表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
五重螺旋の残響ーアメリカーノは、もう冷めてー  作者: fudo_akira


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

6/10

第6章:純子の正義(11月下旬)

──梨沙視点──

十一月二十二日、午後三時。

芹沢梨沙は、

探偵事務所の窓から

冬の気配を帯びた曇り空を見つめていた。

ユキが警察に相談してから、

二週間が経った。

その間、

たくまの周囲では

静かだが確実な“変化”が起きていた。

- ユキは完全に距離を置いた

- 美咲は沈黙を貫いている

- たくまは混乱しながらも日常を続けている

- そして純子だけが、

たくまの周囲を“埋めるように”動き始めていた

梨沙は、

その動きを見逃していなかった。


◆ 1 純子の“正義”が動き出す

午後四時。

梨沙のスマホが震えた。

純子のSNSの新しい投稿が通知された。

- 「あなたを守りたい」

- 「誰もあなたを傷つけさせない」

- 「私だけが理解している」

梨沙は、

その文章を読みながら

背筋に冷たいものが走った。

「……これは、もう“匂わせ”じゃない」

純子は、

たくまの言葉遣いを完全に模倣していた。

句読点の位置、

語尾の癖、

文章のリズム。

それは、

“たくまの代弁者”を自称するような投稿だった。

梨沙は、

その危うさを理解していた。

「この女は、

たくまさんを“守る対象”にしている」

守る対象は、

同時に“所有物”にもなる。

梨沙は、

その構造を知っていた。


◆ 2 たくまの“依存の芽”

その日の夜。

梨沙は、

たくまのSNSを確認した。

たくまは、

純子の投稿に反応していない。

しかし、

その沈黙が逆に危うかった。

たくまは今、

誰にも相談できない。

- 妻は消えた

- 息子もいない

- ユキは恐怖している

- 職場では孤立し始めている

その空白を、

純子が埋めようとしている。

梨沙は、

その“依存の芽”を感じ取っていた。

「……このままだと、

たくまさんは純子の世界に取り込まれる」

それは物理的な危険ではない。

しかし、

心理的・社会的な“囲い込み”としては十分だった。


◆ 3 梨沙の報告

翌日。

梨沙は、美咲に報告を送った。

『純子が、

たくまさんの周囲を“囲い込む”ように動いています。

危険です』

数分後、

美咲から返信が届いた。

『もう関わらなくていい』

梨沙は、

その言葉を見つめた。

「……終わり、なのね」

美咲は、

たくまの世界から完全に手を引いた。

それは、

たくまが“誰の世界にも属さない”ということだった。

梨沙は、

胸の奥に重いものを感じた。


◆ 4 任務終了

十一月二十五日。

梨沙は、

美咲からの最後のメッセージを受け取った。

『梨沙さん。

本当にありがとう。

あなたのおかげで、私は自由になれた』

梨沙は、

その言葉を読みながら

複雑な感情に包まれた。

美咲は自由になった。

ユキは恐怖から解放された。

しかし――

たくまは。

梨沙は、

その名前を心の中で呟いた。

「……あなたは、どこへ行くの」

梨沙の任務は終わった。

しかし、

胸の奥に残った“ざわめき”は消えなかった。


◆ 5 純子の“聖域”

十一月二十八日。

梨沙は、

たくまのSNSを確認した。

そこには、

純子の投稿に対する

たくまの“いいね”がひとつだけついていた。

梨沙は、

その小さな反応に

深い意味を感じた。

「……始まったわね」

純子の世界は、

たくまを“守る”という名目で

静かに閉じていく。

たくまは、

その世界に寄りかかり始めている。

梨沙は、

その構造を理解していた。

「これは……

心理的な“囲い込み”」

そして、

その囲い込みは

後戻りできない形で進んでいく。

梨沙は、

胸の奥に痛みを覚えた。

「私は……

本当に正しいことをしたのかしら」

その問いは、

まだ答えを持たなかった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ