異世界人は突然に 4
「なにこれ?何が起きてるんですか?」
周りに聞こえないように、これをやったであろう奴に小声で話す。
原理はわからないが、こんなことする奴も出来る奴も一人しかいない。
『これか?これはお前の頭に直接話しかけてるんだ。ほら、そなたが以前死にかけたときに心の中で会話したのを覚えておるか?そのときの応用だ』
「なるほど……って、それができるならなんで初めからやらないんです?」
『出来るようになったのはついさっきだからな。1人で黙ってるのがつまらんからなんか出来んかといろいろこねくり回していたら、ヘルディンの名前が聞こえてきて、以前の記憶を思い出してつい力がこもってしまった。そしたらなんか知らんが出来るようになっていた』
「知らんがって……そんな適当な…」
『おそらくだが、イライラしてこねくり回してた術式を投げたらそなたの心?みたいなやつに当たったから、それが原因だろう』
「何してくれちゃってんのー!?」
少し声が漏れてしまった。
また隣から変な目で見られる。
私は急いで自分の口を両手で塞いだ。
くそぅ…ルナのやつ変なことばかりして……後でとっちめてやる…!
「それじゃあ、イーリス嬢はあそこの席に座ってくれ」
担任の先生の声が聞こえてくる。
どうやら、転校生の席を決めたらしい。
担任の先生が空いてる席を指差した。
一番右後ろの廊下の窓際の席。
そこは、レオン殿下の席の隣で、長い間空席になっている場所でもあった。
先生に席を指示されると、気分がいいのか転校生はルンルンと笑顔で席に向かっていく。
そして、席に座る前にレオン殿下の方に向き直った。
「レオン様!イーリスです!よろしくお願いしますね♡」
その瞬間、教室内がザワッ、とどよめく。
レオン殿下を様付けで呼ぶなんて、この国では許されていないからだ。
王族側が許さない限り、レオン殿下に殿下という敬称をつけずに呼べるのは同じ王族だけ。
それがこの国のルール。
だが、この女は不敬にも、レオン殿下に殿下という敬称を用いずに呼んだ。
レオン殿下は、何も言わず動かない。
そして、辺りがざわつく中、ある生徒が椅子から立ち上がると、レオン殿下とあの女のところに歩いていった。




