役者目当てで映画やドラマを観る不思議について。
先日、シリーズものの刑事ドラマを観ていた時のことである。20年以上続いている長寿番組で、一時期は放送を欠かさずチェックしていたが、最近はタイミングが合えば観るくらいの熱量だから、熱心なファンとは言えないだろう。
さて、たまたま目にした最近の放送で、明らかに演技がぎこちなくセリフもどこか上滑りしているゲストキャラクターが登場した。演技が達者でない俳優にチャンスが回ってくるのはテレビドラマの良いところではあるし、まあご愛嬌と言ったところなので、特に気にせず視聴していた。
結局、そのゲストキャラクターは1話限りで早々にストーリーからフェードアウトし、特に気に留めるべき対象でもないという印象だった。ちなみにストーリー自体も尻切れトンボな幕引きをして不完全燃焼なものだったが、そもそもこのシリーズは何か壮大なことが起きそうな前振りをしておきながら、最後につまらないオチをつけることに定評があるため、フラットな気持ちで受け止めることができた。キャラクターにせよ、設定にせよ、大仰に登場させたものの持て余し、さっさと投げ捨てしまうことが多いのだ。
特に感情が揺さぶられることはなかったものの、まあ釈然としないストーリーではあったのでネット上の感想をざっと眺めてみた。すると奇妙なことに、件のゲストキャラクターについて褒めちぎる感想がやたらと目に入ってきた。どうやら、そのキャラクターを演じた役者はどこかのアイドルグループのメンバーらしいことを知った。聞いたこともない名前のグループだったが、そのアイドルグループあるいは役者のファンと思しき人たちが怒涛の勢いで感想を投稿しているのだ。
同じ演技を観ていたとは思えない感想の濁流に目を疑ってしまった。別の番組、または別の回の感想ではないかと思わず確認したほどである。
改めて感想を読んでみると、ストーリーにはあまり触れず、役者の演技についての言及が多いことに気が付く。役者目当てでドラマを観る層もいるのだなと今更ながら思い至った。
映画にしてもドラマにしても、トータルとしての作品よりも、出演者にやたらと重きを置く人たちがいるが、どうにも不思議な感じがする。子供が好きなものに夢中になっているようで微笑ましくもあるが、それなりに歳を取っている人間も多いと考えるとちょっと不気味な印象を受ける。
木を見て森を見ず、あるいは猪突猛進という言葉が脳裏に浮かぶが、自分の好きなことに囚われ、視野が狭くなっているのではないか。そのままだといつか取り返しのつかない怪我をするのではないかという気持ちが芽生える。
役者というのは作品の構成要素の一つであり、作品の評価においては一部だけを取り出すのではなく、総合的な出来栄えに目を向けるのが通常だ。作品の楽しみ方は人それぞれであり、目くじらを立てるようなことではないと思いつつも、この風潮が勢いをつけすぎると良い作品が作られなくなるのではないかという危惧を覚えるのだ。
作品全体が役者の方に偏り、語るべきテーマやストーリーが後退し、上辺だけの楽しさが前面に出てくるようになれば、作品の背後にある文化そのものをよくない形に変えてしまうのではないだろうか。終わり




