降臨 22
「って、そんなことで誤魔化されんぞ!何か言いたくないことでもあるのか?」
お、さすがにそこまで馬鹿ではなかった魔王。
さらにレオン殿下に詰め寄る。
「あ、あー……あ、そういえば魔王は名前なんていうんだ?これから仲良くするんだし、せっかくなら名前で呼びたいから教えてくれないか?」
おっと、これまた露骨な話題転換。
でも、私も名前は気になるな。
というか、本当に魔王に名前なんてあるのだろうか?
そして、魔王はまたこんな誤魔化しに騙されるのだろうか?
「え?妾か?妾の名前は【ルナ】。妾の名前を知っている者はこの世に数えるほどしかおらん。誇るが良いぞ!」
そう言って、得意げに胸をそらす魔王。
おっとー?またしても魔王は誤魔化されてしまったーっ!
何度も同じ手に引っかかっているが、もしや魔王は天然なのか!?
先ほど気づいたのはただのまぐれだったとでも言うのか!?
というか、魔王の名前ルナっていうんですね。
めちゃくちゃ可愛い名前ですね。
「ルナ、か。いい名前だな」
「そうだろう!秀麗で威厳のある妾に相応しい名前であろう?」
秀麗?威厳?
そんなもの、魔王にはないと思いますけど。
「そ、そうか?どちらかというと可愛らしい名前だと思うが…」
案の定、レオン殿下も私と同じことを思った様子。
「殿下ー!ご無事ですかー!」
そのとき、遠くから声が聞こえてくる。
「おー、シルト!戻ったか!」
遠くから聞こえてきた声の主は、助けを呼びに行ってくれてたシルトだった。
六人で編成された小隊を複数連れていて、レオン殿下が言っていた通り、キングゴブリンの出現に対して、急いで戦力を集めてくれたのが分かる。
そして、レオン殿下の声に気づいたシルトたちはこちらに向かってくる。
……って、魔王のことはどうしましょう?
「レオン殿下。魔王……ルナのことはどうしましょう?隠したほうがよろしいでしょうか?」
「そうだな…基本的には隠す方向でいこう。むやみに魔王や魔王の生まれ変わりの話を広げれば、魔王が復活したと混乱を招く事になる」
「わかりました。ルナのことは内密にいたします」
「ただ、各公爵家と俺の父上……陛下にはこのことは伝えておく。何かあったときに俺たちだけでは手に余るだろうからな。ルナとヴィサス嬢もそれでいいか?」
「はい、私もレオン殿下と同意見です。混乱を招かないためにもその方がいいと思います」
「…まあ、妾も皆を混乱させたい訳ではないからな。仕方ない」
「ルナには少し窮屈な思いをさせるだろうが、その分埋め合わせはするから許してくれ」
「お、埋め合わせとな?例えばどんなのだ?」
レオン殿下の言葉に、ルナはキラキラとした期待の眼差しを向ける。
それに対して、レオン殿下はニヤッ、と笑って答えた。
「……この時代の最高の料理でもてなそう」
「おー!それはいい!妾は食べ物に目がないのだ!そしてなんだが…あれはあるのか…?」
「もちろん、最高のデザートもつけよう」
「おー!やったー!絶対だぞ!もう撤回できんからな!」
料理とデザートで言うことを聞く魔王。
おい、魔王。それでいいのか。




