うん。馬山さんといると、僕は幸せな気分になる。だからもし、馬山さんが僕といて幸せを感じられるなら、一緒に居る限り馬山さんの幸せだけを考えるよ!」
「そんな事・・・初めて言われた。ありがとうございます。私にとって、犬上さんと会って話している時間は安らぎそのものなんです。だから・・・、一緒に居させて下さい。」
「うん、こちらこそ。でもまずはチェーン外してくれないかな?そっちへ行けない。」
彼女は短く返事をしてチェーンを外した。そして僕は目の前の彼女を抱きしめた。
やっとくっつきましたねぇ〜。
でもまだまだ続きます!!
ホントの物語はここから――
お楽しみに☆