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僕猫と鳥羽夫妻

いつも読んでいただき、ありがとうございます。


ここからやっと<恋>要素が出てきます。

超初心者なんで、笑っちゃうほどベタな可能性が有ります。



そのときは読者の皆様方で「ベタやなぁ〜」ってツッコミいれてください。

ではどうぞ( ・∀・)→

あの火事の日から猫は僕を信用してくれて、暴れたりしなくなった。しかし、その日の翌日は違う意味で大変だった。

まず朝起きたら足が動かせないほど痛かった。見ると大分腫れていて、明らかに異常があった。院長に病院に行くと連絡して、とりあえず着替える事にした。

「猫、取れたらでいいけど新聞取って。」

「えー、自分で行けよ。」

「足が痛いんだ。」

僕がそう言うといやいやではあるが取ってきてくれた。少しは労ってくれているようで、これだけでも多大なる進歩だ。

新聞を広げると昨日の火事についての記事が載っていた。これによると、『死者、負傷者とも無しで行方不明者が1人。尚、その人物は自ら火災現場に飛び込んで行き、行方がわからなくなっている模様。身元もはっきりせず、猫と喋っていたという証言もある。』らしい。この行方不明者はたぶん僕の事だろう。何もわかっていないんなら名乗り出る必要もない。新聞を閉じて猫のご飯を用意する。

「今はヤームしか無いけど、今日カリカリまんま買って来るよ。」

「マジで。よっしゃあ!こういう時は、ありがとう。だったよな。」

びっくりした。まさか猫に礼を言われるとは思いもしていなかった。

「うん、いいんだ。」

動揺しつつも平然を保った。足の痛みを抑えながら家の近所の整骨院へ行ってみると、重度の捻挫だと言われた。1週間ほど安静が必要で、松葉杖を借りることになった。




確か安静にって言われてた期間中、猫はずっと文句言いながら身の回りのこと手伝ってくれてたな・・・。

3月10日午後1時、ゲリラ豪雨の外を見ながら僕はこの1ヵ月の事を思い返していた。猫が三毛猫だと分かった時は本当に驚いた。三毛猫は存在するほとんどが雌で、毛の色は白、茶、黒の3色が一般的な種。だから猫も僕と同じでまれ中の稀なんだ。


午後の間、雨の程度は弱まったものの降ったり止んだりを不規則に続けていた。帰りはなんとか止み間をみて降られずに帰宅できた。

「明日はヒジキ先生の所へ行くんだけど、猫はどうする?」

「マジで。行くに決まってんだろ。」

僕は「そっか。」と短く返事をして猫と自分の夕食を用意した。

「「いただきまーす。」」

僕猫〈ぼくら〉は声を合わせてそれぞれのメニューを美味しく頂いた。

僕の勤める動物病院は、毎週木曜日と日曜の午後は休みだ。今日は水曜日だから明日は丸1日フリーな訳だ。僕は毎週、その1日を使って中心地まで出ることにしている。その目的の1つが僕の診察だ。


3月11日、今日はすっかり晴れて良い天気。気候、景色、すれ違う人々などから春を感じる。僕猫は電車を乗り継ぎ、1時間弱かけて賑やかな中心地に来ていた。駅から出れば色々な店が立ち並んでて、どこもかしこも人だらけだった。

僕猫は大きな道路を渡ってひたすら西へまっすぐ歩く。しばらくすると、青地に白い文字で『鳥羽精神診療所』と書いてある看板が見えてきた。僕猫がその建物に入ったら女が1人、こちらに気付いた。

「あら、いらっしゃい。アナター優くんがいらっしゃいましたよー。」

鳥羽心<とばこころ>38歳(自称30歳)。この診療所のナースでヒジキ先生の奥さん。この人には妙に人を安心させる雰囲気があって、優しいお母さんみたいだ。

「おっ、優くん。じゃあ早速こっちへ。」

ナースに呼ばれて現れたのは縁のない眼鏡をかけた優しい目をした男、ヒジキ先生だ。本名は鳥羽聖<とばひじり>40歳。下の名前がヒジキみたいだからヒジキ先生と呼んでいる。鳥羽精神診療所の医師で、僕とはもう10数年の付き合いだ。

「はい、今日もよろしくお願いします。」

そう言って案内された診察室へ入った。

「敬語は止めてっていつも言ってるでしょう。まぁ、そっちのが楽ならいいけど。」

ヒジキ先生は椅子を指して僕に座るよう促しながら言った。

「うん、癖なんだ。ごめん。」

「謝る必要はないよ。で、最近調子どう?」

「特に気になる事は有りません。」

「そっか、猫くんとは上手い具合に関係を築けたみたいだね。」

「今はもう大丈夫。魚も普通に見えるし。」猫と解り合えていなかった時期にも週1ペースでここに足を運んでいたけれど、あのころは擬人視聴覚障害にストレスが影響して、魚類まで擬人化しかけていた。すなはち悪化していたんだ。精神診療所の受付にいる2匹の金魚が人面魚のように見えてしまった時は気持ち悪くて吐きそうだった。

「そうか、なら良いんだ。でもやっと優くんが動物と暮らしてくれた。それが嬉しいよ。」

「まあね・・・。」

擬人視聴覚障害の治療としてその対象と深く関わる事が有効とされているらしく、僕は以前からヒジキ先生にできれば動物と暮らすように言われていた。しかし、お金で動物を買う事は僕の感覚では人身売買をしている気分で、良い気がしない。きっかけが作りづらくて動物と一緒に暮らすことをやんわりと拒否していた。

擬人視聴覚障害の治療も兼ねて、職業も飼育員やペットショップなんかを勧められたが、僕からしてみると動物が囲いに入れられている光景は刑務所にしか見えない。そんなのは僕の倫理に反しているので完全に拒否していた。そんな中で、1番僕の倫理に当てはまっていたのが獣医という仕事だったんだ。

きっかけさえあれば僕だって動物と一緒に暮らすのは嫌じゃない。だから院長や寅さんに猫を押し付けられた時、断ろうとしていたけど、心の奥の隅っこでは少し感謝していた。無理やりとは言え、僕にとって快いきっかけだったように思う。

「じゃあいつも通り、メガネのメンテだけしとこうか。」

「はい。」

「終わるまで外で待っててくれる?」

僕は頷いてメガネを鞄から出してヒジキ先生に渡し、待合室へ行った。このメガネをメンテ出来るのはヒジキ先生と今は亡きヒジキ先生のお父さんだけだ。

僕が8歳の時、この病気だと診断してくれたのはヒジキ先生のお父さんだった。だからもちろんこのメガネを作ったのもヒジキ先生のお父さんということになる。ヒジキ先生はその頃、お父さんの助手みたいな役割だった。8歳のときからずっとヒジキ先生のお父さんが診てくれていたけど7年前に不慮の事故で亡くなった。それからはずっとヒジキ先生が診てくれている。「今日はアップパイ焼いてきたから食べて。」

「あっ、美味しそう。頂きます。」

奥さんがそう言って一口大のアップルパイを小さい容器に幾つか入れて僕に差し出した。ここへ診察に来るといつも奥さんが手作りのお菓子を振る舞ってくれる。こう見えて甘いものには目がない僕、奥さんのお菓子はどれでも絶品だと思う。

「どう?ちょっとベチョっとしてるかもだけど・・・。」

「そんなこと全然ない。程良い甘さだし美味しい。」

「それは良かったー。」

奥さんは嬉しそうにニコッと笑うとそう言ってご機嫌な様子で受付へ戻って行った。暫くアップルパイを堪能しているとヒジキ先生が僕のメガネを持って診察室から出てきた。

「終わったよ。じゃあ今回はもう薬出さないからお大事に。」

「うん。ありがとう。」

「あっ、今日はアップルパイか!ラスト1こ、いただきー。」

「あー!もう、ヒジキ先生・・・。」

「うーん、おいし。心<しん>ちゃーん、すごく美味しい!流石だね。」

「アナタ!なに優くんの取ってるの。アナタのはあっちにあるから食たかったら食べて来なさい。ごめんねー、優くん。」

「あぁ、いえいえ。」

これはいつものパターン。僕のラスト1こをヒジキ先生が食べて、奥さんが軽く怒る。僕はこのやりとりがとても気に入っているのでわざとお菓子の最後の1こを残しておく。僕が知る限り、唯一ヒジキ先生が子供っぽくなる瞬間がお菓子を発見して食べる時だ。そのヒジキ先生を叱る奥さん。まるで母子<おやこ>みたいで面白い。大人になるに連れて笑わなくなっていった僕を久しぶりに笑わせてくれたのもこのやり取りだった。今日も僕はクスクスっと笑う。

「あら、久しぶりに笑ったの見た。」

「そうかな?」

「そうだよ。この前なんて、もうすぐ死にそうな人みたいだったからね。」

自覚してたかったけど、2人から言われるのだから本当なんだろう。

「あぁ、そうだったかも。じゃあそろそろ帰ります。」

「そう、──あっ、ちょっとお願いあるんだけど・・・いい?」僕は、何だろう?と思いながらも承諾の返事をした。

「ここから駅へ向かう途中に市役所が有るんだけど、その4〜6階が図書館になってるの。それでこの本、そこに返してきて欲しいんだけどお願いできる?」

「ああ、まあ良いよ。」

「ほんとに!ありがとう。」

「いえ。猫ー、行くよ。猫ー・・・猫っ!」

「うわっ!耳元でデカい声出すなよ。」

「じゃあ1回で聞いてよ。」

猫は診療所の出窓でぼーっと外を眺めており、僕の声を全く聞いていなかった。だから3回目は耳元で言ってみたんだ。


僕猫は診療所を出て歩き出した。駅の方へ向かって真っ直ぐ行くと市役所が現れた。

「おいおい、そんな建物に何の用だよ。」

「猫そこも聞いてなかったの?!奥さんに本返すように頼まれたんだ。」

「知らねーよそんなん。つかオレ入れんの?」

「無理だと思うから鞄の中ね。」

「マジかよー・・・最悪だよ。」

「ちょっとの間だから。それが終わったら好きなとこ連れてってあげるから。」

「分かったよ。」

猫は一応承知してくれた。

市役所の中ではきちっとした職員たちが忙しそうに動き回っていた。書類が捲られる音、電話が鳴る音、整理番号を呼ぶ機械の音声。それらが混ざり合って心地の悪い空間が出来ていた。僕猫はエレベーターに乗って4階のボタンを押した。扉が開くと真正面に図書館の入り口が現れた。1階とは打って変わって、まだ中に入ってないのに図書館独特の静けさが広がっている。これはこれで息苦しい空間だと思う。中に入ったはいいが、初めて来た図書館でシステムがいまいち分からず入り口付近で突っ立っていると声を掛けられた。

「何かお探しですか?」

見ると黒い髪をアップさせた背の低い華奢な女だった。ここで働いている以上可能性は低いと思うが、見た目だけなら未成年という感じだ。

「あぁ、ええっと本を返したいんですけど・・・。」

「でしたら、返却カウンターまでお持ち下さい。あの青いカーデガンの方が並んでいる列の所です。」

自然で爽やかに微笑み、手で返却カウンターを指しながら丁寧に教えてくれた。

「ありがとうございます。」

僕は礼を言って列の最後尾に並んだ。

この図書館は4〜6階まで筒抜けになっていて、数え切れない程の本が収まっている県内でも有名な図書館だ。ただ、僕はあまり読書をしないので行こうと思わなかった。4階には難しそうな専門書や外国語の辞書などが揃っているようで、大学の図書館みたいだ。なので学習スペースまである。(学生や中年のおじさんが利用していた。)

「次の方ー。」

いつの間にか順番が回って来ていて僕の番になった。無言で本を差し出すと、係のおばさんがバーコードを読み取る。その時、おばさんが眉をひそめた。

「これー・・・あなたが借りた?」

「あっ、いいえ、人に頼まれて返しに来ました。」

「あっそう。ならいいです。」

僕は気分を害した。さっきの女に比べ、おばさんは感じが悪かった。代金は発生していないにしても、一応客なんだからもう少し愛想良くできないものか。そう思いながら入ってきた場所を目指して歩いていると、さっきの女がどデカい本棚に本を戻してしていた。僕は足を止めざるを得なかった。女は脚立の1番上に乗って背伸びまでしているが、全7段の4段目までが限界という感じで、なんだか見ていられなくなってしまったからだ。手助けしようと女の方へ歩き始めた次の瞬間、僕は全力で走らなければならなかった。その理由は、女がバランスを崩して脚立ごとひっくり返ったからだ!!

このあと、頑張って皆様の予想を裏切ります(笑


「ベタやな〜」じゃなくて

「なんでやねん」って言って貰えるように・・・。

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