白黒ハッキリつけましょう 2
『聖女がどんなやつだったか、か…妾の中では忌々しいやつ、という感じだな』
「忌々しいってどんな感じなんですか?やっぱり聖女だからルナのこと倒そうとしてきたとか?」
『ん?いや、それは別にどうでもいい。あやつの攻撃など、妾にはかすり傷程度にしかならぬからな』
え、魔族特攻の攻撃がかすり傷程度って。
そんなのチートですよ。チート。
こんなの、こいつ一人いるだけで人類に勝ち目なんてなくないですか?
もし、ルナが自ら犠牲になることを選んでいなければ今ごろ……
人類は結構な綱渡りの上に成り立っているのだと悟り、私は少し身震いした。
『ん?どうかしたか?』
私の不穏な様子に、ルナが心配して声をかけてくる。
いけないいけない…もう過ぎたことだし、今は忘れましょう。
頭を左右に振って、さっきの考えを吹き飛ばす。
「…いえ、なんでもないです。それより、それが違うなら何が嫌だったんです?」
『ん?ああ、それがな、妾が人間の調査のために人間の街に行ったときのことだ。ほら、人間と魔族は敵対していたからな。当然、人間がどのような生活をしているか知る必要があったのだ』
「へぇー」
あ、これ調査にかこつけて人間の食べ物でも食ってたな。
こいつ、この前も食べ物で釣られてたからな。
普段は聞かないと答えないくせに、自ら言い訳のように理由を並べ立てているからおそらくそうなんだろうな。(確信)
思わずジト目になる私。
『おい、何故目を細める。そなた信じておらんな?人間の食生活を知ることで、その国の文明がどれだけ発展しているかある程度わかるものだ』
「ふーん」
『むぅ……ああそうだ!美味しいものが食べたくて潜入していただけだが何か?』
「そんなこといいから聖女様と何あったか教えてください」
『そなた……いつか覚えておれよ…』
悔しそうにしているルナの姿が目に浮かぶ。
普段よく馬鹿にされているから、たまにはこういう仕返しもないとね。
「で、聖女様はどんな人だったんですか?」
『……さっきもいったが忌々しいやつだ。妾が人間の街に潜入すると、目ざとく見つけては邪魔してくるのだ。妾は見た目は人間に近い上に魔力まで完全に隠しているにも関わらず、あの二人には何故か見つかってしまう』
「へぇー、やっぱり聖女様はその辺他の人よりも感覚が鋭いんですねぇ…ってん?二人?」
『ああ、聖女と勇者だ。妾が食事処を探しているとほぼ必ず勇者に出くわす。そして、勇者がどうしてもついてくると煩いからそのまま食事処に行こうとすれば次は聖女が現れ、自分も絶対ついていく!と騒ぎ出すのだ。妾はただ美味しいものが食べたいだけなのに…!』
こいつ、食べ物の事しか頭にないのか。
というか、ルナの話を聞いていると、なんだか別の意味で怪しく聞こえてくる。
これ、勇者様と聖女様がついてくる理由って、魔王であるルナを見張るためじゃありませんよね?




